ゼロの悪夢   作:BroBro

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遅れて申し訳ありませんでした!
仕事の都合上ハーメルンを開く暇も中々無かったり個人的な事情とかも色々あったりして相当間が空いてしまいました。
時間的に見直しする暇もなかったのでグダグダでございます。はい。



白の中へ

 

アンリエッタの乱入から翌朝、ダークライはルイズに連れられて学園の外へと向かっていた。当然、ダークライは何故学園を出るのかと聞き、ルイズの口から出た理由に溜息を吐いた。

 

どうやらルイズとダークライはアルビオンという所に向かうらしい。その為にはまず港町へと行くのだが、馬を強制労働させて約2日間かかるというのだ。しかもそのアルビオンは現在戦場になっており、無事に帰って来れる保証は無いという。

 

流石のダークライもうんざりという表情を隠さなかった。しかしルイズが行くと決めてしまった以上、どれだけ危険でもダークライも着いていくしかない。

 

馬を連れて門を出る。朝霧の中を進んで行くと、うっすらと人影がルイズとダークライの行く手を遮る様にして立っていた。

 

少しづつ鮮明としてくる人影。そして、その人物との距離が数メートルに迫ると、見覚えのある人間が立っていた。

 

 

「やあ、待っていたよ」

 

 

胸ポケットに薔薇を一輪刺した男、ギーシュだった。一戦交えた事があるため、ダークライは直ぐにギーシュに気付き、この男もルイズと共に行くのだと簡単に予想した。

 

挨拶はしない。ただルイズの隣でゆっくりと滞空するだけだ。ダークライにとってギーシュなんて全く興味はなく、そこら辺にいる人間と差ほど変わりない。ルイズに手を出さなければそれでいい。

 

それに今は、一つやる事がある。

 

 

「ルイズ、私は少し学園に戻る」

 

「どうしたの?」

 

「野暮用だ」

 

 

ダークライの言葉にルイズは少し悩む素振りを見せたが、早く戻って来ると約束させると、ルイズはギーシュへと向き直った。

 

早めに帰ってこいと言われたからには実行しなければならない。朝霧によって視界が物凄く悪いが、ダークライの倉庫の位置は正確に把握している。

 

影に入って倉庫へと向かい、使っていない場所に置いてある、蓋のない樽に向かって進む。ダークライ以外使うことの無いこの倉庫に、ガタガタと樽が動く音と、人の声が聞こえる。勿論人がいる訳では無い。ダークライの住まいとなっているこの倉庫に近づこうと思う者は皆無と言っても過言では無い。

 

では何がこの音を発しているのか。今現在、ダークライの倉庫に住んでいる者はダークライ一匹では無くもう一人、と言うか、もう一体いる。日々静かなダークライとは対照的に、日々何か喋っていないと生きていけない様なヤツ。ココ最近暇な時の話し相手程度でしか無かった道具。

 

ソイツはダークライが近付くのが分かると、樽の中でカタカタと鳴いた。

 

 

「相棒ぉぉぉぉ!忘れられたかと思ったじゃんよぉ!」

 

 

樽に入った錆びた剣、デルフリンガーは大声を出した。

 

 

「静かにしていれば連れていく。どうだ?」

 

「ああもうなんでもいい!何でもいいから俺も連れてってくれ!どうせ祭りごとなんだろ?」

 

「そうだ。そうだから静かにしていろ。喋るのは構わないが音量を下げろ。音波攻撃は慣れていない」

 

 

そう言うとデルフは一瞬で喋らなくなる。単純な奴だと心の中で呟き、ダークライはデルフの音波攻撃で痛くなった頭を押さえながら、デルフを持ち上げた。

 

普段ならば剣なんて使わなくても、ダークライの身一つで大抵どうにかなる。しかし今回の敵は軍であり、下手な動きをした瞬間にルイズが狙われる危険性が出てくる。それだけに、出来るだけ体力を使わず、継続して攻撃できる手段が欲しかった。

 

普段のダークライならば恐らく使うことは無いであろう、殺傷系の攻撃。それもダークライは恐らく体を動かす必要も無い、全くのノーモーションでの確実性の高い技。その方法が、ダークライの頭の中にはある。デルフでなくても可能だが、あるものは使った方がいい。

