捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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  タイトル以前と被ってますが…………(笑)。

  それでは今回もよろしくお願いします。


スピカ ♯2

「皆楽しんでいるみたいね」

 シンクに洗い物を置いていると、西木野が声をかけてきた。満足げな微笑みを浮かべ、

「そうみたいだな」

「あなた達、いつ見ても幸せそうね」

「幸せだからな」

「……意外と二人共のろけるし」

「……そうか?」

「花陽なんて一日一回は私と凛にのろけるわよ」

「…………」

 何を言っているのだろうか、すごく気になる。私、気になります!しかし、そんな俺の疑問を余所に、西木野は俺のポケットの膨らみを見て、くすりと笑った。

「誕生日プレゼント……渡すのに、いい場所があるわよ」

 

「花陽」

「はい?」

 おにぎりを美味しそうに頬張る花陽に声をかけると、キョトンとしている。……こっちは緊張しまくりなのにいい御身分だ。

「あー、渡すモンあるからついてきてくれ」

「あ……はい」

 

「わあ……」

「想像以上だな……」

 俺と花陽は西木野家の屋根裏部屋にいた。壁にもたれ、足を伸ばしてくつろぎ、天窓を見上げている。

 天窓からは月や星が僅かな光を小さめの部屋に届けていた。青白い明かりがぼんやり花陽を照らし、その美しさ、可憐さを儚い幻想のように見せている。

「……空、綺麗ですね」

「…………」

 その頼りない現実に手を伸ばし、ここに確かに花陽がいる事を確かめた。

「八幡さん……ん」

 軽く触れるだけのキス。その後、居住まいを正し、花陽に向き直る。

「花陽……これ」

「あ、ありがとうございます!」

「まあ、改めて、誕生日おめでとう」

「あ、でも、これって……」

 花陽の手には小さな箱がある。中身は予想がつくだろう。

「わあ……」

 開かれた箱の中、小さなピンキーリングが夜空の光に、微笑むように輝いている。花と太陽の模様も微かに眩しい。

「その……ちゃんとした結婚指輪はまだ先になりそうなんだが……」

 一呼吸おいて、また花陽の目を見る。気がつけば、二人して正座で向かい合っている。

「これから先も、一緒にいたい。……多分、だけど、UTX学園の前で初めて会ったその日から……俺はずっと花陽の事が好きなんだと思う」

 花陽の目から涙が一筋、弧を描いて、白くやわらかな頬を撫でていく。

「私も……あの日からずっと……八幡さんが好きです」

 手を伸ばし、そっと涙を拭うと、照れ笑いで返してきた。

「……何で俺達、正座してるんだろうな」

「ふふっ。おままごとみたいですね。小さい頃、こんな風に結婚式の真似してました」

「そ、そうか……」

「相手は凛ちゃんですけどね」

「そうか」

「……今、やきもち焼いてくれました?」

「ど、どうだろうな……」

 姿勢を崩し、どちらからともなく、唇を重ねる。花陽の体を優しく引き寄せた。

 花陽は目を閉じ、自分を捧げるように、体の力を抜く。その間も、俺の手は柔らかな曲線を辿っていた。

 何かが変わろうとしている。

「ふったりともー!!何して……あ」

 いきなり顔を覗かせた高坂さんが、気まずい表情になる。

「…………」

「…………」

「し、失礼しました~……」

「……戻るか」

「ふふっ、そうですね」

 微笑みだけ交わし、屋根裏部屋を出る。

 こうして、また花陽と少し深く繋がれた。例え人と人とが完全にわかり合えなくても、この世界に完璧なものがなくても、心を重ねていけば、二人の繋がりは強くなっていける。

 だから何度だってこんな瞬間を重ねていこう、なんてことを柄にもなく考えていた。





  読んでくれた方々、ありがとうございます!

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