妖精さん、我が道を爆走中   作:オートスコアラー

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第3話

次の日、今日は朝起きたら61cm五連装(酸素)魚雷が工廠に溢れてたり、朝食前に大和がいきなり挨拶に来たり、廊下で見知らぬ海外艦と遭遇したりしない極めて普通の朝だった。

 

「提督ー、おっそーい!」

 

朝食をのんびり食べていると島風が鬼ごっこをしようとせがんで来た。ここに着任して以来、事実上の最速の座についている島風だがまた速くなったと本人の弁だ。まあ早くなる前から到底自分では追いつくことは出来ないのだが、本人曰く「提督とすることに意味がある」らしい。まあ運動不足解消にもいいし、建造報告の書類も昨日(泣きながら)済ませたことなので少しくらいならいいだろう。

というわけで、外に出て準備体操が終わったあと。最初は島風が逃げ、自分が追いかける形のいつも通り。まあこれもまたいつも通り自分の体力切れが先だろう。

 

「それじゃあいくよー!よーいドン!」

 

フッ…

 

……島風が消えた。いや、比喩でも何でもなく掛け声と同時に消えた。足元に舞ってる砂埃から察するに自分の後ろに逃げたようだが、幾ら何でも速すぎだろう。目の前にいた者が瞬間的にいなくなるものだから軽くバグったのかと思ってしまった。

 

「……とりあえず追うか」

 

当然追いつくはずもなく、近づく度に音すら置いて行ってしまう。足元の砂埃と遅れてやってくる耳を打つ風切り音で大雑把に分かったが、それでも一回見つけるのに10分は優に超えてしまう。結果

 

「鬼ごっこに夢中になるのもいいですけど、今日の分の書類報告もあるんですから。あんまりにも遊びすぎて時間を忘れるとか提督も子供じゃないんですから、しっかりしてください!」

 

秘書官の霧島に怒られた。まあ今回は自分に非があるので素直に受け止めよう。一瞬言い訳じみた考えが頭をよぎったが、失敗した時のリスクは嫌なのでやめておいた。誰も自分から霧島のマイクチェックなんて受けたくはない。

その後、仕事中に一緒に怒られた島風に話を聞いたところ、まあいつものアレだった。

 

「えっと、工廠で連装砲ちゃんが修理終わったって聞いたから迎えに行ったの。そうしたら新しい装備って言って妖精さんがくれたの」

 

どうやら新装備だったらしい。新装備、と聞いて頭をよぎったのはニコニコと笑いながら両手に魚雷を抱えてたあの妖精さんだった。十中八九彼女が関わっているのだろう。でなければ天津風がいないこの鎮守府で新型高温高圧缶なんてあるはずがない。

つくづくあの妖精さんの脳内レシピはどうなっているのだろうか。もしかしたら妖精さんには全てのレシピが分かっているのか、とも思ったがよく良く考えてみたらわかってるなら駆逐艦レシピで大和は出さないだろう。

 

「……島風を遠征に入れるか」

 

「遠征ー?つまんなーい」

 

「……好きなだけ走り回っていいぞ、その代わり艦隊の索敵係だけど」

 

「ほんと!?」

 

その日、遠征は豪速で海上を疾走する島風によって、一切敵に遭遇しなかったらしい。ついでに島風もより速くなった事でご満悦だった。

 

 

~~~~~~

 

 

妖精さんです、どもども。

何故か今回は電探を狙ったはずなのに何か変な塊ができてしまった。ほかの妖精さん曰くタービンらしい。要は速くなれるそうだ。なら、と島風ちゃんに上げたが本人も笑いながら提督とびゅんびゅん鬼ごっこをしてたので結果オーライだろう。

よし、とりあえず電探を狙って出せるようになるまで練習しよう。幸いここ最近は開発資材が補充され続けているので電探を作る練習ができそうだ。まずは2回に1回当てられるようにしようかな。


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