OVER LORD Gun Fist & Gun Head   作:丸藤ケモニング

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今回、ちょっと短いです。







7,銃頭とクレマンティーヌ

 剣の切っ先を突きつけられながら、俺は呑気に煙草の煙を吐き出す。さて、この状況をどのようにして潜り抜けたらいいものか、それが問題だな。まぁ、正直に話そうか。

 

「まぁ、少し落ち着け、黒の剣士殿。最初に言っておくが、この惨状を作り出したのは俺じゃない。この冒険者を殺ったのは、そこの姉ちゃんだな、恐らく」

「証拠になるものはあるのかね、銃頭君」

「……ねぇな。まぁ、そこの姉さんに聞いてみるのが一番じゃないか?」

 

 まぁ、十中八九白を切るのは目に見えてるんだがね。

 

「そんなことよりお主、ワシの孫をどこへ連れていったのだ!?」

「いきなりなんだおい。あんたの孫?……ここにいないのなら、上の階じゃねぇか?冒険者しかいねぇんだし。俺のツレが上にいるから聞いてみな」

 

 俺の言葉が終わるや否や、婆さんは他に目を向けることなく地下室から駆け出していた。足、早いなあの婆さん。100㎞ババアって都市伝説があったよな。あんな感じの異形種だったりするのかねぇ、あの婆さん。

 さて、この場には、俺と黒い鎧の戦士、こっちをやたらと睨み付けてくる黒髪の美女、さっきまで息絶え絶えだった冒険者、そして俺がぶん殴って気絶させ、現在狸寝入りをして様子をうかがっている女だけが残された訳だが、どうしたもんかね、この状況。

 

「さて、君の処遇をどうするか……時に、一つ聞いてもいいかね?」

「あん?」

「君のような頭をしたゴーレム、それに覚えは?」

 

 俺の頭みたいなゴーレムだと?

 

「覚えはねぇな。なんでそんなことを聞くんだ、あんた」

「なに、少し前に、君のような頭をしたゴーレムに襲われてね。もしかしたら、君がそいつらを使役してるんじゃないか、そう思っただけだよ」

「残念ながら、そんな技術やタレントは持ってねぇな。ところでよ」

「なにかね?」

「場所を変えないか?あんまり話し込むような環境でもないと思うんだがね」

 

 黒鎧の男は、周囲を見回し一つ頷く。

 

「確かにその通りだな。場所を移そう」

 

 俺は一つ頷き同意して、ワイヤーロープでグルグル巻きにした女を肩に担ぎ上げ、地下室を後にするのだった。

 

 先程の婆さんは、名をリイジー·バレアレと言うらしい。そして、どうも連れ去られた孫とやらがこの町の有名人、ンフィーレア·バレアレ。確か有するタレントが……。

 

「なんだったっけか?」

「ありとあらゆるマジックアイテムを使えるっつぅタレントだな。そいつは言ってなかったな」

 

 悪い悪いと豪快に笑う、合流したガガーラン。二階にも、そのンフィーレアはいなかったらしい。そうなると、この女に仲間がいて、そいつがさらっていったと考えるのがベストか。

 問題は、なぜそのンフィーレアが拐われたのか、という点。無論、ガガーランから説明を受けた通り、そのンフィーレアがそれこそありとあらゆるマジックアイテムが使えるのなら、その利用価値はうなぎ登りだろう。種族限定や使用者を限定するようなアイテムを使用可能とするのなら、広域破壊を目的としたアイテムを使わせる、と言うのも考えれないではない

 

「まぁ、なんにせよ、あいての目的が分からん限り、あくまで仮定の話にすぎねぇな」

「そうだなぁ。んで、どうすんだジューゾー。目的はともかく狙いがわからなけりゃ、どうしようもないぜ?」

「おかしな事を言うもんじゃねぇぜ、ガガーラン。狙いが分からなくても、居場所が分かればどうとでもなるだろう。叩き潰すも、ぶち殺すも、な」

 

 俺たちは、現在バレアレ邸宅の二階に、例の襲いかかってきた女と共に軟禁中である。曰く「どちらにせよ、君が犯人ではないと言う確信が得られない以上、ここに閉じ込めておくのがベターだと思うんだが、如何かな?」だそうだ。まぁ、言わんとすることは分かるから、嫌も応も無いんだが。とは言え、俺の無実が証明されないのも困りものだ。ならばどうすればいい。考えるまでもない。

 

「さて、始めますかね」

 

 俺はそう言いながら立ち上がる。ガガーランにも説明はしてある。多少非人道的かもしれないが、情報を得た上で俺の無実の証明をせにゃならんしな。仕方がない。

 そんなことを考えながら女に近づくと、目と目があった。まぁ、狸寝入りしてたんだから当然だよな。

 

「よう、姉さん起きてたか。ちょいと話を聞かせてもらおうかと思ってな」

「白々しいなぁお兄さんー。アタシが起きてたの、知ってたんでしょう?」

「まぁな。さて、前置きはこの辺にしておいてだ。お前の名前をまずは聞かせてもらおうか」

 

