総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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74話 最初の任務~チャンコロは差別用語~

 BAOM!BAOM!

 PAPAPAM!

 ZIPZIP!CHUNK!

 フィリピン北部、泊地ヴォルフスシャンツェ近郊の訓練場には爆発音と銃声が絶え間なく響き渡っていた。

 鉛の銃弾が飛び交い、爆発で土埃が舞う中を兵士や艦娘達が駆け抜けていく。

 ヒトラー直属の特殊部隊『東亜総統特務隊』は来るべき実戦に向け実弾演習の真っ只中にいた。

 演習といっても飛び交っているのは実弾なので少しでも気を抜けば血や脳漿や臓物をまき散らして死ぬことになる。

 兵士や艦娘達の間で悲鳴や文句を上げるものが出てくるのはそう少なくなかった。

 「ひぃぃ!!フェーゲさぁぁぁん!!見捨てないで下さああああい!」

 「ちょっと青葉、何止まってるのよ進みなさい!クソ提督アンタもよ!」

 「クソ!実弾だなんて聞いてないぞ!」

 悲鳴を上げて兵士や艦娘達が走り回る中、東亜総統特務隊の隊長である佐藤大輔二等陸佐はMP40を兵士達の足元に撃ち込みながら彼らを追い立てていた。

 「走れ!走れ!ホラ!そこ見えてるぞ!」

 「いいぞ走れ腰抜けめ!」

 佐藤の隣では彼直属の副官となった中村正徳一等陸曹が兵士たちを囃し立てていた。

 本来なら兵士たちとともに逃げ回っている彼が自分の隣にいることに佐藤は眉をひそめた。

 「あれ!お前何してんだよ走れよ」

 「ハァ?」

 「ボケッ!」

 PAPAPAM!PAPAPAM!ZIP!

 とぼけた中村の足元にMP40を撃ち込み追い立てる。

 「ヒィッ!」

 悲鳴を上げ走り出す中村。

 そんな彼らの下に一人の親衛隊員がやってきた。

 武装親衛隊中佐オットー・スコルツェニーである。

 「やっているな、実弾訓練かね」

 「あ、スコルツェニー中佐」

 敬礼をする佐藤とスコルツェニー。

 「実弾訓練が一番だ、我々武装親衛隊もやっている。どうだ、隊員は使えそうかね」

 「連中、体がなまっていましたがだいぶ使えるようになってきました。後は爆破訓練とかが残っていますな。・・・ところで中佐いったい何用でここに?」

 「うむ。早速だが総統閣下から君たちに命令が下された。実戦だ」

 「ほお」

 実戦という言葉に顔をにやけさせる佐藤。もとより彼は好戦的で退屈を嫌いスリルを追い求める男だ。

 それ故にこれまで数々の困難な作戦を遂行し、それ故に上層部から警戒されてきた。

 「その前に君に会ってほしい人物がいる。今回の作戦の協力者だ。敵の情報を提供してくれる」

 「分かりました、では装備と制服の支給をお願いします」

 佐藤とスコルツェニーは情報提供者の待つ建物へと向かっていった。

 

 

 

 

