なかなかの難産でした。まあ、難産だからって出来がいいとかそういう訳では無いのですけれども……
一先ず何とか苦し紛れに出来た続きです。出来はお察し……
追記
後書きポケモン図鑑書きました
『土くれのフーケ』と言う通り名を持つ盗賊が居る。錬金の魔法を用いて扉や壁を粘土や砂に変え、あらゆる物を盗み出す。その目撃情報は少なく、フードを被っていると言う事ぐらいしか分かっていない。固定化の魔法を用いても破ってくる為、貴族の中では悪い意味で有名人である。
しかし、全てが全て静かに盗み出す訳ではなく、時には某機動戦士もビックリの30m近くの土のゴーレムを作り出し、宝物庫や貴族の家を破壊しまくる。そして貴族らが反撃出来なくなった所で大胆に盗み出す。
並の貴族ならゴーレム程度ならば対処できる。しかし30mともなれば話は別だ。ただの魔法程度なら意にも返さずに進撃を続ける。どう足掻いても動き続ける圧倒的な存在は、貴族達を恐怖に陥れていた。
99%の確率で盗みを成功している土くれのフーケが次に選んだ場所、それがトリステイン魔法学校である。
巨大なゴーレムが現れたのは、ダークライとデルフリンガーとの話が佳境に入った時だった。
ズウゥゥゥン… ズウゥゥゥン…
数秒置きに響き渡る轟音、音と共に地が大きく揺れ、倉庫の中の瓶やら木箱やらをガタガタと鳴らす。度々何かを踏み壊しているのか、爆発音が鳴り響いた。
「あれはなんだ?」
倉庫から出てきて上空へとやって来たダークライが、共に宙に浮くデルフリンガーに聞く。
眼下に見える巨大な人型のソレは、とても生物とは言えない無機物の様な肌をしている。そしてその人型の肩に乗るフードを被った人間が一人。常人ならば暗闇で顔を認識することは出来ないだろうが、元々夜行性であるダークライは隠された顔を見ることが出来た。
度々学院内で見かける女の教員で間違いない。ダークライは名前を知らないが、ミスロングビルと言う女教員である。
「あの肩にいる奴は知らんが、うるさいのは知ってる。あれはゴーレムだ。それも随分とデカイ。出来もいい見てぇだ」
「私もゴーレムとは対峙した。あの様なサイズでは無かったが……ゴーレムはあの神共よりも巨大になるのか」
「……あ〜、悪い相棒。お前さん神と対峙した事あるのか?」
「空間と時間の神らしい。倒し切れなかったが、退きはした。人間の助けもあったがな」
「おでれぇた……まさか神様と戦って生きてるなんてな……つくづくお前さんが末恐ろしくなってきたぜ」
そんな話をしている内に、ゴーレムは一つの倉庫の前で止まり、その扉を殴り始めた。
「アレは何してるんだ?」
「恐らく倉庫をぶっ壊そうとしてんだろ。倒しに行かなくていいのかい?」
「被害者が出ないのなら、倉庫の一つや二つどうなったとて私は知らない。ルイズが関わっているなら別だがな」
「は〜、生粋の主馬鹿って奴だね。と言うかそろそろ俺っちを持ってくれない?この力で浮かされると寒気が止まらないんだけど……肌も無いのに鳥肌になりそうなんだけど」
「こっちの方が楽でいい」
「あぁ、そう……」
順調に扉を破壊していくゴーレムを上空から見ながら、デルフリンガーは大きく溜め息を吐いた。御愁傷様である。
他愛の無い話を続けながらゴーレムを観察する事数分、ゴーレムに異変が起きた。
ゴーレムの右手膨ら脛当たりから小規模な爆発が発生する。明らかに魔法による爆発である。それに、ダークライはその爆発に見覚えがあった。
「ルイズ」
ゴーレム足元に現れた特徴的な桃色の髪が見えた時、ダークライは無意識に呟いた。
ルイズと共に他の2人、タバサとキュルケもゴーレムに攻撃を与えていた。正直、後ろの2人なんてどうでもいい。ルイズがゴーレムと交戦している。それだけでダークライの行動は決まる。
「行くぞ」
「切り替えはやっ!?」
即座にルイズの前へと降下する。タバサとキュルケは驚いて攻撃の手を止めるが、ルイズだけは魔法の詠唱を止めなかった。
