翌日の朝、総統執務室(ヒトラーがそう名付けた)にはヒトラーをはじめとするゲルマニア鎮守府(この名前もヒトラーが勝手に決めた)の幹部全員と艦娘全員が集まっていた。
「大本営から任務が言い渡された」
最初に口を開いたのはヒトラーだった。
「任務の内容は鎮守府近海を制圧し、その制海権及び制空権を維持し続けることだ。我がゲルマニア鎮守府始まって以来最初の大規模作戦となる。諸君には勝利のために今まで以上に戦ってもらう。大淀君、クレープス、詳しい説明を」
「総統閣下、この地図で説明させていただきます」
クレープスは鎮守府近海の地図をテーブルに広げて言った。
「現在、我がゲルマニア鎮守府一帯には都市のみならず大規模な港に工業地帯などが存在し様々な面から非常に重要な地域となっています。皆さんもご存じのように現在、この地域の近海では深海棲艦による大規模な攻撃が行われており、都市や工場にたいして直接の被害は出ていないものの、影響は深刻で鎮守府近海の奪還は重要な課題となっています。ここに鎮守府が新たにに作られたのもそのためです」
クレープスはそう言いながら地図の上で指を鎮守府から小笠原諸島と書かれた島に移した。
今度は大淀が説明する。
「敵の主力はこの小笠原諸島のあたりに存在しており、そこから攻撃を行っているものと思われます。つまりその主力さえ叩けばこちらの勝利です。鎮守府近海の安全を確保すればそこから我が国の領海、経済水域の奪還の足踏みとなり非常に重要な作戦です」
任務の内容、目的を聞いたところで次に口を開いたのはブルクドルフだった。
「総統閣下、お言葉ですがどのように作戦を進めるつもりですか?現在の鎮守府の戦力では敵を撃破するには足りませんが・・・」
「心配することはない。大本営から通常より多くの資源や新しい艦娘を送ってくるといっている。他の鎮守府からも支援があるようだ。現段階ではまず、敵の正確な位置、そして戦力を探りつつ建造やドロップで戦力を整えていく。本格的な侵攻はその後だ」
ヒトラーはそう言ってブルクドルフをなだめると艦娘達を見回して「諸君、こういうことだ。本作戦はクラウゼヴィッツ作戦と名付け、鎮守府近海の安全を確保することに終始していく。名誉にかけて、諸君の戦いに期待している。詳しい作戦内容は追って説明する。以上」
艦娘達一同は頷いた。
ゲルマニア鎮守府最初の大仕事が始まった。
そして普通ならこれから艦娘達は訓練に励み彼らはクラウゼヴィッツ作戦を練り始めるはずなのだが・・・
クレープスが恐る恐るといったようにヒトラーに言った。
「総統閣下、少し報告せねばならないことが・・・」
ヒトラーは彼を見た。周り一同も何だろうと彼を見る。
クレープスはゆっくりと口開く。
「昨日閣下は我々に戦艦及び空母の建造を命じられましたね?総統は眠っていましたので我々が代わりに資材を入れて建造したのですが・・・」
その一言に何か思い出したのかブルクドルフはぴくっと反応し大淀は目をそらした。
「思い通りのが出なかったのかね?そんなことなら別に問題はない、仕方のないことだ。その新造艦に会わせてくれ」
ブルクドルフがチラリと彼を見る。
「総統閣下・・・その新造艦ですが・・・」
「装備開発の時に出た失敗ペンギンとミスクラウドが誤って混ざりこうなりました」
おろおろするクレープスに続いて大淀が追って説明し総統執務室の窓に向かって手招きした。
そして一匹の生物が入ってきた。
それは執務室の机ほどの大きさの生物だった。
カタツムリのような姿かたちに砲身をいくつか背負い、つぶらな目鼻と短めの少し癖のある茶髪のボブカットに艦橋の信号桁を模したカチューシャをしていた。ヒトラーはその髪型に見覚えがあった。
以前艦娘図鑑でみた戦艦陸奥の髪型だった。
「戦艦陸奥が出るはずが、こうなりました」
ヒトラーはしばらくその謎の生物と部下たちを見つめていたがやがて手をプルプルと震わせながら資料を見るためにかけていた眼鏡をはずしていった。