 

最悪の事態を想定して今回は出発する。出来ることなら、この喋りたがりの身を抜くこと無く終わらせたい所だが、そう簡単にはいかないだろう。

 

何故こんなことになった、と改めて思うが、なってしまったからには仕方がない。覚悟を決めて行くしかないのだ。

 

 

「戻るか」

 

「おう!どんな奴が相手でも俺様が痛っ!?」

 

 

悪化した頭痛に耐え、見事なフォームを作りデルフを壁に向けて投げる。再度サイコキネシスで浮かせ、ダークライはデルフを上下に左右にグルングルンと振り回しながらルイズの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未だ深い霧の中でも、ダークライは正確にルイズの場所へと向かう。数十秒ほど経ち、ルイズ達と思われる影がうっすらと現れた。そして段々と鮮明になってきた時、影に異変がある事が分かった。

 

ルイズとギーシュの影が一つ、これだけなら何もおかしくはない。しかしもう一つ、人と思わしき影と、大きな生物と思わしき影があった。恐らくどこかの使い魔と主人だろう。また別の生徒が来たかとも思ったが、それにしては様子がおかしい。敵だとも思ったが、どうやら違うようだ。

 

デルフを所持しているので影に入って隠れながら近づく事は出来ない。しかし濃霧のお陰で声が聞こえる範囲までは近づくことが出来た。

 

 

「ーー相変わらず軽いな君は!まるで羽のようだ!」

 

「ーーお恥ずかしいですわ」

 

 

若い男の声とルイズの声が聞こえてきた。抱き抱えられているのか、よく見えないがルイズと何者かが楽しそうにはしゃいでいるのは分かった。

 

男の声は全く聞き覚えが無い。恐らくこの学園の人間では無いだろう。だとしたら陛下とやらが寄越した増援か何かだろうか。どちらにしてもルイズは気を許している様なので、そこまで警戒する必要はないようだ。

 

一先ずルイズと謎の男から離れ、一人残されている人影の元へと向かい、状況の説明を求めてみた。

 

 

「どう言う状況だ?」

 

「ふおぉわ!?」

 

 

突如として霧の中から現れたダークライに驚きの声を上げるギーシュ。そりゃそうなるかと心の中で呟くも口にしないダークライは、さっさと質問に答えてもらうために再度全く同じ言葉を、声にドスを聞かせて言った。

 

その言葉に、ダークライが腹を立てていると勘違いしたギーシュは、慌ててことの天幕を話す。

 

 

「君が居なくなった後、僕の可愛いヴェルダンデを一迅の風が吹き飛ばし、魔法衛士隊隊長のジャン・ジャック・フランシス・ワルドと名乗る人物が現れたんだよ。どうやら姫殿下からの密命で、僕達と共に旅に出る様だ」

 

 

魔法衛士隊と言う物は良くわからないが、増援と言う事でいいのだろう。姫が寄越した隊長と言う位なのだからかなりの実力者なのだろうか。だとしたらルイズの護衛が幾らか楽になる。ルイズは何も言わずに一人で行動する事が多いため、ダークライも最近ルイズの安全を確保出来るか自信が無くなっていた所だった。防御が強化されるなら、こちらとしては都合がいい。

 

拒む理由はダークライにはないし、拒む必要も無いだろう。

 

ひとしきり思案した時、隣のギーシュから声がかかった。

 

 

「そう言えば、君は何で喋れるんだい?」

 

 

唐突の質問だったが、隠す必要も無い事なので、素直に答えを言った。

 

 

「私は言葉は発していない。テレパシーを使っているだけだ」

 

「…やはり君には分からない事が多いね。まあ解明しようとも思わないけど」

 

「なぜそんな事を聞く?」

 

「ただの僕の興味という事もあるけど、一つ忠告しておきたくてね。あまり無闇矢鱈に人前で喋るのは良くないよ。珍しい生物とバレれば、君は世界から狙われる。僕達が危険に晒されることになるし、君の主人にも危険が及ぶ事になるよ?」

 

「……ふむ」

 

 

真面目な顔をしたこの少年を初めて見たダークライは少しだけ驚いたが、その内容にダークライは考えさせられることとなった。

 

