捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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夜を駆ける ♯2

「驚いたにゃ~!まさか二人がアメリカに来てるなんて!」

「し~っ!凛ちゃん、声が大きいよ!」

「お前もな」

 星空にメールで連絡をして、ホテル内の喫茶店に誘い出す事に成功した。どうやら東條さんは黙ってくれているらしい。まあ、あの人は事の成り行きを楽しもうとしているんだろう。どうでもいいけど、東條さんといい、雪ノ下姉といい、破壊神ビルスといい、どうして怖い人のオーラって紫っぽいの?女子二人に至っては下着も紫に違いない。

「じゃあ、かよちん呼ぶから待ってて!」

「ストップ!凛ちゃん」

 小町が星空を止める。星空はキョトンとしていた。

「どうしたの?」

「それじゃ、ダメなんだよ凛ちゃん」

「何が?」

「面白味……ムードって大事だと思うんだよ!サプライズだよサプライズ!」

 もう既にサプライズとしては成立しそうなんですがね。それと小町ちゃん、本音漏れてるよ。

「凛ちゃんも戸塚さんからサプライズされたら嬉しいでしょ?」

「さ、彩加さんが……サプライズ……えへへ」

 おや、いつの間にか名前で呼ぶようになってますね。俺も彩加って呼んでみようかな。止めとこう。

「順調にバカップルになってきてるな……」

「ひ、比企谷さんに言われたくないにゃ!」

「え?俺?」

 心外である。俺は節度ある高校生らしい清く正しい交際を心がけているというのに。手を繋ぐ時は人ごみではぐれないようにぎゅっと繋ぐし、夜以外ディープなアレはしないと決めてるし、屈んだ時に見える胸の谷間も一日五回までしか見ないと決めている。こんな俺達がバカップル扱いとは……。

「まあ、どっちもどっちだね……」

 小町の一言で、不毛な争いはひとまず決着がついた。

 

「よし、わかった!じゃあ、凛に任せて!」

「頼んだよ、凛ちゃん!」

「すまん、忙しいのに」

「夜はあまり出歩かないと思うし大丈夫にゃ!」

「そっか」

 まあ、日本とは違うしな。俺だってあまり夜に出歩く気にはならない。いや、俺の場合日本でもそうでした。

 とりあえず、今後の計画の簡単な打ち合わせをしてから星空と別れ、その時になるまで観光に出かける事にした。

 

「あれ?凛ちゃん。どこ行ってたの?」

 いつの間にかいなくなっていた凛ちゃんが笑顔で戻ってきた。

「飲み物買いに行ったら、ちょっと道に迷っちゃって」

 何で嬉しそうなんだろう?何か怪しい……。

「じゃあ皆で撮影場所の下見に行きましょうか」

「あ、はい!」

 私は絵里ちゃんの言葉に気持ちを切り替え、ニューヨーク観光に心を踊らせながら、皆と部屋を出た。

 

「なあ、小町」

「どしたの、お兄ちゃん。暗い顔して」

「アメリカってMAXコーヒー置いてないのかな?お兄ちゃんショックなんだけど」

「はあ……やっぱりアメリカでも残念なんだね。お兄ちゃんは……」

 妹にMAXコーヒーの素晴らしさを理解してもらうまでは、まだ時間がかかりそうだ。




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