捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
アナスタシアの反響が大きすぎてビビりました(笑)。
それでは今回もよろしくお願いします。
無事にプレゼント探しを終え、家族と合流する。ちょっとしたハプニングはあったが、異国の地での思い出として笑い話にでもしておこう。いやぁ、あのプロデューサーさん(?)怖かった……。
「お兄ちゃん、どうだった!?」
小町がにぱっとした笑顔で聞いてくる。こっちもこっちで楽しんでいるようだ。親父の機嫌がいいのが足取りでわかる。
俺はポケットに手を突っ込み、ポケットの中のプレゼントを確かめながら言った。
「……いい感じのが見つかった、と思う」
「そっか。ならオーケー」
小町にしては珍しく、それ以上は何も聞いてこなかった。小町も少しは兄離れ……いや、俺が妹離れしてきているのか。少し寂しいが、こうして色んなものが変わっていくのだろう。それは悪いことなんかじゃない。
何の気なしに青空を見上げ、もう学年も変わるんだな、と柄でも無い事を考えてしまった。
そして、もう一年経つのだと気づく。
花陽と初めて出会ったあの日から。
「ふぅ~、お腹空いた~」
「そうですね。散々歩き回ったからでしょうか」
「かよちん。白米じゃないからって落ち込まないで」
「うぅ……」
忘れてました……。
アメリカはパン派だということを。
でも大丈夫だよね。別に一ヶ月も二ヶ月もアメリカにいるわけじゃないし。きっと大丈夫!……多分大丈夫。
隣を見ると、何故か凛ちゃんがそわそわしていた。さっきからしきりにキョロキョロしていて、何かを探しているみたいだ。
「どうしたの?凛ちゃん」
「な、何でもない何でもない!」
確か前に八幡さんが、何でもないって言ってる奴が何でもなかったのを見たことがないって言ってたから、もしかしたら凛ちゃんも……。
「凛ちゃん」
その手を握り、真っ直ぐに目を見つめる。
「え?か、かよちん、どうしたの?」
凛ちゃんはポカンとしている。イメージしたリアクションとは違うけど、私は思った事をそのまま伝えた。
「大丈夫。戸塚先輩がいなくて寂しいかもしれないけど、皆がいるから。だから大丈夫だよ」
「かよちん……」
「そ、そそ、そうだよ凛ちゃん!大丈夫!私達がいるよ!」
「穂乃果、焦りすぎです」
妙に慌てている穂乃果ちゃんに、海未ちゃんが小声で注意する。どうしたんだろう?
「ち、ちょっとお花を摘んで参りますわ!」
凛ちゃんは携帯を確認すると、慣れないお嬢様言葉を使って御手洗へと向かう。リーダーになった時もあんな感じだったなぁ。怪しいけど、凛ちゃんが自分から言うまで待つことにしよう。
「だ~れだ♪」
突然視界が塞がれる。でも声でわかってしまう。もう、御手洗から帰ってきたのかな。
それにしても……凛ちゃん、こんなに手大きかったかな?あと少し固いような気が……。
その温かな手がゆっくりと離れたので、それに合わせてゆっくりと振り向く。
「……おう」
「……………………え?」
「ニューヨーク、楽しんでるか?」
「は、は、八幡さん!!?」
あれ?嘘?私どうかしてるのかな?
でも目の前にいるのは間違いなく八幡さんだ。私だけが知っている優しい眼差しを間違えるはずがない。上から下まで私の記憶のままだ。
「どした?」
「本当に……八幡さんなんですよね?」
「見ての通りな」
ぽんぽんっと丁寧に頭を撫でてくれるこの感触もリズムも八幡さんのものだ。
確信を得た私は、溢れる気持ちに身を任せ、真っ直ぐにその温もりに飛び込んだ。
読んでくれた方々、ありがとうございます!