妖精さん、我が道を爆走中   作:オートスコアラー

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第1話

その妖精さんがおかしいと感じたのは、確か1週間ほど前のことだ。

 

「妖精さん、このレシピで3回よろしく」

 

「(・ω・´) 」

 

やる気十分といった顔で頷く妖精さん。その時は特に何も考えていなかったが、後日

 

「あの、提督。ちょっとご相談したいことが」

 

などと霧島が妙に困惑した顔で執務室まで来たから、工廠に顔を出しに行った。最初にいうが、あの時私は最低値にちょろっとおまけをつけた程度のレシピを渡したはずだ。それがどう間違えれば『61cm五連装(酸素)魚雷』など量産出来たのか。

 

「(`・∀・)」

 

誇らしげに頷く妖精さんの後でピョンピョン飛び跳ねているほかの妖精さん。明らかにおかしいがここで指摘するのもなんだか悪いような気がして言えなかった。が、その後もあの妖精さんに頼むとだいたいおかしな物が出来上がった。いや、おかしいと言うよりは、何でそんなものが出来たのか、と不思議がるものができた。

 

「これすっごいですよ!レシピガンガン教えればどんどん武装拡充してくじゃないですか!」

 

とは夕張の弁だが、報告書を作成して本部に渡す身になってもらいたい。一体どうすればいいのか、馬鹿正直に「最低値を回したらレア装備量産しました」などと書いた暁には、頭のおかしな提督として最悪左遷もあるのかもしれない。

 

「そもそも、あの妖精さんだけなんか変なんだよなぁ」

 

妖精さんというものにそこまで詳しい訳では無いが、少なくとも私の知っている妖精さんは毎日風呂に入らないし、着物や洋服など毎日おしゃれに気を使うことは無いし、埠頭で投射装置を使って漁などしない。

 

「あの妖精さんだけなのか?もしかしたらほかの妖精さんもおなじなのか?」

 

と思い、近く予定されていた意見交換会でそれらしきことを聞いてみたが、そんな妖精いるはずがないと白い目で見られてしまった。

 

「あの、司令官さん。ちょっといいですか、妖精さんのことで事件が……」

 

そんな事をつらつらと考えていたら今度は電がやってきた。また何かあったのだろうか。まあここ最近はトンデモ出来事ばっかり起きたせいか、しばらくは驚かなくて済みそうだ。

 

「初めまして、戦艦大和です。これから宜しくお願いします!」

 

前言撤回、気絶した。

 

 

~~~~~~

 

 

どうも、妖精さんです。気がついたらこの体になってました。前は何だったのかはもう分からないけど、少なくとも人の言葉が理解出来るなら前は人間だったんじゃないかと予想中。

 

「妖精さん、このレシピで3回よろしく」

 

と、提督さんが今日もやってきた。時折こうして顔を出してはレシピを渡してくる。自分たちはそれに従って開発なり建造すればいいらしい(ほかの妖精さん曰く)。が、なんというか

 

これ、すっごい面白い

 

実際に鉄を熱してかんかんとハンマーで叩くわけじゃなく、資材をこう……不思議パワーで何とかすると出来るというよく分からん作り方なのだが、何故かここでこんな感じにするとこれが出来るというのが見えるのだ。なぜかは知らん、ほかの妖精さんは見えないようだった。

故に色々と試してみた。始めは失敗してたが、2日で慣れてきて5日である程度操れて、1週間経てばおおよその物は狙えるようになった。最近は如何に最小の努力で最大の結果を残すかにハマっていた。目指すは最低値レシピで全武装開発だ。

 

「初めまして、戦艦大和です。これから宜しくお願いします!」

 

今日も提督の為にと頑張ってみた。250/30/200/30というよく分からない数値だったのでとりあえず戦艦を出して見たが、提督が来た瞬間倒れた。それだけ嬉しかったのだろう。もしかしたら戦艦レシピだったのかも。

建造したこちらとしてもこれだけ喜んでもらえれば万々歳だ。次はちょろっと頑張って海外艦でも作ってみるか、確かこの前見たはずだし。提督も喜んでくれるだろう。


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