捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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 それでは今回もよろしくお願いします。


夢じゃない ♯2

「よろしくお願いします!」

 千葉駅付近のファミレスにて、俺と戸塚と材木座と戸部は高坂さんに頭を下げられていた。それに続き、花陽と星空も頭を下げてくる。ちなみに3人共、顔バレしないよう、ここに来るまで帽子とマスクを着用してきた。あのシュールな姿を見ただけで、今のμ’sの置かれている状況の異常さが垣間見えた。

 そして、俺達はライブのスタッフを依頼されているところだ。人はそこそこ集まってきているらしいが、まだ足りないという事で、前回のスタッフに声をかける事にしたらしい。

 真っ先に返事をしたのは戸塚だ。

「もちろん大丈夫だよ。僕、何かやりたいと思ってたし」

「うむ。断る理由もない!」

 二人はもう既にやる気のようだ。戸塚は事前に星空から聞いていたのかもしれんが。

 次に、ニヤリと笑った戸部はいきなりスマホを弄りだした。

「こりゃ、やるしかないっしょー。じゃ、隼人君達にも頼んでみるわー」

「あ、ありがとうございます!」

 高坂さんが顔を上げ、笑顔を見せる。花陽と星空もホッとした表情を見せた。

 こうして、次の祭りが始まった。

 

 改札の前で、帽子とマスクを着用した花陽が上目遣いで見てくる。……あー、どっちも外してえ。素顔が見たい。

「八幡さん、よろしくお願いします」

「ああ。そういやそっちはどうなんだ?」

「?」

「秋葉原ではファンに追われてるんじゃねーのか?」

「あはは……そんな追われたりはしてないですよ。変装したらバレませんし……」

 変装しなければいけない状況が既に異常だと思う。そこらの芸能人よりファンがついている状態はμ,sの日常を少し窮屈にしていた。本人達がそれをそこまで辛いと思ってないのが幸いか。

「そっか……まあ、なんつーか……あんま無理すんなよ」

 帽子をポンポン叩くと、花陽の体温が布越しに伝わってくる。花陽の目が嬉しそうに細められる。

「はい、ありがとうございます!」

「あ、それと……」

「どうかしました?」

「ライブが終わったら……いや、まだいいか」

「?」

「いや、帰り気をつけてな」

 ニューヨークで買ったプレゼント。

 渡すのはライブの後にしておこう。

 

 本番までの期間は約2週間。中心となるμ,sのメンバーはやることが山積みのようだ。選曲や練習以外にも、新曲を作ったり、各地のスクールアイドルにイベント参加を直接呼びかけに行ったりしている。

 日を追う事に、勢いは増していった。 

「ありがとう、沙希ちゃん」

「いいよ。どーせ暇だったし」

「サキサキはツンデレだね~」

「サ、サキサキ言うな!」

「サキサキって可愛いじゃない。私も呼んでいいかしら?」

「え、えぇ!?」

 

「へえ、素敵なメロディーね」

「そ、そう?ありがとうツバサさん」

「ぐぬぬ……」

「歌詞もいいと思うわ」

「確かにそうだな。後はここから詰めていこうか」

「雪ノ下さん、統堂さん、ありがとうございます」

 

「ね、ねえ、穂乃果ちゃん」

「結衣ちゃん、どうかした?」

「な、何で私も踊ってるのかな?」

「お祭りは皆で楽しまなくちゃ!ね、優美子ちゃん!」

「え?あ、あーしも?」

 

「な、なあ、私も参加した方がいいのかな?」

「止めた方がいいっすよ。後で写真や動画を見たら、ショック受けると思うんで」

「そ、そうか……」

「大丈夫!先生が年より若いのは皆知ってるから!無理して年甲斐もないことしなくていいんですよ!」

「比企谷……変わったと思っていたが、お前の減らず口は一向に治らないようだな!!」

「あだだだだだだだだだ!」

「八幡さんったら……ふふっ」

 に、賑やかなのは悪い事じゃない……よな。

 てゆーか、花陽。見てないで助けてくれ……。

 俺は平塚先生のアイアンクローを受けながら、本番とは違った賑やかさをもった祭りの準備の音に耳を澄ませていた。




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