私は医療スタッフだ!   作:小狗丸

18 / 51
11

 新しいサーヴァントの召喚はまず久世君から始めることになった。

 

「新しいサーヴァントか……。何だか緊張するな」

 

「ははっ。大丈夫だよ久世クン。この召喚システムで召喚されるのは基本的に、召喚したマスターかそのマスターと契約したサーヴァント、あるいはその両方と相性が良かったり何かしらの共通点がある英霊だからね。きっと君の力になってくれるよ」

 

 久世君が呟きにロマン上司が笑いながら答える。そしてその言葉に安心したのか久世君の顔から緊張の色が消える。

 

「そうですか……。分かりました。Dr.ロマン、お願いします」

 

「オーケー。それじゃあ召喚システム起動」

 

 ロマン上司が召喚システムを起動させると、サーヴァントを呼び出す召喚サークルの周りに十二の光の球が現れ、十二の光の球は召喚サークルの周りを高速で回って一輪の光の輪となる。光の輪は一輪から三輪に増え、やがて光の輪に囲まれた召喚サークルから光の柱が立ち昇り、そして光の柱の中から二人の人影が現れた。

 

 と、ここまでは前世でよく見たゲームのガチャと同じなんだけど……へぇ、この世界の召喚は二人以上のサーヴァントを一気に召喚できるんだ。

 

 久世君が召喚したサーヴァントは二人。片方は男で片方は女性。そして男の方は……。

 

「おっと、今回はキャスターでの現界ときたか。ああ、あんたらか。前に会ったな」

 

 青いローブを羽織り、手に杖を持った特異点の冬木で一緒に戦ったサーヴァント、キャスターのクー・フーリンだった。

 

 まあ、キャスターのクー・フーリンは特異点の冬木をクリアした報酬だから予想通りだけど、これから大丈夫なのだろうか? 確か次の特異点は……。

 

 そしてもう一人の女性の方は、白の洋服の上に鎧を装着した格好の少女だった。

 

「はじめましてマスター。まだ半人前の剣士なので、セイバー・リリィとお呼びください。これから、末永くよろしくお願いします」

 

「あ、アーサー王!?」

 

「は、はい。そのようです。でも冬木で戦った時とは少し違うような……?」

 

 クー・フーリンと一緒に召喚されたセイバー・リリィを見て久世君とマシュが驚きと困惑が混ざった声を上げる。

 

 だがそれも仕方がないと思う。外見と身にまとっている雰囲気が多少違うとはいえ、それでも先の特異点の大ボスの様な存在と同一人物である英霊がいきなり現れたら驚くだろう。

 

「この霊基の反応は間違いなくアーサー王のものだ。……でもマシュの言う通り、雰囲気が大分違うね。冬木にいたアーサー王はモニターから分かるくらい凄いカリスマが感じられたけど……」

 

「確かにな。それにこっちのセイバーは冬木のと比べて見て分かるくらい体の出来が未熟だ」

 

「あの……。先程から皆さん冬木のアーサー王と言ってますけど、もしかして以前に私を見たことがあるのですか?」

 

 久世君とマシュに続いてロマン上司とクー・フーリンが意見を言うと、それまで静かに話を聞いていたセイバー・リリィが質問をしてきた。その後、私達はセイバー・リリィと情報交換をして、久世君達はセイバー・リリィが伝説にある「勝利の剣」を引き抜いたばかりの頃のアーサー王である事を理解したのだった。

 

 セイバー・リリィの説明が終わった後でクー・フーリンが「ほぉ……。この可愛らしい嬢ちゃんがアイツにねぇ……」と言いながらセイバー・リリィの顔をマジマジと見ていた。……クー・フーリンさん。気持ちは分かるけどセイバー・リリィも怯えているからやめてあげたらどうです?

 

 ともかくこれで久世君と契約したサーヴァントは三人。盾役のマシュに前衛のセイバー・リリィ、そして後方支援のクー・フーリン。中々バランスが取れたチームなんじゃないかなと私は思う。

 

「それじゃあ次は薬研クンだね」

 

「あらあら……。私と同じマスターに仕えるサーヴァントですか。どんな方が現れるのか、何だか私までドキドキしてきました」

 

 ロマン上司の言葉に頼光さんが頬に手を当てながら言う。……うん。私も正直、ドキドキしてきましたよ。

 

 何しろ頼光さんは普通に話している時はバーサーカーだとは思えないくらいおしとやかな女性だけど、怒るとバーサーカーと言われて納得するほどの冷酷さを見せるのだ。しかも彼女は鬼を初めとする異形の存在が大の嫌いで、もし万が一外見がロリッ娘で正体が鬼の某アサシンを召喚してしまった日には、その場で戦闘になってもおかしくはない。

 

 そんな事態を避けるためせめてマトモな英霊が来てほしいと願っているうちに召喚システムが起動し、一人の英霊が召喚された。

 

 召喚されたのは褐色の肌を持つ若い男の英霊だった。服装は紫の上着に白のズボンで、手には身の丈程もある大きな弓を持っていて……って、アレ?

 

「サーヴァント、アーチャー。アルジュナと申します。マスター、私を存分にお使い下さい」

 

 あ、アルジュナかよおぉぉぉお!?

 

 アルジュナの自己紹介を聞いた時、私は思わず銀◯風に叫びそうになった。

 

 何でアルジュナがこんな序盤のガチャ(召喚)で出るの? ここでアルジュナが出たら五章のシナリオとかどうなるの? というか頼光さんを召喚できた時も思ったけど、何でこのガチャ運を前世で使えなかったの、私!?

 

 私が内心で混乱していると、他の皆も突然高位のサーヴァントの登場に驚いていて、ロマン上司が目を丸くしながら震えるような声で言う。

 

「す、凄い……。アルジュナといったらインドのマハーバーラタに登場する大英雄で、神々の王の息子とも言われている超一流のサーヴァントじゃないか……!」

 

 丁寧な説明ありがとうございます、ロマン上司。そしてロマン上司が言う通り、アルジュナはとんでもない超一流のサーヴァントで、それをこの世界の初めてのガチャ(召喚)で呼び出せたのはかなりレアな出来事だと言えるだろう。

 

「それにしても頼光さんだけでなくアルジュナまで召喚して契約するだなんて……。もしかして薬研クンってやっぱり医療スタッフよりもマスターの方が向いていたのかな。薬研クンを最初はマスターとしてスカウトしたオルガマリー所長の目は正かったってことか……」

 

 ……………!?

 

 は、HAHAHAHAHA!! 全くDr.マロンは冗談が好きだなぁ。

 

 私は医療スタッフだ。決してマスターなどではない。いくら強力なサーヴァントと契約していても、私の天職はこのカルデアの医療スタッフであって、私の本来の職場はこの安全なカルデアの中なのだ。

 

 その事に皆はいつ気付いてくれるのだろうか……。はぁ……。




読者の皆さんの予想をいい意味で裏切って、薬研と頼光さんと共通点があるサーヴァントは誰かと考えた結果、薬研の新しいサーヴァントはアルジュナに決めました。
「アルジュナとの共通点」
源頼光:インドラつながり
薬研 :周りに自分の意思をガン無視されて流されていくところ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。