捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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冷たい頬

「星空凛です!よろしくにゃ!」

「あ、ああ比企谷八幡でしゅ……。よ、よろしく……」

 もうじき職人芸の域に達するであろう、カミカミの自己紹介を披露して、もう一度現状を確認する。

「えっと、小町に会いに来たのか?」

 星空の後ろに隠れている花陽に話しかけると、人間に怯える小動物みたいに、恐る恐る出てきた。

「いえ……あの……実は内緒で来ました」

 マジか。誰もいなかったらどうするつもりだったのか。

「小町ちゃんが、ゴールデンウィークは先輩が常に家にいるからって言ってましたので……」

 小町ちゃん…………兄を勝手に暇人扱いしないでね。俺だってデートの1つや2つ……べ、別にデートしたいなんて思ってないんだからね!

「う~ん……」

 気がつくと、星空が俺の顔を覗き込みながら首を傾げていた。

「うおっ!」

 思わず後ずさる。

 だが星空は機敏な動きですぐさま俺との距離を縮める。

「う~ん……」

 近距離で目が合う。

 ぱっちりとした大きな目、すらっとした鼻、少し細めで形のいい唇、花陽とは対照的なタイプの美少女だ。

「これがかよちんの好みかにゃ~……」

 何かぽそぽそと呟いているが、こちらは緊張感MAXどころか振り切っているので、上手く聞き取れない。

「…………むぅ」

 星空の背後に目をやると、花陽が柔らかそうな頬を少しだけ膨らませて怒っているように見えた。何それ可愛い。あ、そうか。いつまでも玄関で話してないで、茶の1つでも出せという事か。

「と、とりあえず上がれよ……」

「は、はい!ほら凛ちゃん!失礼だよ!」

「か、かよちん痛い痛い!」

 花陽は星空の頭を両手で挟みこむようにして俺から引き剥がす。そこまでしなくても……。

 

「わぁ……」

「凄い数の本だにゃ~」

 花陽と星空は親父の本棚を見て驚いている。俺の友達はどんなリアクションだったっけ。あ、友達いないんだった。てへっ!

「ほれ」

 2人に千葉県民のウエルカムドリンク・MAXコーヒーを渡す。

「あ、ありがとうございます」

「いっただっきまーす!」

 2人はプシュッといい音を立てて缶を開け、そして口をつける。

「甘っ!?これ何が入ってるにゃ!?」

「そりゃ、練乳だよ」

「当たり前のように言ってるにゃ!?」

 どうやら星空の口には合わなかったようだ。花陽を見てみる。

「…………い」

 震えている。やばいこれは……

「おいしい……」

「そ、そうか」

 目をキラキラさせている。こやつ、千葉県民の才能があるとみた。

「そういや今日は何か用でもあるのか?」

 俺の言葉に2人は顔を見合わせ黙る。

「あの何となく先輩の家に来てみたくて……「先輩!」

 花陽の言葉を打ち消すように星空が強めに呼びかけてくる!花陽はきょとんとして、俺は何故か目を逸らして窓の外の景色に目をやった。

「あの、先輩はかよち……」

「あわわ……」

 花陽が星空に抱きついて黙らせる。いきなり百合百合しいなこの2人。まるで雪ノ下と由比ヶ浜のようだ。微笑ましいが、何とも言えない空気。混ざろっかな。無理か。無理ですね。

「たっだいま~、お兄ちゃん誰か来てるの~?」

 玄関のドアを勢いよく開け、小町が帰ってきた。

「あ、花陽ちゃん!!それにμ,sの星空凛ちゃんだ!」

 目を輝かせる小町。こりゃ騒がしくなりそうだ。

 5月の穏やかな青空を見ながら、これから来る嵐に対する心の準備をした。

 





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