私は医療スタッフだ!   作:小狗丸

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前回、薬研が切嗣の戦術・戦略の影響を受けているという設定を話に出したら、納得のコメントがたくさん来て軽く驚きました。
……そろそろ「主人公は外道」のタグをつけたほうがいいのかな?


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 この特異点に来て二日目。私達は今、この世界の聖杯がある場所に向かって浜辺を歩いていた。

 

 昨日は見渡す限りの平野で、その前は山の中、そしては今日は浜辺。一体どんなに滅茶苦茶な地理かと思うけど、そこは信長の影響を受けたぐだぐだな特異点ということで納得しておく。

 

 え? 武田役のダレイオス三世と真田役のメドゥーサ、上杉役のアルトリアはどうしたって? それなら昨日の内に始末しておきましたよ。

 

 ダレイオス三世とメドゥーサはアルジュナの宝具で吹き飛ばして、後から来たアルトリアは私特製のサーヴァント用の毒薬を仕込んだ料理(頼光さん、エミヤ製)を食べて動けなくなったところを牛若丸と山の翁にザクザク(比喩表現)してもらい楽に倒せた。

 

 アルトリアをザクザク(比喩表現)している時に久世君達が微妙な表情(特にエミヤは頭痛と胃痛が同時にきた様な表情だった)をしており、アルトリアは「これが人間のする事ですかぁ!」と血の涙を流さんばかりの表情で叫んでいたが、仕方がないだろう。

 

 またしても戦って経験値を得る機会を奪ってしまった久世君達には申し訳ないと思うが、アルトリアは「戦場で拾い食いをする方が悪い。自業自得だ」としか言えない。だって実際にやった私が言うのもなんだけど、あんなネタ以外何でもない策が成功するとは思わなかったんだから。

 

 毒入りの料理を食べて動けなくなったアルトリアと口から泡を吹いて倒れている二頭身信長達を見た時、思わず「馬鹿か? こいつら?」と呟いた私は悪くないと思う。エミヤも顔に手を当てて呆れており、セイバー・リリィなんかは「これが未来の私ですか……」と遠い目をして呟いていたし……うん、セイバー・リリィの事は本当に申し訳なく思う。ごめん、セイバー・リリィ。

 

 まあ、今のところはザクザク……じゃなくてサクサクと順調に原作通り行っている。この調子で行けば次はエミヤとクー・フーリンとメディアと戦う事になるんだろうな。

 

 確か原作ではエミヤが長宗我部役でクー・フーリンは島津役、メディアが毛利役で、信長がメディア達三人の囮を使って敵を待ち伏せをしている場所に誘い込む島津の戦術「釣り野伏せ」にあっさり引っかかってピンチになるが、長宗我部・島津・毛利の名前を聞いて新選組の血に目覚めた沖田のお陰で危機を脱したという流れだったっけ? ……ん?

 

「おおっと。ちょっと待ちなぁ」

 

 噂をすれば影がさすと言うか、私が考え事をしているとやっぱり原作通りランサーのクー・フーリンが十人程の二頭身信長を率いて現れた。ちなみにこの時、久世君と契約しているクー・フーリンとエミヤがあからさまに嫌そうな顔をしていたが無視しておこう。

 

「悪いがここから先には「誅滅、執行!」「牛若丸と覚えてもらおう!」「オオオオオオッ!」なんとぉ!?」

 

 何か言おうとしたランサーのクー・フーリンだったが、それをガン無視して首を目掛けて斬りかかる頼光さんと牛若丸と山の翁。そしてそんな三人の刃を紙一重で避けるランサーのクー・フーリン。

 

 おお、よく避けたな。流石は元祖最速のサーヴァント。いや、ゲーム的には「矢避けの加護」のスキルの効果か?

 

「こ、これは演技じゃなくて本気でヤベェ! ここは一旦引くぞ!」

 

 そう言って二頭身信長達と一緒に退却して行くランサーのクー・フーリン。この辺りは原作と同じだけど今演技って言ったよね? 自分から釣り野伏せの為の囮だとバラしちゃったよね?

 

「先輩! 敵のクー・フーリンさんが逃げていきます!」

 

「うん。……でも何だかわざとらしいような? というか今演技って……」

 

 マシュの言葉に首を傾げる久世君。うん。やっぱりわざとらしいよね。やっぱり久世君は今のランサーのクー・フーリンの行動に疑問を感じているようだが、疑問を感じていないヤツもいるようだ。

 

「何をしておるか! 追いかけるぞ! ワシに続けぃ!」

 

 原作通り、今のランサーのクー・フーリンの行動に疑問を感じず追いかけていこうとする信長。……はぁ、仕方がないな。

 

 牛若丸。信長を止めろ。

 

「はい! 承知しました!」

 

 私の命令に牛若丸は返事をすると信長の元に走りすぐに追いつくとそのまま刀を抜き……。

 

「はあっ!」

 

「危なぁ!?」

 

 牛若丸は刀を信長の首を狙って横に振るい、それを信長が前に飛ぶ事で間一髪で避ける。……って!? 何をしてるの牛若丸!? 私は動きを止めろと言っただけで息の根を止めろなんて一言も言ってないぞ!

 

「……ちっ。良かった。止まったようですね」

 

「何が良かったんじゃ!? 何がぁ!?」

 

 一件落着とばかりに言う牛若丸に噛みつく信長。というかさっき小さく舌打ちしなかった? あのブレーキの壊れた忠犬ってば、まだ信長のことを不審者(首斬りの対象)と見ていたのか?

 

 取り合えず私は言い争いをしている牛若丸と信長を止めると、さっきのランサーのクー・フーリンの行動が罠である可能性があることを皆に説明し、罠であった場合は逆にこちらから奇襲を仕掛けることを提案するのだった。……まあ、間違いなく罠なんだけどね。

 

 さて、それじゃあ敵のエミヤ、クー・フーリン、メディア。誰から奇襲をしようかな?


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