捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします!
「海外旅行!?」
聞き慣れない単語につい驚きが出てしまう。
母ちゃんの言った事が信じられなくて、ドッキリじゃないかと辺りを見回した。小町も親父も何も持っていないようだ。
ひとまず母ちゃんに向き直る。
「どうしたんだよ。いきなり……」
「あんたまだわからないの?家族で海外旅行に行くっつってんの」
「……いきなりだな」
「そう?小町も高校受験合格したから、ちょうどいいと思うけど」
僕が高校受験合格した時は何もなかったようですが……気のせいですか、お母さん?
「どこに行くんだよ」
「ニューヨーク」
へえ、確か花陽達の行き先もニューヨークだったような……。
「いつ行くんだ?」
「ここからここまで」
……あっれー?確か花陽達もこの日程だったような。
小町の方に目を向けると、思いっきりドヤ顔でウインクをしてきた。ドヤ顔でも可愛いとはさすが俺の妹。
「……お前も最近頑張ってたからな」
ぼそっと呟き、親父はだらだらとした足どりで自分の部屋へ戻っていった。
「……ありがとな」
俺はこっそりとその背中に向けて礼を言った。
「お兄ちゃん、サプライズがいいと思うんだよ!」
「はあ……」
目をキラキラさせてくる小町に、呆けた表情で返してしまう。さっきの発表もかなりサプライズなんだが……。俺は48グループのメンバーではないので、そんなにサプライズは必要ない。
「日本から遠く離れたアメリカで、偶然の再会!ロマンチックだよね~♪」
「そうか?」
むしろ今すぐ連絡しようと思ってたんだけど。
しかし、小町は強い意志を秘めた瞳で俺を見据えてくる。この意志が1パーセントでも勉強に向けば受験も楽だったろうに……まあ、それはさておき。
「どうやって説得したんだ?」
「何の事?」
「旅行の件だよ。お前が頼んだんだろ?」
「小町は特に何もしてないよ。お父さんの膝の上に乗って、『家族でニューヨークとか行きたいなぁ~♪』って言っただけ」
「お、おう……」
決定打じゃねーか。つーか、今ので妹の将来がかなり心配になりましたよ?ジャグラーばりに男を手玉にとるようなキャラクターにはならないでね。
「それよかサプライズだよ!何か楽しい事したいじゃんか!」
「それが本音かよ……」
「もちろん二人の事も考えてるよ。これを機にもっと二人の愛が深まれば……きゃー♪」
「…………」
これ以上甘デレされたら、今度こそ最後までいっちゃう気がするんですけど……。
「う~ん、μ,sの皆は忙しいだろうからあまり迷惑はかけられないし……」
「そもそも会えたとしても短時間だろ」
「大丈夫!インパクトが大丈夫なんだよ!よしっ、頑張るよ、お兄ちゃん!花陽ちゃんは待ってるよ!」
「あ、ああ……」
まだ見ぬ異国の地に思いを馳せながら、比企谷兄妹の極秘プロジェクト(?)がスタートした。
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