捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
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それでは今回もよろしくお願いします。
『ねえ、八幡君!』
『は、はい?』
『絵里編はどう!?この後も○○で○○な展開がくるそうよ!』
『な、何の事ですか?ていうか何故水着……』
『八幡君はウチに惚れたんよ♪』
『え?』
『私としっとりとチュンチュンするんだよ♪』
『な、何の事でしょうか……』
『八幡、私達はあんな出来事を乗り越えてきたのよ!私が一番よね!』
『あ、え……』
『わ、私には付き合う前からあんなハレンチな事をしてたのに……八幡……』
『えー……』
『わ、私だって……頑張ります!八幡さん』
『お、おう……』
『穂乃果編はそろそろだよ♪』
『あ、亜里沙編もきっと……』
『なぁんでにこ編は予定も立っていないのよ!』
さっきから何が起こってるんだ?
『ほら、八幡』
『そろそろ起きるにゃ!』
「八幡さん、起きてください」
「……花陽?」
聞き慣れた声にうっすらと瞼を開ける。
ぼんやりとした何かの輪郭が次第にはっきりしてきた。そこで、さっきまでのが夢だったのだと気づく。
完全に目が覚めると、そこにはこちらを覗き込む花陽がいる。いつものやわらかな笑顔がそこにあった。
「おはようございます。朝御飯出来てますよ」
「ありがとう」
のろのろと体を起こし、伸びをすると、朝食を並べるエプロン姿の花陽がそこにいる。
……そろそろ一ヶ月か。この光景もだいぶ見慣れてきた。
東京の大学に合格した俺は、ワンルームの賃貸に引っ越した。そして引っ越してきてからというもの、花陽がほぼ毎日こうして食事を作りに来てくれる。朝は朝練があるので頻度は少ないが、それでも来れる日は必ず来てくれた。
「……いつも悪いな」
「いえ、私がやりたくてやってるんです」
頭をぽんぽんとしてやると、気持ち良さそうに目を細め、そのまま俺の空いた手を握ってくる。
「な、なんか、新婚さんみたいですね」
「……もう5回くらい聞いたぞ」
「そういう事言うなら……」
いきなり唇を塞がれた。
「…………ん」
「…………」
朝日が射し込むような爽やかなキスは数秒間、今日の花陽を注ぎ込んできた。
「あ、もうこんな時間!」
「朝から4杯も飯食うからだよ……」
「白米ですから!」
「あ、ああ、そうだな……ほら、片付けは俺がやるから」
「ありがとうございます!」
花陽はパタパタと忙しなく動き、そこが微笑ましい。
「じゃ、気をつけてな」
「八幡さんも二度寝しないでくださいね」
「お、おう……」
……さすが、俺の行動をよくわかってらっしゃる。
この前二度寝して怒られたばかりだから気をつけよう。
「八幡さん……」
花陽は目を閉じ、俺を待っている。
朝に花陽が来た時はこれも定番になっている。
少し照れくさくはあるが、やっぱり幸せだと思える。
今日もその幸せを確かめよう。
「いってらっしゃい…………」
「…………ん」
また新しい一日が始まる。
読んでくれた方々、ありがとうございます!