そして一つの魔法の詠唱が終わり、ゴーレムの一部が爆発した時、ルイズはダークライに振り向き、睨みつけた。怒っている様だ。
「遅いわよ、どこいってたの?」
「上で観察していた。ルイズが動いたので私も動いた」
淡々と語るダークライ。主に関係無ければ動くことは無い事を簡単に言い表したその言葉を聞いたルイズは大きく溜息を吐く。
「いい?私に関係無くてもこの学園に何かあれば駆け付けること。分かった?」
「了解した。ルイズ」
相変わらず表情一つ変えずに答える。本当に分かってるのかと不安になるが、これでもしっかりと分かってると言う事を知っているので、また小さく溜息を吐いてルイズはゴーレムに向き直った。
未だに倉庫の扉を殴り続ける見上げるほど巨大なゴーレムはルイズ達の攻撃を意にも解してない。蚊に刺されたとも思っていない様だ。
馬鹿にされているような気がして、ルイズは唇を噛む。
「どうやら有効打は与えられてない様だな」
「やかましい」
さらにダークライが追い打ちをかける。悪気はない。ただ思った事を言ってしまうだけなのだ。
ダークライの言葉をバッサリ切り捨てたルイズだが、ダークライの言うことは間違ってない。残念ながら、手持ちの攻撃は使い果たした。それはタバサとキュルケも同じである。
「ダークライ、何かいい手段は無い?あんた観察してたんでしょ?」
「ふむ、そうだな……」
足に向けて軽く"あくのはどう"を放つ。軽くと言っても人一人分の太さなのだが、それを受けてもゴーレムは扉への攻撃を止めなかった。どうやら威力が足りない様で、威力を高めれば崩せない物でも無いのだが、少しでも強く力を使えば魔力とやらが勝手にダークライの補助に回り、結果的にルイズに怒られる事になる。
寿命が減るよりも面倒臭いのはルイズの長時間説教である。一、二時間ぶっ通しで説教し続けるのだけは流石のダークライも嫌なので、ダークライはゴリ押しによる破壊を諦めた。
次にダークライはゴーレムの肩辺りまで浮上し、ゴーレムの肩に向けてダークホールを放つ。すると今まで扉を殴っていたゴーレムが手を止め、ダークホールを手で受け止めた。その後幾度と無くダークホールを放つが、今までの鈍重な動きが嘘のように素早く幾つものダークホールを受け止めていく。
「何故あの部位の攻撃は防ぐのかしら?」
キュルケが不思議そうにダークライを見上げながらタバサに聞いた。
「ここからでは見えないけど、あの肩の部分に何か弱点があるのかも」
「弱点?どんな?」
「分からない。ゴーレムが大きくて見えないけど、もしかしたら"土くれのフーケ"がいるかもしれない」
「フーケが?」
闇夜に溶け込む色の弾丸を撃ち続けるダークライ。それを観察する様に見るタバサの言葉は、何故か抑揚があった。
そして約一分間攻撃し続けたダークライは少し不機嫌そうに目を歪ませながら降下して来て、ルイズの隣に戻る。そしてソレを確認したゴーレムは、また破壊行動を再開した。
「……恐らく、あの肩にいる人間が本体だ」
「人間?」
「アレを操っている者で間違いはない」
タバサの質問に答えたダークライはルイズに向き直り、ルイズに作戦を提示した。
「私が本体を攻撃する。ルイズ達は両腕を抑止してほしい」
簡潔に述べられた作戦はとても簡単なものだった。既にひびが入っている扉の状態をみて、既に時間が無い事はルイズ達にも分かっている。今ルイズ達に決定打が無いし、ダークライの方が三次元の戦闘が出来る。キュルケとタバサも魔法で空を浮遊する事は出来るが、ダークライより移動速度が遅い。この中で誰よりもダークライの方が空中戦に向いていた。だからタバサとキュルケから反論は出ない。
しかし、ルイズだけは違う。
「駄目よ!」
掴みかかる剣幕でダークライに言い寄る。彼女が反対する理由は一つ。ダークライの寿命を心配しているのだ。
攻撃をしたら寿命が減ることは分かっている。ダークライを魔法が生かしているのであれば、必然的にダークライの攻撃に魔法と言う概念が干渉してくる。それは即ち、ダークライの寿命を減らす事を意味する。先ほどの攻撃は小さいものだったが、どれ程減ったか分からない。
