立花響の中の人   作:数多 命

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文章量が減りつつある今日この頃。
や、山場はどっと増えるはずだから(震え声


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「な――――!?」

「っはああああああああ!」

 

予想だにしなかった灼熱に気圧され、思わず退く翼。

その後を追うように、火柱から刃が飛び出してきて。

不安定な剣に、喰らいついた。

 

「ぐ、ぅ・・・・!」

 

まともに立ち直っていないところに追撃をくらい、押し込まれる翼。

不自然に体が反れた、無理のある体勢。

次第に後退した翼は、

 

「おおおおおお――――!!」

 

横合いから飛び込んできた響に助けられた。

重い一撃を受け、防御に回らざるを得なくなったマリアは飛びのき、後退する。

 

「司、すまない」

「適材適所です。あの人は、わたしが・・・・!」

 

謝る翼に、響は首を横に振る。

総合的な実力は翼が上とは言え、対魔導師の経験はまだまだ発展途上。

将来は別として、今遅れを取ってしまうのは仕方の無いことだ。

改めてマリアを見る。

腹が見えるほど丈の短いシャツに、ホットパンツ。

腰布を揺らしたベルトは大きく無骨。

両手足はそれぞれグローブとブーツのみで、防具らしい防具はない。

まるで野盗のように身軽な格好の彼女は、カトラスを逆手に構えてこちらを睨んでいる。

 

「魔導師、だったんですね」

「ええ、運良く出会えたの」

「そうですか・・・・グレイ」

『Jahool』

 

短い会話。

響はヤーレングレイブルに号令。

主に応えたデバイスは、ギアを解除した体にバリアジャケットを纏わせる。

睨み合う二人。

 

「――――ッ」

 

先に動いたのはマリアだった。

陽炎を残して消えた彼女。

目を見開いた響が、振り向き様に拳を振れば。

手甲がカトラスとぶつかる。

距離を取ったマリアは再び肉薄。

切り落としを繰り出し、勢いを利用して回し蹴りも放つ。

一撃目は防ぎ、二撃目で飛ばされた響。

すぐに持ち直すと、正拳一閃。

逸らして避けたマリアの頬を、鋭い拳が掠める。

接近した響の腹に、蹴り。

突き放すことは出来たが、ダメージは通らない。

『頑丈なことだ』と内心で悪態をつきながら、斬撃三つ。

飛んできた斬撃を、響は躊躇無く殴り飛ばす。

 

『船体の損傷増加!』

『このままでは、潜行が困難になります!』

 

デバイスが拾ってくれた司令部の様子を聞きながら、反撃に出る。

踏み込んで接近。

懐に潜り込んで体当たりをかまし、吹き飛ばす。

宙に放り出されたマリアは身を翻して体勢を立て直し、足元に魔法陣。

 

『Rocket Move』

 

ティアナと同じミッドチルダ式の円陣を足場に、飛び出す。

ただ突っ込むのではない。

響を囲むように展開した円陣を、何度もバウンドしながら加速する。

 

「・・・・!」

 

段々捕らえきれなくなるマリアに苦い顔をしていた響は、何かを思いついたようだ。

徐に背を向けると、隙間を縫うように走る。

当然マリアも追いかける。

響が足を止めたのは、船体の端。

あと一歩下がれば転落してしまうようなギリギリの場所。

 

「何考えてんだ!?落ちるぞ!!」

 

案じるクリスに追い討ちをかけるように、マリアは響の正面に。

 

「ホルス!」

『Lord Cartridge』

 

薬莢が吐き出される。

炎に包まれる刀身。

 

「――――煌火」

 

熱と光が尾を引きながら、

 

「――――一ッ、閃ッ!!!」

 

響に襲い掛かって。

 

『――――Explosion !!』

 

飛び散る薬莢、走る雷光。

身をかがめた響は、無防備なマリアの動体目掛けて。

 

「――――紫電一閃ッッッ!!!!」

 

重い重い、カウンターを突き刺した。

回避はもちろん防御すらままならず、木の葉のように放り投げられるマリア。

船体に強く体を打ちつけた後、何度かバウンドしてようやく止まった。

 

(やっぱりフェイトさんと一緒、すばしっこい分防御が薄い・・・・!)