この世界ではポケモンという生物自体存在しない。ダークライはポケモンと言うこの世界で言う新種で、さらに人語を介すと世界に知れ渡れば、ダークライを狙おうとする人間は現れるだろう。ダークライを狙う過程で、ルイズに危害を加える可能性だって充分有り得る。

 

ルイズはダークライにとってゴーディの庭並に大切な存在であり、同時に弱点でもある。どれだけ敵が強くても押し返せる自信はあるが、まだまだ魔法と言う能力は未知数だ。慢心は出来ない。

 

ルイズと自分の安全を確保する為には、周りから注目されない事が重要になるだろう。戦わなければ危険は寄ってこない。

 

普段ルイズの言うことしか効かないダークライだが、今回ばかりはギーシュの警告をしっかりと聞くことにした。

 

 

「特に今回向かう所は人が多く集まる場所を経由して行く。あまり堂々と喋らない様にね」

 

「留意しておこう」

 

 

そう返して、ダークライはルイズとワルドと言う男を見る。こちらの視線に気が付いたのか、ルイズとワルドはダークライとギーシュに向き直った。

 

 

「ルイズ、彼等を紹介してくれたまえ」

 

帽子を深く被ってワルドが言う。

 

ダークライが帰ってきていた事に気付かなかったルイズは、ダークライがギーシュの隣にいた事に若干驚いたが、ダークライが気付かない内に接近している事なんて毎日の事なので大したリアクションはせず、ギーシュとダークライを順に紹介した。

 

 

「同級生のギーシュ・ド・グラモンと、私の使い魔のダークライです」

 

 

ギーシュは慌てて深々と頭を下げ、ダークライは静かに目を瞑った。

 

 

「ほう、噂通り見たことの無い使い魔だね」

 

 

そう言ってワルドはダークライに近づき、観察する様に一週する。

 

またこのパターンかとうんざりするダークライだが、今回はベタベタと触ってこない分楽だ。

 

 

「噂では、暗黒の使い魔は闇と悪夢を操ったと聴く。銅をも一息で穿ち、生有るものに静寂を与える者だと。噂と言うものは人の手に渡るにつれ進化し、新たな外枠を作られていく物だ。僕の聞いた話が全て本当だとは思っていないが、君の事は頼りにしている。ルイズをよろしく頼むよ」

 

 

そう言って、ワルドはダークライに右手を差し出した。貴族が何故ただ珍しいだけの使い魔に握手を求めるのか、理由が分からなかったが、断る必要も無いのでダークライは無言で左手を差し出し、ワルドの手を取った。

 

軽く握手を交わす。何でもないただの握手であるが、握手と言う物は相手を探る第一歩でもある。

 

ダークライはワルドを探る様に見つめ、ワルドは握手している手を見つめる。そして何かに納得したかのように小さく唸り、ワルドは一歩下がった。

 

 

「…さて、本来なら君達に直接任されるはずだった密命が僕にも任された。詳細は道中で話すことにしようか」

 

 

ワルドは自らの使い魔であるグリフォンに跨ると、ルイズを手招きした。

 

 

「おいで、ルイズ。共に行こう」

 

「え?」

 

 

ワルドの言葉にルイズは驚きの声を上げ、躊躇う様にもじもじとする。そしてたまにちらちらとダークライの方を見ていた。

 

ダークライとしては正直行かせたくない。霧の中では影が掴みにくいし、グリフォンのスピードも未知数。見失う可能性は十分にある。まだワルドの事を信用し切っていないダークライは、ルイズを少しでも危険が多い選択肢からは外させたかった。

 

しかし、ダークライのエゴでルイズの自由を奪う訳にも行かない。使い魔であるダークライにとって、ルイズの安全は確かに第一だが、ルイズを安全という名の足枷に縛り付け、自由の選択をルイズから消したくは無かった。例え危険でも、死ぬ前にルイズが望む事を少しでも叶えてやりたいと思っている。それに使い魔と共に行くよりは、友と共に行った方がいいだろう。

 

だからダークライはルイズに言った。

 

 

「好きにしたらいい」

 

 

ダークライの言葉を聞いたルイズは、少し考えた素振りを見せ、コクリと小さく頷き、伸ばされていたワルドの手を取った。

 