「・・・昨日の建造に関わったものは残れ。アンポンタン」
命令を聞いて艦娘達が総統執務室から出ていく。
残ったのはヒトラー、ゲッベルス、クレープスとブルクドルフの4人。
ブルクドルフはふと、誰かが足りないような気がしたが、すぐにその考えは打ち消された。
「・・・どうしてこうなったんだよ!!」
ヒトラーが大声で怒鳴った。
「私が命じたのは艦娘の建造だぞ!!誰がこんな得体のしれないもん建造しろといった、ええ!?誰が責任とるんだ!!」
ヒトラーはあまりの出来事に、資源の無駄遣い(?)に怒っていた。
「なぜ建造時に変なものを混ぜるなんてことしたんだ、そんな奴大っ嫌いだ!!」
ブルクドルフが必死で弁明をする。
「クレープスがペンギンと雲を資材と勘違いしてしまって・・・」
「いや、ふつう間違えねえだろ!!何やってんだ大っ嫌いだバーカ!!」
「総統閣下、我々は新入りです!!」
ヒトラーは立ち上がりペンをつかんだ。
「こんな化物どうやって扱えばいいんだよ!?なんてことしてくれんだ!?」
そしてペンを思いっきり机に投げつける。
「畜生めぇぇぇぇ!!」
彼の怒りは続く。
「いいか、建造ってのは、開発は何でもかんでも混ぜればうまくいくと思ったら大間違いなんだ!きちんとしたバランスや運、きちんとした材料!でないとこんなウォ!?ということになる!私の部下への教育が足らんかった~!
これが私じゃなかったらお前ら即、粛清されていたぞ!!私がスターリンだったら!!」
そういってはぁはぁと息を切らせながらヒトラーは椅子に座る。
「私だってそれはミスをする。しかしこんなミスはいくら何でもない。第一私は戦艦を、空母を望んでいた。私が望んだのはこんな巨大カタツムリ、俗にいうゆるキャラじゃない!」
彼の怒りは、絶望はなおも続く。
「大火力に耐久力、そしてあの美貌!白い肌に目に刺さるような!おっぱいぷるーんぷるん!!」
部下たちがうわぁ・・・という顔をする。
「もしもさ、それが出てきたら敵なんか一撃で木っ端みじんにしてそしてイチャイチャするのが夢だったんだ!さぞかし幸せだろうな、あのおっぱいに囲まれて・・・だがその夢ははかなくも貴重な資材とともに消えてしまった・・・柴田さん、どうすればいいのか教えてくれ!!」
クレープスとブルクドルフは顔を見合わせた。
小声で「柴田さんって、知ってる?」「いや、知らない」
外の艦娘達で潮は総統の怒りように思わずえぐえぐと泣いていた。
大淀がなだめる。
「ねぇお願い泣かないで・・・あとであのちょび髭ぶっ飛ばしましょうね・・・」
ヒトラーの顔に落胆が生まれ椅子に座りながらうつむいた。
「とにかく・・・一応、砲はついていることから戦闘には使えるだろう・・・もしかすると元に戻る可能性もあるかもしれん・・・」
ヒトラーは部下たちの顔を見た。
「お前たちに言っておく。今後、こんなことやったら晩飯抜きだからな・・・それにしてもあれの名前どうしよう・・・」
その後、ヒトラーたちは重苦しい雰囲気の中作戦会議を行った後、ヒトラーはしばらくの間眠りについた。
こうして鎮守府に新たに仲間?が入ってきた。
そのころ、砂浜に3人男が倒れていた。
一人は老人、一人は太っており、一人は禿げ頭。3人ともドイツ軍の服を着ている。
鎮守府の騒がしさはとどまることを知らない。
クラウゼヴィッツ作戦はこうして幕を開けた。
追記 ちなみにその謎の生物は「り陸奥たか」と名付けられた。
ネットでり陸奥たかを見つけてこの話を思いついた。
毎回読んでくれてありがとうございます。しっかり更新も内容も頑張っていきたいと思います。
そのうちフェーゲラインやヒムラーも出していきたいと思っています。犬のブロンディも出そうかな。妖精さん達による親衛隊とか。
追記
新しいssを思いついた。
「帰ってきたヒトラー」のラブライブverか俺ガイルverをやりたいと思う。
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