 「あ、お前は・・・」

 「ニーハオ!」

 待っていた情報提供者を見るなり佐藤は声を上げた。

 その情報提供者は佐藤の、というより歴史をちゃんと学んでいる者ならだれでも知っている人物だったからだ。

 禿頭に白い口髭、一見すると人の好さそうな中年男性。中国国民党総裁にして中華民国(台湾)の初代総統、蒋介石の姿があった。

 「紹介しよう。中華民国総統、蒋介石氏だ。現在は東南アジアや大陸でゲリラ戦や諜報活動、武器売買等の活動を行っている。この地域の事情に最も詳しいため招聘した」

 蒋介石は自己紹介を始めた。

 「我名字蒋介石 我店『猫糞一号』 信用第一良心的 後々保証付 世界的有名」

 「この男信用できますか」

 佐藤はスコルツェニーに言った。

 蒋介石はかつて国民党を率いて中国大陸で日本軍と敵対した。いわば、かつての敵である。

 そもそもなぜこの男がこんなところにいるのか。

 日本人であり自衛官である佐藤が警戒するのは当然だった。

 スコルツェニーは答えた。

 「さあ?防衛省統合幕僚監部の紹介らしいが・・・まぁ、上層部がわざわざ紹介してきたのだ、信用できるんじゃないか?」

 自己紹介は続く。

 「我独軍大協力 打倒露助深海棲艦 軍事情報沢山提供 家内安全交通安全 世界平和万々歳」

 「このチャンコロ怪しいです」

 いつの間にか佐藤の隣に中村が立って耳打ちしていた。

 連れてきた覚えはないのにいつの間にか来ていた中村に佐藤はわずかに驚いた。

 「お・・・おまえどこから」

 だが、中村の声は大きく、チャンコロという言葉は、中国人の蔑称は蒋介石達の耳にしっかり届いていた。

 蒋介石の隣に立っていた副官らしき大男がモーゼル拳銃を抜き出し中村に突き付けた。

 「ダンナ、殺シテイイダカ」

 蒋介石が副官の言葉に頷き、モーゼル拳銃を抜き出す。

 「チャンコロ、それ差別用語。支那人馬鹿にする、それ日本人悪いこと分かる」

 二丁の拳銃が中村の眼前に突き付けられる。

 「死ぬよろしい」

 「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」

 突然の状況に中村は泣きながら謝罪した。

 しばらく展開を見ていた佐藤であったが、やがてニヤリと笑うと蒋介石に向かって言った。

 「あんた台湾と自衛隊の特務だろ」

 その言葉に銃をしまい頭を掻きながら蒋介石が言った。

 「分かってたあるか。自分は中華民国(台湾)の特務よ。訳あって自衛隊の特務をしているある」

 「前に資料で読んだの思い出したよ・・・臭えな、あっち行けお前」

 突然どこからか漂ってきたアンモニア臭に顔をしかめる佐藤。見ると先ほど銃を向けられたことにビビったのか、中村のズボンの股間部分が生温かいもので濡れ、湯気が立ちアンモニア臭が漂っていた。

 「お前、上もだが下もゆるんでんじゃねえのか!」

 「くそ、いつか殺してやる」

 馬鹿にされ泣きながら退去する中村。

 それから佐藤はスコルツェニーを見て言った。

 「中佐、そろそろ任務の説明を」

 「そうだな、よろしい佐藤中佐、説明するとしよう」

 スコルツェニーは任務の説明をした。

 「さて、敵の本拠地を叩きフィリピン、ひいては南方海域を開放するには敵の補給基地及び補給経路の破壊が必要不可欠であることは前にも話したと思う。現在の戦況だが、我が軍はサン・フェルナンド及びプログ山を攻略そのまま南へ進撃しピナツボ火山も攻略、オロンガボ、アンヘレス、オーロラメモリアル国立公園まで進撃し、目標地点のマニラまであと百数十キロ~数十キロというところまで迫った。だが敵は底無しの物量を持つ深海棲艦とソ連軍だ。大量の物資が後方の補給を通じて敵が占領するマニラに届けられている。敵の物量は無限、こちらの物量は有限。このままでは我が軍の勝利は望めない。そこで君たちの使命だが、マニラの更に数百キロ後方にあるタネイトに向かってほしい。敵の大規模な軍事鉄道路線及び補給基地がタネイトの敵基地に存在している。君たちの部隊にはそれらを破壊してもらいたいのだ。それともう一つ任務があるのだが・・・」

 「原爆ですか」

 佐藤の予想にスコルツェニーは頷いた。

 「そうだ。前にも言った通り敵は原爆を保有している可能性がある。何か手掛かりになりそうなものをそこで探してもらいたい。もちろんなければなかったで良いが」 

 一通りの説明を終えた後スコルツェニーは佐藤に向き直った。

 「佐藤中佐、この任務は大変危険だ。一応潜入方法や帰還方法は考えられているが、任務中の支援はあまり・・・ほとんど望めないものだ。君達だけで後方数百キロに存在する敵基地に潜入しそれらを破壊するという、正直考えた時点で頭がどうかしている作戦だ。だが勝利を確実なものにするためにもぜひ引き受けてもらいたい。そして君達ならばやれると思っている・・・どうかね」

 そう言ってスコルツェニーは佐藤を見た。

 佐藤はニヤリと笑った。

 まるで待ち望んでいたかのように。

 「お任せくださいスコルツェニー中佐。我々東亜総統特務隊の手に掛かれば不可能なことなどありませんよ。大和魂・・・いえ、ゲルマン魂を深海棲艦と露助の連中に見せてやりましょう。総統閣下の期待に必ずやお応えして見せます」

 こうして東亜総統特務隊に最初の任務が与えられたのであった。

 

 




 スコルツェニーとの会談の後暫くして

佐藤「このボタン面白れぇな。何度押しても飽きねぇぞ」ボタンポチッ
ボタン「KO☆RO☆SU」(ヒトラーの声で)
フェーゲライン「はい死んだ!!」ズダダダダダピロリーン♪
青葉「なんで青葉もおおおおお!?」ズダダダダダピロリーン♪
曙「ちょ、デイリーは二人の任務でってぎゃあああああ!?」ズダダダダダピロリーン♪
中村「佐藤二佐、自分もやりたいであります。僕にもボタンを押させてください、デイリーやらせてください」
BLAM!
BLAM!
BLAM!
佐藤「お前には早えんだよボケッ!これは俺の任務だ!」
中村「ちくしょう!!いつか殺してやる!!」

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