 

「では諸君、出撃だ!」

 

 

ワルドの声が霧の中で響き、グリフォンが天に舞う。それを合図にギーシュは馬に跨り、馬を駆ける。ダークライはグリフォンが白く消えていった空を暫く見つめ、ギーシュを追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイズらが学園を発つ直前、学園の寮の一室で、タバサが寝巻きから制服への着替えを終えていた。

 

普段ならこのような早朝から支度はしない。何故こんな朝早くに起きて着替えをするか、その理由は一つしかない。

 

窓の外から聞こえた馬の嘶き、それと共に聞こえた巨大な何かが羽ばたく音。その音に疑問を覚え、窓の外を見た。窓から見える正門で、一瞬だけ黒い影が見え、溶けるように消えていく何かの姿をタバサは捉えた。

 

影の正体はまず間違いなくルイズの使い魔だろうと、瞬間的にタバサは確信した。同時に、タバサは己の使い魔であるシルフィードを呼ぶべく指笛を吹こうとする。

 

しかし、タバサの部屋の扉をノックする音によって遮られた。

 

 

「タバサ、起きてるんでしょ?」

 

 

扉の外から聞こえた親友の声。聞き慣れた声にタバサは窓から離れ、扉を開ける。

 

 

「珍しいわね、あなたがこんなに早く起きるなんて」

 

「それはこちらのセリフ」

 

 

不敵に笑うキュルケに、タバサは淡々と応える。キュルケも既に制服に着替えており、タバサより早く起きていた様だった。

 

そんなキュルケは、笑みを崩さずに話を続ける。

 

 

「こんな朝早く起きてどうしたの?」

 

「あなたと同じ」

 

「なら丁度いいわ」

 

 

まるでタバサの返答を分かっていた様な速度でキュルケが反応した。理由がわかっているタバサは、やれやれと言った具合に目を閉じた。

 

 

「彼の事が気になるのよ。あなたもそうでしょ?正体不明の存在、ルイズしか心を許していなく、しかも会話が出来る。そんな生物が今までいたかしら?」

 

「…少なくとも、聞いたことは無い」

 

「そうでしょ?あなただって気になっている筈よ。彼が一体何者なのか、あの力は何なのか、とかね」

 

 

キュルケの指摘は的を得ていた。特にダークライに関する力は、タバサにとって興味があるという言葉では片付けられないくらいである。

 

力には技量が伴う。殆どの貴族は力に技量が付いてきていなく、大きな肩書きの割には弱いなんて事も多い。力に合わせた状況判断力、空間認識力などが伴い、本当の強さを得る。

 

ダークライはその全てを兼ね備えている気がした。とてつもなく強大な力。それを操るのならどれほどの技量が必要だろうか。学園の生徒は、ダークライが人外だから強いと片付けるだろうが、幾ら人外でも経験は必要だろう。

 

力を欲するタバサは、ダークライとギーシュの戦いを見て、ダークライの事を多く知ろうと考え始めていた。

 

彼の戦いを見れば、何かが分かるかもしれない。何か足りない物が補えるかもしれない。例え人外であっても、ダークライの戦いは魔法に近い物がある。ソレを知って、自分の糧にしたい。その思いが今のタバサを支配していた。

 

 

「私は行く。彼等を見失うと困る」

 

 

そう言って、間髪入れずにタバサはシルフィードを呼んだ。羽ばたく音と共に現れた使い魔にタバサは跨り、心底嫌そうな顔をしているシルフィードに行き先を告げる。

 

ルイズの使い魔を追って。その指令を聞いたシルフィードは、大きく首をガクッと崩し、嫌々ながらもダークライが向かっていった方向へと頭を向ける。

 

そしてまだ部屋の中に取り残されているキュルケを一瞥し、一言言った。

 

 

「来たければ来るといい」

 

「行くわよ!当たり前じゃない!」

 

 

勢いよくシルフィードの背にキュルケが飛び乗り、シルフィードがむぎゅっと声を上げる。突然重量が増えた事により少しバランスを崩すも即立ち直り、ふらふらした動きでダークライを追って飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ちょっと時間が無いので、ポケモン図鑑は別日とさせて頂きます。

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