総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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65話 番外編8~総統閣下がお悩み相談をするようです~

 ゲルマニア鎮守府、総統執務室。

 「艦娘のお悩み相談をしようと思う」

 開口一番、ヒトラーはそんなことを言った。

 「総統閣下・・・いきなりなんですか?」

 クレープスがヒトラーに怪訝そうに聞く。

 「なに、そのままの意味だ。我々は常日頃から艦娘とともに戦っている。しかし、よくよく考えたら艦娘のことをよく分かっていない気がするし、艦娘と親睦を深め今後の士気の向上につなげようっと思ってな。提督として、何より総統として部下のことをよく知っておくのは当然のことだ。これこそまさに愛の参観、理解OK?」

 「お前がお悩み相談しても悩みが深くなるだけだと思うけどね」

 フェーゲラインが笑いながら言った。

 「KO☆RO☆SU」

 ヒトラーがそう言うと突然執務室にMP40を装備した親衛隊員がやってきた。銃口をフェーゲライン、青葉、曙に向け連射する。

 「はい死んだ!!」

 「なんで青葉もおおおおおおおお!?」

 「ちょ、デイリーは二人の任務でってぎゃあああああああ!?」

 訓練弾をまともに食らった三人はそのまま倒れピロリーン♪という謎の効果音が響いた。

 クレープスは頷いた。

 「なるほど、艦娘との親睦を深める、ですか・・・確かに部下のことをよく知っておくのは指揮官と重要ですからね」

 「それによく私はお前らや艦娘から『クソ総統』だの、『変態総統』だの、『アホルフ』だの馬鹿にされているからな。総統としての威厳、慈愛を見せこの不名誉なイメージを覆したい」

 ヒトラーの嘆き、切実な思いにヨードルが突っ込む。

 「いやアホルフ、実際事実だろそれ!いつもおっぱいぷるんぷるんとか言って艦娘にセクハラしているくせに!!」

 「黙れハゲ!!いつも那珂ちゃんとイチャイチャしているお前に言われたかねぇ!!だからそれだよ!!お前らには私に対する尊敬とか礼儀とかないのか!?」

 「ないよ!!」

 「でしょうねぇ!!」

 ヒトラーは持っていたペンを机に叩き付けた。

 「とにかく、私は艦娘とお悩み相談をすることに決めたんだ!すぐに準備しろ」

 こうしてヒトラーによる艦娘お悩み相談会が開かれることになった。

 数時間後、総統執務室前には大勢の艦娘や将校たちが並んでいた。

 執務室のテーブルに座りながらヒトラーが言った。

 「よし・・・それではお悩み相談をすることにしよう。クレープス」

 「は・・・まず最初の一人は電です。どうぞ」

 執務室のドアからおずおずと電が入ってくる。

 「あの・・・総統、いいですか?」

 「ああ、悩みがあるなら何でも相談してくれ。総統として艦娘の問題を解決するのは当然のことだからな」

 「総統、実をいうとこれは私だけじゃなくて駆逐艦娘全員が持っている悩みなのです。いつも、とくにここ最近誰かに見られている気がするのです」

 「おい、ちょっと待て、それ絶対ゲッベルスのことだろ」

 ロリコン宣伝相ゲッベルス。

 重度のロリコンである彼は最早悪い意味でこの鎮守府内で有名人であった。

 実際、彼はしばしば入渠中の駆逐艦娘を除きに行ったり盗撮したりと、その犯罪的行動には十指に余るものであった。最近では秋葉原で『国家社会主義ドイツロリコン党』なる組織を作り出したらしい。

 「はい・・・ゲッベルス大臣がいつも変な目で私たちを見つめたり中破した私たちの姿をカメラで撮ったり、お風呂を覗こうとしたり・・・大臣の奥様やお子様たちも悩んでいるようなのです」

 電の隣ではいつの間にいたのか、ゲッベルスの妻であるマグダがハンカチで目元をぬぐいながらヒトラーに訴えた。

 「総統、夫のロリコンをどうか直してください。これ以上夫の変態行動を見たくありません。子供の情操教育に悪いし、国家社会主義にふさわしくありません・・・」

 「・・・おい、モーンケ。今すぐゲッベルスを呼んで来い。この場にいないようだがこの鎮守府のどこかにいるはずだ。今すぐ連れてこい」

 ヒトラーの命令にモーンケが素早く答えた。

 「・・・総統閣下、それがここにはもういません。私がとめる暇もなく出かけて行ったからです」

 「何?」

 「あれは十数分前のことでした・・・」

 

 

 

