捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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胸に咲いた黄色い花 ♯2

「ニューヨーク?」

 卒業式を無事に終えた夜、花陽から聞いた言葉が上手く飲み込めずにオウム返しする。

「はい、実は……」

 卒業式シーズンが到来し、ラブライブ優勝の感動が別れの切なさに 変わっていこうとしていた……はずだが、スクールアイドルのイベントがドーム会場を使って行われるらしく、イベントを盛り上げる為に海外でPV撮影を行い、さらにライブを世界中に生中継するらしい。

「スクールアイドルのため……か」

「は、はい!八幡さん。海外でライブですよ、海外でライブ!」

「俺はプロデューサーじゃない」

 これはテンション上がっているというより、何が何だかわからなくなっている状態だ。はなよはこんらんしている!

「わ、わ、わたしアメリカ行っちゃうんですね……」

「ああ、そうだな……」

「は、八幡さんは?」

「行かないけど」

「何でですか!?」

「いや、いつ俺がμ,sになったんだよ……」

「そうですよね。うぅ……」

「もしかして飛行機怖いのか?」

「……です」

「わり、聞こえなかったからもう1回いいか?」

「八幡さんと離れるのが寂しいです!」

「い、今も離れてるような気がするんだが……」

「だってアメリカなんですもん……」

 今、目の前に受話器の向こうで頬を膨らます花陽が見えた気がする。うわぁやべぇ、か、可愛すぎる……!

「まあ、5日間なんだろ?すぐに会えるから我慢しろよ……その、なんだ。気をつけてな」

「むぅ……なんかあっさりしてます。寂しいです」

「す、すまん……こういう時の言葉選びが下手なもんでな」

「もう……でも許してあげます。その代わり……」

「?」

「帰ったら……思いっきり、あ、甘えさせてほしいです」

「……ああ、わかった」

「ありがとうございます!私、頑張れそうです!それじゃあ……おやすみなさい」

「ああ、お休み」

 通話を終え、天井を見上げる。最近の花陽の甘デレがやばすぎる。甘々のデレデレなので、非常に糖分過多だ。この前、千葉でデートした時に奉仕部の面々と遭遇した時も、見ている方が照れてくるから気をつけた方がいい、との感想をいただいた。

 ……思い出したら顔が熱くなってきたので、とりあえず置いておこう。それにしても……

「ニューヨークか……」

 海外でPVとかすげえな。芸能人かよ。

 だがあんなにすごい感動を起こせるμ,sなら納得できてしまう。そのぐらいにラブライブでは心を動かされた。

「……負けてらんねえな」

 俺は勢いよくベッドから起き上がり、大きく伸びをした。

 

「あれ?お兄ちゃんこんな時間にどっか行くの?」

「ああ、ちょっと走ってくる」

「ふぅ~ん。気をつけてね」

「おう」

「……ふっふっふ。安心してね、お兄ちゃん。ニューヨーク行きは小町に任せて!」

 こうしてまた一つ、賑やかすぎるイベントが幕を開け始めた。

 

 

 

 




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