捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
「第二回ラブライブ優勝は…………」
ドラムロールがドーム内に鳴り響き、会場内に緊張感が充満する。手に汗握るという感覚を久々に実感しながらステージを見守る。
隣りに目をやると、小町も戸塚も材木座も戸部も、さらに川崎姉妹も雪ノ下も由比ヶ浜も皆一様に息を潜めている。呼吸する事すら躊躇うような雰囲気がそこにはあった。
そうやっている内に、ドラムロールが鳴り止み、会場が暗闇に包まれた。
「ラブライブ優勝は…………μ,s!!!」
μ,sのメンバーにスポットライトが当たり、会場内が今度は割れんばかりの大歓声に包まれる。俺も気がつけば立ち上がり、ステージに届くようにと一生懸命拍手を送った。
我を忘れて掌を打ち鳴らしていると、小町が抱きついてきた。
「お兄ちゃん、優勝!優勝したよ!」
「ああ、すげえな……」
メンバーは最初、放心したように立ち尽くしていたが、数秒経って現実を理解したのか、喜びが溢れてきたようにメンバー同士で固く抱き合う。
「星空さ……凛ちゃーん!!!」
戸塚も小柄な体に似合わぬ凄まじい大声をステージにぶつける。
「μ,s!μ,s!!よくやったー!!!!!」
「っべーわ!優勝とかマジすげーわ!!」
「ことりー!おめでとー!」
「みんな~おめでと~!」
「穂乃果ちゃーん!やっはろー!」
「西木野さん……おめでとう!」
材木座が素に戻っていたのと、由比ヶ浜のやっはろーが気になったが、皆それぞれ喜びを爆発させている。
ここからは豆粒にしか見えないが、花陽がこちらをみて、手を振っている気がした。
こっちも豆粒だろうが何だろうが、手がヒリヒリ痛くなるくらいに拍手を送り続けた。
「「皆、優勝おめでと~!!!」」
会場の外で、小町と由比ヶ浜が先陣きって祝いの言葉をかける。
「ありがとう~!」
高坂さんが由比ヶ浜に抱きついた。やっぱ似てんだよな、この二人。胸以外は。少しくらい分けてやれよ。あと、雪ノ下姉が雪ノ下に胸を分けてやればいい。そうすれば少しは世界が平和になるはずだ。
「彩加さん!」
「凛ちゃん!」
ハイタッチが大きく幸せを奏でるのを聴きながら、この二人は案外バカップルになりそうだ、なんて思ってしまった。
「比企谷君比企谷君比企谷君!見てくれた!?」
「は、はい……」
絢瀬さんがぐいぐいやってくる。近い近い近い!あといい香り……。
「エリチ」
「落ち着きなさいよ」
「だって絵里編が!」
「それ以上は禁止やよ」
「はい」
「それに……希編だって控えてるんやから」
「「は?」」
……ひとまず三年生トリオはスルー推奨で。触れてはいけない気がする。
「八幡さん」
「おう」
小町の熱いハグから解放された花陽が真正面にやってくる。その表情はいつものように穏やかで、先程のステージでの姿は完全に内側に引っ込んだみたいだ。
「見ててくれました?」
「ああ、おめでとう」
「ありがとうございます」
「それとお疲れさん」
「…………」
「…………」
少し長めのアイコンタクトを交わし、どちらからともなく並んで歩き出す。今宵限りの宴の空気にまだ酔いしれていたい、なんて柄にもなく思ってしまった。
冬が溶け、春が顔を出す気配と共に、何かが変わる確かな感触がそこにはあった。
読んでくれた方々、ありがとうございます!