捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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小さな生き物 ♯2

「「「「おお……」」」」

 空港を出て、比企谷一家は感動と驚愕の入り混じった声を上げる。

 まだ日本と何がどう違うというのがよくわからないまま、ただただ胸が高鳴っていた。そして、空港にいる白人や黒人の比率が日本より明らかに高いのを見ると、アメリカなんだなぁ……という実感が湧いてくる。秋葉原でも外国人は沢山見るけど。

「来ちゃったね」

「来ちゃったな」

「ほら、あんた達。早くタクシー乗るよ」

 母ちゃんに呼ばれ、タクシーの列に並ぶ。少しだけ空港で時間を潰したので、花陽達はもうタクシーに乗り込んでいるだろう。行き先が同じなので、ホテルのロビーでばったり、なんて事もあるかもしれないが。

「そういや、サプライズって結局何やるんだ?」

 作戦会議といっても、サプライズの素晴らしさを語られただけのような気がする。もう、ホテルのロビーで会えばよくない?

「え?サプライズ?」

「…………」

「あ、ああ!そりゃ、いい場所があるよ!きっと!」

 あれ?この妹忘れてますよね?絶対に忘れてますよね?

「やっぱり夜だよね!」

「はあ……」

 漠然としすぎているが、ロマンチックな気はしてくる。だが俺が聞きたいのはどんなシチュエーションか、であってだな……。

「あ、いい方法思いついた!」

「やっぱり忘れてたんじゃねえか」

「そんなわけないじゃん!お兄ちゃん耳貸して!」

「?」

 俺は小町の名案とやらに耳を傾けた。

 

「かよちんが買ってきたお菓子美味しいね~♪」

「ありがとうございます」

 どうやらお菓子選びは上手くいったみたいだ。希ちゃんから頭を撫でられた。

 その隣で、穂乃果ちゃんは必死に海未ちゃんの機嫌を直そうとしている。

「ほ、ほら!私のお菓子半分あげるから、機嫌直して!」

「……んぐ」

「は、半分って言ったのに……もうほとんど残ってない……」

「これで許してあげます」

「じゃあ、凛も!」

「や~め~て~!」

 海未ちゃんも機嫌は直った……かな?

 3人が行き先を間違えたと聞いて、どうなるかと思ったけど、無事にホテルにチェックイン出来ました。八幡さん!いつか一緒にアメリカに来たら、私が案内してあげますからね!その時はこんなホテルに泊まりたいなぁ。

『夜景……綺麗ですね』

『……花陽の方がずっと綺麗だと思う』

『そ、そんな、からかわないでくださいよ』

『花陽……目を閉じて』

『は、はい……』

「かよちん、ど~したん?」

 きゃ~!きゃ~!は、八幡さんったら♪も、もっと言って欲しいかも!

「い、痛い!痛いわよ、花陽!いきなりバシバシ背中を叩かないで!何なのよ!?」

「ほらほらかよちん。気持ちはわかるけど叩くんなら、にこっちじゃなくてこっちの枕にしとき」

「の、希~!何言ってんのよ~!」

「あんまり騒ぐと苦情が来るわよ」

 はぁ……八幡さん、今頃日本で何してるのかなぁ。

 私は遠い空にいる大事な人の顔を思い浮かべていた。




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