ルイズには、「寿命を減らさせてほしい」と言っているに等しい提案には賛成できなかった。
「ダークライの死が早まる位なら倉庫が破壊された方がマシよ!」
「ちょっとルイズ…!」
遂にはそんな言葉さえも言い出し、キュルケがルイズに一言言おうと一歩出る。
しかしルイズの「だからっ!」と言う言葉がキュルケの動きを封じた。
「だから、私を『土くれのフーケ』の所まで連れて行って。私が動きも封じるし、トドメも決める!」
ルイズから出された提案は、タバサとキュルケを少なからず驚かせた。
「無理よ!爆発しか出来ないじゃない!」
「気持ちは分かるけど、無理はしない方がいい」
2人からも静止の声が入る。しかし、ルイズはダークライの蒼い目をジッと見据え、離さなかった。
「私は無力なのはわかってる。まだ爆発の力も上手く扱えてないし、こんな土くれ一つの動きも止められない。貴方からしたら、とても頼りない主かもしれない」
「でも、だからこそ!ここで貴方に私の可能性を見せる!ダークライに相応しい主になれると、私自身に、貴方に分からせるの!」
ダークライの目をしっかりと捉え、ルイズはそう言い放った。その瞳には大きな覚悟の光が宿り、一つの迷いも見受けられない。
そしてそのルイズの言葉を沈黙を保ち、真っ向から聞き続けていたダークライは、ルイズの手にゆっくりと自分の黒い手を伸ばした。
「元より、断るつもりは無い」
ダークライはルイズにサイコキネシスをかけ、浮遊させた。いきなり足が地面から離れたため、ルイズは小さく悲鳴を上げる。数十秒くらい小さな悲鳴が断続的に続いたが、慣れたのか一息深呼吸してタバサとキュルケの方を向いた。
「2人も攻撃お願い!」
「ふふ、お願いされなくても元よりそのつもりよ」
「言っている時間があるなら攻撃に移ってほしい」
「んなっ!?人が恥を偲んで頼んだってのにあんたらは!」
「……ルイズ、行くぞ」
先ほどのシリアス感など無かったかの様な会話に少し気が抜けながらも、ダークライはルイズと共に上空へと昇る。
そしてゴーレムの頭と同じ高さまで来ると、ダークライは右肩の上を指さした。
「アレが本体だ」
肩の上にはフードを被った人間が立っていたりフードの影に隠れて顔の半分から上は見えないが、その人間はダークライ達を見ていた。
唯一見える艶のある唇は無表情に口を閉じ、次の瞬間ニヤリと笑う。
ちなみにダークライの目からはロングビルの顔がしっかりと見えているので、何を今更謎の悪役感を出しているのだろうと不思議に思った。
そんなダークライの思考を知る由もないロングビル、基フーケのゴーレムが大きく左腕を振り上げた。
「まずい、トドメを刺す気よ!」
ダークライと共に空中で静止するキュルケが叫ぶ。その声を聞いたルイズが倉庫の扉を見ると、先程まで小さかった亀裂は知らぬ間に大きくなっていた。
あと一撃、大きな衝撃があれば完全に破壊されるだろう。その一撃が今下されようとしていた。
上がった左手が勢いよく下がる。それが扉に接触しようとした時、大きな衝撃音と共にゴーレムの左手が軌道から逸れ、空気を切った。
「今の内に右手を抑えて」
衝撃波を生み出す魔法をゴーレムの左手に放ったタバサが淡々とダークライ達に言った。
ルイズとキュルケにはタバサの無表情な顔が、この時だけはドヤ顔に見えたと言う。
「タバサにだけ良いところは渡さないわよ!」
「負けてらんないわ!」
いきり立ったキュルケが魔法の詠唱を初め、杖から大きな火球を生み出し、ルイズは適当に詠唱してゴーレムの肩に目掛けて爆発の魔法を放った。
ルイズの爆発の魔法はゴーレムの右腕に防がれ、指先を大きく抉って終わる。
「まだまだ!」
そこにキュルケが先程作った火炎弾を撃ち込んだ。
二つの衝撃に耐えられなかったのか、ゴーレム右肘から先が弾け、本体が一瞬だけ顕になった。その一瞬さえあれば充分。
フードの影から驚いたように口を開けたフーケが見える。それを見てルイズはニヤリと笑った。
「爆発!!」