 

一方の響は警戒を解かないまま、予想が当たったことに安堵する。

苦しそうにえぐづきながら立ち上がるマリア。

油断はしない。

終わりが見えてきたからこそ、響は兜の緒を締める思いで構えなおす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「潮時、か」

 

「ばーさん、ちょっくらいってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず変化が起きたのはティアナ。

接近戦の苦手なクリスを援護しつつウェルを拘束していた彼女は、ふと。

自身のすぐ横に、何かが降り立つのを見る。

 

「・・・・!?」

 

思わず目を向けたティアナが最後に見たのは、跳ね上がる視界。

 

「ぉ、おい!?」

 

援護を受けながら鎌の少女に対抗していたクリスは、突然倒れたティアナに呼びかける。

返事は無く、何も出来ない彼女からウェルが逃げていく。

 

「くっ、そ!待ちやがれ!!」

「こっちの台詞デス!」

 

敵の声を背に受けながら、ウェルの再確保と、ティアナの安否を確かめに行こうとして。

後頭部に打撃を受けた。

 

「ッ雪音!?ランスター女史!?」

 

陸の異変に気づいた翼。

見れば鎌の少女がウェルとソロモンの杖を確保して、こちらに飛び移ってきている。

急に傾き始めた形成に、翼は歯軋り。

新手を迎え撃とうと、体を傾けて。

 

「こっちなんだよナァ」

「翼さんッ!!」

 

耳を劈く雷音、空気を裂く斬撃。

背後に響が現れ、切り落としを受け止めていた。

 

「はは、さすがは姉貴の弟子だ。よく受け止めた」

 

振り向けば黒いコートが翻り、ニヒルな笑みが話しかけてくる。

一瞬遥だと思ったが、違う。

体形が、そして何より声が別人の男。

だが何故だろうか、どことなく既視感を覚えて仕方が無い。

まず目を引くのは、腰の辺りで二つに割れたコート。

遥との違いは、肩に金属パーツが着いていることだろう。

無骨なズボンをはいている下半身と違って、上半身は何も着ておらず。

鍛えられた体と、刻まれた無数の傷跡が惜しげもなくさらされていた。

手にする得物は巨大な剣。

本来刺突目的で尖っている切っ先が、何故か丸みを帯びているのが気になった。

 

「けど、足りネェな」

 

剣に関する疑問は、嫌でも解消される。

縦二つに割れる刀身。

ぎょっとなる二人の前で、開いた隙間から小さな刃が列をなして現れる。

そして轟くエンジン音と共に、高速で回転し始めた。

ただの剣ではないと予想していたが、正体がチェーンソーだというのは予想外だ。

 

「――――!」

 

叩きつけられる殺意。

当てられた響の視線は、高く掲げられた凶器に釘付けに。

斬撃の予兆を見せた得物に向けて、咄嗟にシールドを展開する。

 

「は・・・・!?」

「ぐッ・・・・!?」

 

一閃。

シールドが当たり前のように裂ける。

斬撃が届いたのは響だけではない。

背後に庇っていた翼も、胴体を引っ掻かれた。

非殺傷設定になっていたようで、出血こそしないものの。

意識を刈り取るには十分すぎる一撃。

 

「――――守りたいなら、尽くを蹂躙しろ」

 

暗転する世界。

重力に逆らえず、体が傾く。

 

「『強敵だから仕方ないね』なんざ、戦場で通用しねぇぞ」

 

後頭部への衝撃が止めになって、完全に意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

K月M日

そういえば師匠、弟さんいましたね。

敵として会うなんて予想外だったけど。

え、これどうなるの。

わたし勝てるの?未来守れるの?

不安だああぁ・・・・。




響「素早いなら待ちかまえればいいじゃない」
某アルケミストな少佐「全く以てそのとおり」盛々ッ

というわけで、この作品のマリアさんは魔導師だったよという回でした。
見返してみると、わりとイケイケ()な恰好してるなぁ・・・・。

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