捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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フェイクファー

 

 数日前……

「本人に聞いてみればいいにゃ!!」

「り、凛ちゃん!声が大きいよ!」

 目をキラキラさせて、ストレートすぎる提案をする凛ちゃんを宥める。まだ自分でもこの気持ちがわからないのに……。だけど凛ちゃんの表情を見ていると、真剣に私の事を考えてくれているようで、無碍にはできません……。

「じゃあμ,sの先輩達に相談してみるにゃ」

 声のボリュームを落として、耳元で呟いてくる。

「む、無理だよぉ……」

「でも人生の先輩だからきっといいアドバイスが……」

穂乃果『恋愛!?よくわからないや!うーん、今日もパンが美味い!』

海未『恋愛!?ハレンチです!!』

ことり『ちゅんちゅん』

にこ『恋愛経験があるかって!?あ、当たり前でしょ?(嘘)』

希『そんな時はスピリチュアルの力やね』

絵里『れ、恋愛!?アイドルが恋愛なんて認められないわ!』

「……やっぱり無理そうにゃ」

「う、うん……」

 何かすごく失礼な気がする。

 

「「「「「「くしゅんっ!」」」」」」

 

「それに私……そんなのじゃ……」

「あなた達、さっきから何騒いでるの?」

 真姫ちゃんがいつの間にか私達の近くにいた。話に夢中になりすぎて気づかなかったみたい……。

 私達の、というか凛ちゃんの声が思いの外大きく、クラスの何人かがこちらを見ていた。

「あ、そうだ!真姫ちゃんの恋愛の話教えてほしいにゃ!」

「ヴェエ!?」

 凛ちゃんの唐突すぎる質問に真姫ちゃんの顔が赤くなる。ごめん、真姫ちゃん……。

「ないの?」

「そ、そんなわけないでしょ!私を誰だと思ってんのよ!」

「じゃ、教えてほしいにゃ!」

「う、うう……」

「何々?コイバナ?」

「私も西木野さんのコイバナ聞きたい!」

「絶対モテてたでしょ?」

 あわわ、クラスの皆が集まりだした。凛ちゃんを始めとしたクラスメイト達の視線に晒され、真姫ちゃんがしどろもどろになる。入学直後ならあり得ない光景だなぁ。

「イ、イミワカンナイ!!」

 何かが限界に達した真姫ちゃんは教室を早足で出て行ってしまった。

 もうすぐ朝のホームルーム始まるのに……。

 そして、この件は2人だけの秘密となり、凛ちゃんの猛プッシュで、小町ちゃんに住所を聞いて、先輩の家に遊びに来て、今に至ります……。

 先輩、少し凛ちゃんにデレデレしていたような……。

 

「お兄ちゃん、どういう事!?」

 小町にキッチンまで引っ張られ、小声で問い詰められる。

「俺もわからん。てっきりお前に用があるのかと……」

「住所は教えたけど小町の作戦じゃないよ!」

「今お前作戦って……」

 小町ちゃん、何考えてるの?

「それよか何でMAXコーヒーなんて出してるの!?小町的にポイント低い!」

「いや、千葉のソウルを教え込もうと思って……それに花陽は気に入ったし……」

「嘘っ!?こりゃ本当に……」

 一人で考え込んでいるようだ。すると星空がこちらにやってきた。

「どうかしたにゃ?」

「いや、何でも……」

「じゃあ、比企谷さん!」

 星空がまた顔を近づけ、小声で囁く。何、お前。俺の事好きなの?

「かよちんの事、好きなの!?」

「ひ、ひゃい!?」

 な、何言ってんの!?噛んだじゃん!

「凛ちゃん!」

 星空の言葉に何故か目を輝かせた小町が、星空を廊下へと引っ張っていく。

 花陽に目をやると、俺の方をジト目で見ている。またご機嫌斜めのようだ。仕方ねぇな。

「MAXコーヒーのおかわりいるか?」

「い、いりません!」

 ぷいっと窓の外を向いてしまう。機嫌を損ねた小動物そのものだ。

「お兄ちゃん!!」

 小町が戻ってきた。星空も後ろでニヤニヤしている。

「私達出かけてくるから、ちょっと留守番してて!」

「それなら俺と花陽も……」

「お昼ご飯の材料買ってくるだけだから!皆のお出かけはその後!」

「荷物持ちは……」

「平気平気!」

 俺の返事も聞かずさっさと出て行く2人。

 花陽はこちらを不安そうに見ていた。いや、何もしないからね。

 

 り、凛ちゃん……!

 親友の突然の行動に私は何が何だかわからなかった。






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