大きな掛け声と共に、全身の筋肉を使って振り下ろされるルイズの杖。頭頂から下腹部までの上下ほぼ180度振り下ろされた杖は、ゴーレムの肩を壮大に爆破した。爆煙と土煙の中からフーケらしき人影が落下しているのが見え、「ぐえっ」と小さな悲鳴を上げて地面に落下した。
肩を爆破されたゴーレムには体全身に亀裂が走り、ガラガラと体が崩れて行く。そして最初から何も無かったかの様に、ゴーレムの全てが崩れ去った。
「やった!?私やった!?」
未だ自分がフーケを倒した事に信じられないのか、ルイズがダークライの肩を揺さぶりながら何度も聞く。
「倒したから落ち着け。威厳はどうした」
揺らされながらもそれをジト目で制すダークライ。ルイズはよく喜んでいるが、ダークライからはフーケはいとも呆気ない相手としか映らなかったようだ。
そんなダークライの声を聞いて息が荒かったルイズは少しづつ落ち着いて行き、一つ大きく息を吐く。
「フーケは?」
キョロキョロと首を動かしながら空中で体もクルクルも動かすルイズ。もう完璧に空中で滞空する状態に慣れている様だ。
そんなルイズに下にいるタバサから「確保済み」と声がかかった。その声にいち早く反応したルイズはダークライの手を引いて勢いよく地面へと降りる。地上へ着地する寸前にダークライはルイズの体を少し引き、着地の衝撃を和らげた。
そんなダークライの配慮も知らず、ルイズはダッシュでタバサの元へ向かい、上半身が布で見えなくなって転がっているフーケの元へと向かった。
フーケはピクリとも動かない。死んでいるのかと思ったが、無音で上空から降りてきたダークライが「息はある」とルイズに告げた。どうやら気絶している様だ。
「これがフーケなの?」
「ゴーレムの上にいた者が本当にフーケなら、間違いなく土塊のフーケ」
ルイズの問にタバサか答える。
「どうする?」
「決まってるわ、学園に突き出すのよ」
「でもこの時間よ?」
現在深夜に近い時刻である。フーケもこの時間を狙ったらしく、あれだけの騒ぎがあっても大きく動き出す者はいない。恐らく学園の者達が寝た時刻に倉庫の中身を奪取するつもりだったのだろうが、相手が悪かった。
どちらにしてもフーケをこのままにしては置けない。しかしオスマンに差し出そうにも時間が時間でなんか忍びない。
「私達がこの事態を素早く終結させた。寝ている学園の管理者に気を使う必要は無い」
と、悩んでいるルイズにタバサが後押しする。言葉に小さく怒気が含まれている様に感じるトゲのある言い方だが、彼女の言っている事も間違ってはいない。感謝されども文句は言われ無いだろう。
「……そうね、じゃあ早くフーケを牢にぶち込んじゃいましょう」
「言い方が物騒」
一先ずオスマンの元まで運ぶと言う方針で決まり、黙って待機していたダークライがフーケを持ち上げた。
ダークライの行動がいつも以上に速いとその場の全員が思った。
この行動の速さによって、フーケの素顔を見た者はいなく、眠気によって、それを知ろうとする者もいなかった。
後書きポケモン図鑑(マイナーポケモン編)
『ポワルン』てんきポケモン
タイプ: 晴れ【ノーマル】 雨【みず】 日本晴れ【ほのお】 霧【こおり】
高さ:0.3m
重さ:0.8kg
とくせい:てんきや(専用特性)
『図鑑説明』
天気によって姿形、タイプが変わる珍しいポケモン。ミノムッチは場所によって外見が変わるが、ポワルンはタイプも変わる。これはポワルンのみの特性である。
見た目が可愛く、女性からの人気も高いが、ステータスが中途半端で扱いにくいポケモンとなっている。
ポワルンが【ほのお技】を覚えて、姿を日本晴れの【ほのおタイプ】の姿に変えると、ほのおタイプの威力は上がる。【てんきや】の特性の利であるが、基本パラメータは上がらないため結局中途半端になってしまう。加え、タイプが天気に依存する事もあって、目的のタイプを扱う事が難しい。
しかしどのタイプの姿も見た目が可愛く、特異な特性を持っているため、戦闘以外を目的に集めている人も多い。