捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
もう金曜日が…………。
それでは今回もよろしくお願いします。
「お、おかえり……」
「た、ただいま……」
「ただいまにゃ……」
「…………」
何事もなかったように挨拶をする。花陽は燃えそうなくらいに顔を真っ赤にして俯いてしまっているが。
「買い物に行ったんじゃないのか……」
「い、いや~、その、サイフを忘れちゃって……急いで戻ってきたんだよ!」
「何故窓から?」
「お、驚かそうと思ったにゃ!」
「そ、そうか……」
内心、嘘つけと思いながらも、先程の花陽の目を閉じた瞬間が脳裏に焼きついたままなので、2人に気を向ける余裕がない。
「かよち~ん」
「…………」
星空が頬をつついて呼びかけても、まだ俯いたままだ。俺もつついてみようかな。いややめておこう。
まずはこのおかしな空気を換気せねば。
俺は深呼吸をして、ぼっち力を総動員し、乱れだフォーマットを書き直す。
「よし、皆で千葉まで行くか」
「何言ってるにゃ?ここは千葉だにゃ」
星空が首を傾げる。
「ばっかお前。千葉県民が千葉に行くっつったら千葉駅に行く事だよ」
千葉駅周辺に色々と商業施設が集中してるしな。
「花陽も行こうじぇ」
よしクール!俺超クール!「噛んだね」うっせ小町。まるで何事もなかったかのように「噛んだにゃ」うっせ星空。これで先程の空気はリセットされた…………はず。
「…………ちょっとまっててください」
花陽は小走りでリビングを出る。
「すぅーっ、はぁーっ、すぅーっ、はぁーっ…………よしっ!」
気持ちを切り替えられたのか、子犬のように小走りで戻ってきた。
「い、行きましょう!」
ようやく戻った笑顔に安堵しながら、俺は支度をする為に、自室へ向かった。
全員の食事代をだすという俺らしからぬ荒技をかまして、しばらくショッピングモールの中をうろうろする事にした。まあ、予備校のスカラシップさえ取れれば、凄まじい臨時収入が入るからよしとしておこう。
「あれ、小町と星空は?」
「そういえば……」
いつの間にかにゃんにゃんシスターズ(仮)がいなくなっている。
ポケットのスマホが震えた。
「おい、小町どこ行ったんだよ。迷子か、迷子なのか。お兄ちゃん心配してるよ。あ、今の八幡的にポイント高い!」
花陽が苦笑いしているが気にしない。俺は千葉の兄だからな。
『いや、全然ポイント低いよ……。このシスコン。それよかどうしても凛ちゃんと2人だけで見なくちゃいけないものがあるから、花陽ちゃんの事よろしくであります♪』
こちらの返事も待たずに電話が切れる。マジかよ。あいつら仲良すぎだろ。付き合ってんの?雪ノ下と由比ヶ浜といい、俺の周り百合の花咲きすぎだろ。
「花陽……」
「はい……」
2人でどちらからともなく歩き出した。
読んでくれた方々、ありがとうございます!