 そんなことを言いつつ、俺はこいつのブーツを脱がせ、素足を露出させる。その様を見ながら、女はそれでも冗談のように答える。

「カイヤ」

「ほぉ、そんな名前なのか」

「うん、かーいーっしょ……ぎゃぁ!」

 

 戯れ言が終わると同時くらいに、俺はそいつの足の爪を全て引きむしる。そして、その引きむしった爪を目の前にまで持っていき、胸元に全て落として見せつけてやる。

 

「さて、これで分かったな?少しでも嘘をつく、もしくは質問とは関係の無い事を言えば、同じ目に遭う。さて、もう一回質問だ。名前は?」

「自分で調べな…ぎぅ!」

「名前は?」

「ク、クレマンティーヌ」

「……嘘じゃねぇみたいだな。次の質問だ。ここには何の目的で侵入してた?」

「やだなぁ、たまたまあの現場…あぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

 

 一際大きい悲鳴が上がった。そりゃぁそうだろう。足の親指を引きちぎられればな。

 

「もしかして、足の爪の次は手の爪だとでも思ったか?残念ながら、そんな可愛いことはしねぇよ。こんな風に末端から引きちぎっていく。嫌ならとっとと吐け。こっちも面倒は省きてぇんだ」

「マジ?」

 

 無言で次の指に手をかけると、クレマンティーヌは慌てたように喋り出す。

 早い話が、ンフィーレアを拐って〈 叡者の額冠 〉とか言うマジックアイテムを使って大量のアンデッドを産み出し、ズーラーノーン?とか言う組織の構成員のカジットとか言う奴がアンデッドになるための儀式をするためとかなんとか。ふむ、別に興味深くもなんともないな。

 しかし、ここまで聞き出すのに、少々時間をとられ過ぎた。片足の指が全て無くなるまで粘るとはなぁ。

 

「さて、聞きたいことはこんなもんか。ガガーランはなんかあるか?」

「ねぇなぁ。しかし〈 叡者の額冠 〉ねぇ。そんなアイテム聞いたこともねぇなぁ」

 

 多少、クレマンティーヌに同情的な視線を投げ掛けていたガガーランだったが、内容を聞いていくうちにそうでもなくなったのか、今じゃ平然として話に加わってくれてる。

 

「おい、クレマンティーヌ、そいつはどこで手に入れたアイテムだ?」

 

 その問いに、一瞬の躊躇。

 

「ああ、答えたくねぇなら別に構わねぇぞ?次は片方の足の指、それでも吐かねぇなら足をむしり取るだけだからな?」

「……あれは、元々いたところから逃げるときに盗んできたもんだよ……」

「元々いた所?」

「……スレイン法国だよ。私はそこの漆黒聖典って所に所属してたんだよ」

 

 漆黒聖典とクレマンティーヌが口にした瞬間、後ろでガガーランが息を飲む。なんだ、そりゃ?と聞き返すと、今度はクレマンティーヌが驚愕を表情に浮かべる。

 

「知らないの?」

「俺の顔を見て物をぬかせ」

「……なるほど」

 

 納得するなよ、凹むわ。

 

「まぁ、あれだよ。スレイン法国の剣、人類の守り手を名乗る特殊部隊ってところ」

「ふぅん。ガガーラン、知ってた?」

「まぁな。スレイン法国の陽光聖典ってところとやりあったことがあるからな」

 

 ふぅん。しかし、どうしたもんか。俺的には、俺がこの事態を引き起こしたのでなければどうでもいいことだしな。んー、まぁ、とりあえず、モモンとか言う奴に情報を渡しておこうか。の、前に。

 俺は懐からポーションを取り出す。それを見たクレマンティーヌがぎょっとした顔をしているが、構わずそれを足にかけてやると、みるみる内に傷が治り、指も再生される。面白いことに、むしりとった指も爪も消失していた。面白いっつぅか、キモいな。

 再生した足を何度も動かし、クレマンティーヌはなんだか信じられないものでも見るような目で俺を見ている。ん?ガガーランもか。

 とりあえず二人を無視し、俺は部屋からでる。煙草に火を点け歩き出すと、向こうからも黒鎧の戦士がこっちへ歩いてきていた。

 

「なんだ、こっちから出向こうかと思ってたら、そっちから来たのか」

「ああ、敵の居場所が分からないからな。そっちでなにか情報は無いかと聞きに来たのだ」

「ンフィーレアの居場所なら、共同墓地らしいな。そこで何らかの儀式をやってるらしい」

「……ふむ。あの女から聞き出したのか」

「そういうこった」

 

 俺がそう答えると、モモンは何事かを考えるように顎に手をやった。そして、次にこう口を開いた。

 

「君に聞きたいが、もしかして、君はプレイヤーか?」

 

 

 

 

 




中途半端ですが、今回はここまで。

次回、カジっちゃん慟哭する、お楽しみに!



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