 

 

 

 モーンケの回想

 モーンケは重巡摩耶と共にゲッベルスを呼びに行っていた。

 通信室に向かうとそこではゲッベルスがライトノベル『ブラック・ブレット』を呼んで泣いていた。

 「う、うう・・・なんて可哀そうなんだ・・・ここに登場する『呪われた子供たち』の扱いが酷過ぎる・・・あんまりだ・・・夏世ちゃん、なんで死んでしまったんだ・・・」

 「おいゲッベルス、そろそろお悩み相談会が開かれるぞ。早く来るんだ。総統閣下がお待ちだ」

 「ほら、早く準備しろよ。目赤いぞ」

 モーンケと摩耶の言葉にゲッベルスが答えた。

 「ああ、悪いが出席は取りやめだ。外出する」

 「何?」

 「今から『ブラック・ブレット』の世界に行ってくる。そして『呪われた子供たち』を残酷な死の運命から救うのだ」

 突然頭のおかしいことを言い出したゲッベルスに二人は戸惑った。

 「・・・ライトノベルのことだな。本気で言ってるのか?二次元の世界に行こうなんて?それから『ブラック・ブレット』の8巻は諦めろ、あれは作者が逃亡したに違いないんだ」

 「・・・頭大丈夫か?二次元と三次元の区別ついてるか?」

 しかしゲッベルスは毅然とした態度で答えた。

 「私は至って本気だ。・・・私は本気だ!!目の前で幼女が過酷な運命にさらされているというのにこれを助けないなどドイツ人としての、ロリコンとしての恥だ!!悪いが今回は欠席させてもらう。それから私は8巻は諦めていないぞ。もし出なかったら私が執筆する。外出させてもらうよ」

 そういうとゲッベルスは携帯を取り出してどこかへ去って行った。

 「ああ、阿良々木か?今すぐ秋葉原に来い!!八九寺も一緒にな!!党大会を開く、党員を招集するんだ!!私たちの手で幼女を救うんだ!!」

 「・・・」

 「・・・」

 モーンケは冷徹な目でヒトラーに報告した。

 「そう言って奴はどこかへ去っていきました。運が良ければ今頃警察に捕まっているかと」

 「あいつ・・・一度刑務所、いや収容所にぶち込もうかな・・・」

 その後も続々と艦娘がやってきてお悩み相談をしたが碌なものが一つもなかった。

 「秋雲だよ!!同人誌描いているんだけどさ、最近スランプ気味だから同性愛モノに挑戦してみようと思うけど総統×ゲッベルス(R18)で行こうと思うんだけれど」

 「馬鹿かお前は!?FUCK、あほかいね!!ゲシュタポを呼べ!!」

 「赤城です!総統、もっとボーキサイトの配給量を増やしてください!!っていうか資源全部よこしてください!!」

 「あほか!!お前は鎮守府を潰す気か!?」

 「足柄よ・・・いいお相手がなかなか見つかないんです、だれかいい男紹介してくれませんか?」

 「自分で探せババア」

 「龍驤や!!総統、お願いやウチのこの胸を、まな板を何とかして!!一航戦に対抗できるくらいに・・・」

 「無理だなあきらめろ」

 「日向だ。瑞雲が欲しい。瑞雲の神に会いたい。瑞雲を手に入れ、瑞雲の神を償還する方法を教えてくれ」

 「いや知らんわ!!」

 「北上様だよ。駆逐艦ってウザくない?」

 「最早相談ですらねぇ」

 訳の分からないお悩み相談が進むごとにヒトラーの精神は疲弊していった。

 「もう・・・いやだ・・・碌な相談がない・・・畜生め・・・」

 こうして、ヒトラーの提案した艦娘のお悩み相談会は碌な結果を出さずに終わった。

 「まったく・・・碌な相談が一つも来なかった・・・」

 ヒトラーはぶつぶつ文句を言いながら執務室を出ようとするとそこへゲッベルスの妻であるマグダが駆け寄ってきた。

 その眼には涙が浮かんでいる。

 「総統!!夫を助けてください!!」

 「なんだ、君か。ゲッベルスのロリコンを直したいんだろう?悪いがもうお悩み相談は嫌なんだ・・・もう疲れた・・・」

 「それが・・・夫がさっき警察に連れていかれたんです・・・秋葉原でロリコンをたたえる変態演説をやって不審者扱いされてそのまま職務質問されて警察に連行されて・・・夫を助けてください!!」

 「・・・畜生めぇ!!!」

 ヒトラーの叫びが鎮守府中に響いた。

    

  


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