捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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スターゲイザー ♯2

「あの…………」

「どしたの、ゆきのん?」

「どうして私まで衣装を着せられているのかしら」

「雪乃ちゃんも踊るからだよ!」

「ゆきのん!やろ~よ~」

「はぁ……このタイプが二人いると、とても敵わないわね」

「雪ノ下さん、すいません。穂乃果が……」

「いえ、大丈夫よ。園田さん」

「…………」

「…………」

 二人の視線が、お互いの体のある部分に集中している。

「雪ノ下さん、今度きちんと話し合いましょう」

「ええ、そうね。お互いの成長の為に」

「二人共、どーしたん?」

「仲良くて何よりやな」

「いいパフォーマンスができそうね」

「「くっ……」」

 由比ヶ浜、東條さん、絢瀬さん、もうその辺で……。

「さ、さすがにこれは恥ずかしいかな……」

「そう?似合ってるけど……」

「ありがとう。頑張るよ!元生徒会長同士って事でよろしくね!」

「そうね。このライブで失恋の痛みを全て断ち切るわ!そして絵里編でまた読者の予想を裏切って見せるわ!」

「その意気だよ、お姉ちゃん!」

「最後の最後まで発言が危なっかしいわね……何でにこ編があまり期待されていないのかしら。需要……あるわよね?ね?ね?」

「ないんじゃない?ことりのお母さんの方がまだ需要あるかも」

「う、うるさいわね!真姫編がクリスマスから開始だからって調子にのるんじゃないわよ」

「べ、別に調子にのってなんかないわよ!」

 何故だろう。あの会話にはあまり触れない方が良さそうだ。

 時折、こんな冗談交じりの会話が入りながらも、着々と祭りの準備が整っていた。

 

「賑やかですね」

「ああ」

 音ノ木坂学院の屋上で花陽と並んで夕陽を見ながら、。その響きには、単にその場の空気を楽しむだけではなく、もう戻る事のない時間を、懐かしむような哀愁が感じられた。

「なあ、花陽」

「はい?」

「俺……東京の大学、受験しようと思ってる」

「……え?」

「そしたら、こっちに住む事になるから……その時はよろしく」

「……はいっ!楽しみですね!」

 花陽が抱きつくように肩にもたれかかってくる。いつもの甘い香りが、鼻腔をくすぐりだした。

「まあ、その……いつでも泊まりにきていいようにはしとく」

「むっ……いやらしい事考えてますね」

「どうだかな」

「もう……せっかくの雰囲気が台無しです。八幡さんのばか」

「そうでもない」

 赤く燃える夕陽に見とれる花陽を引き寄せ、一瞬だけのキスをする。

「は、八幡さん!ここ学校ですよ!?」

「……いつでも、どこでも、したくなるんだよ。世界中の誰より可愛いのが隣にいるからな。つい……」

「あわわ……」

 花陽が夕陽に負けないくらいに赤くなり、手をわたわたさせる。俺はその小さな手を優しく握り締めた。

「どした?」

「は、八幡さんが、そんな事言うなんて珍しいです!熱でもあるんですか!?」

 失礼だろ。しかし、確かにそうかもしれない。花陽と出会うまで、ずっと逃げてきた事だから。

「……今後はなるべく伝えたい事は伝える。花陽みたいに」

「よ、よろしくお願いします」  

「……こちらこそ」

 空はすっかり茜色になり、今日の夕陽は燃え尽きていった。

 




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