総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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とある提督(プレイヤー)「俺は病気(金欠)なんだ、ここ(課金地獄)から出してくれ!」
運営「黙れ、俺もお前も艦これという名の病気だ。お前の病名は提督、そしてお前がいないと俺たちは艦これをできないんだぞ」
 
艦これも二期になりました。皆さんはこうならないように気を付けましょう。


63話 偵察~パーティーの始まり~

 一週間ほどの航海の後、300人ほどの兵士・艦娘を率いた黒騎士中隊はフィリピン、サマール島北部に到着した。サマール島が選ばれたのは反攻作戦において最初に部隊を上陸させる予定の場所だからであり、黒騎士中隊は事前の敵に対する破壊工作や斥候といった特殊任務を遂行させるために派遣させられたのだ。サマール島以南は既に深海棲艦の縄張りである。

 部隊長エルンスト・フォン・バウアーによる訓示の後、兵員には次々とStG44やMG34、パンツァーファウストといった装備が配られていった。

 「いよいよ実戦か・・・しかしこんな豆鉄砲が深海棲艦に通用するだろうか」

 フェーゲラインが支給されたStG44とパンツァーファウストを点検しながら呟いた。

 20.3cm連装砲を磨きながら青葉が言った。

 「・・・正直生身の人間が深海棲艦に真正面から立ち向かうのは無謀です。隠れながらパンツァーファウストで装甲の薄いところとか弾薬や燃料を狙ったり、艦娘用の砲弾を装填した戦車砲を使用すれば倒せれる可能性はゼロではないと思いますけど・・・艦娘は陸上にいたり艤装を外しているときは防御力が落ちたり生身の人間と変わりませんから、深海棲艦もそこを狙ってみればいいと思います。実際、陸地に上陸して艤装を外して休息していた空母ヲ級や戦艦ル級にある兵士が白兵戦を挑んで短機関銃と銃剣でミンチにしたっていう話がありますよ?たしか・・・船坂とかいう兵士でしたっけ?」

 「そりゃその船坂という兵士だけが頭おかしいんだ」

 フェーゲラインは溜息をついた。

 「結局、相手の裏をかくしかないのか・・・生き残れるかな・・・」

 「何弱気になっているんですか、この際暴れまくってやりましょうよ!斥候とかするそうですから、もしかしたら深海棲艦に取材ができるチャンスかもしれませんよ!!」

 「いいよなお前は明るくて・・・」

 フェーゲラインは青葉の無邪気な様子に苦笑いしながら周囲を見た。

 周囲の兵士や艦娘は支給された装備の整備に余念がない。

 しかし支給されている兵器はアサルトライフルや小銃、軽機関銃や短機関銃、パンツァーファウストや小口径砲と深海棲艦と戦うには頼りない物ばかりだ。上層部はこの部隊をまともに運用させるつもりがあるのだろうか?もちろん歩兵が持てる装備には限界があるし、青葉の言うとおり生身の歩兵が深海棲艦にまったく勝てない戦えないということはないが、やはり不安だ。

 同じことを考えているのはフェーゲラインだけではないらしい。

 向こうでドイツ兵と艦娘が言い争っている。確か霞とかいう艦娘だったか。傍らには前線の兵士から『火葬装置付き棺桶』と不評だったヘッツァー駆逐戦車がある。どうやら整備中だったところで言い争いになったようだ。

 「ちょっと、こんな装備だけで戦えっていうの!?こんなのただの豆鉄砲よ!!頼みの綱の戦車は狭い火葬装置付きの棺桶だし!!こんなのでまともに戦えるわけないじゃない、こんなので戦わせようなんてバカなの!?」

 12.7cm連装砲やヘッツァーを指さしながら装備の貧弱さを愚痴る霞にドイツ兵が怒鳴る。

 「黙れ!優れた戦車兵や艦娘は優れた兵器に勝るんだ!無駄口叩いてる暇があったら整備を手伝え馬鹿野郎!!それか俺のケツでもなめろ!!」

 「逆ギレするんじゃないわよ、事実じゃない!!ったく・・・どんな考えしてこんな貧弱な装備しか送ってこないのよ・・・本っ当に迷惑だわ!!」

 そう言いながら霞はレンチをドイツ兵に渡し整備を手伝うのだった。

 フェーゲラインは溜息をついた。

 あの霞とかいう艦娘の言うとおりだ。こんな貧弱な装備で戦おうなんてこの先が不安だ。しかしやるしかない。フェーゲラインは再び武器の整備を始めた。

 別の場所ではヘスや時雨達が同じく装備の整備に精を出していた。

 ヘスがパンツァーファウストを組み立てながら言った。

 「すまないなこんなことにつき合わせてしまって・・・」

 時雨が笑いながら言う。

 「いいさ、おじさんにはいろいろ世話になったし、自分で志願したんだ、後悔も恨みもしないよ」

 時雨の隣に座っていた別のドイツ兵が時雨の志願という言葉に反応した。

 「なんだお前、自分でこの懲罰部隊に志願したのか?」

 「うん、色々あってね・・・」

 ドイツ兵が苦笑しながら言う。

 「志願ならやめておけ、『英雄的に』戦死するか、耐え切れなくなって脱走しようとして敗北主義者として木に吊るされるか、さっさと名誉の負傷をして本国に送還されるのがオチだ。俺なら三つ目をお勧めするね。今のうちにちょうどいい具合に負傷した方がいいぞ、志願だから本国に送還してもらえるかもしれないからな」

 実際、この懲罰部隊には時雨のような志願者も少なからずおり、彼女ら志願者の場合は負傷すれば安全な本国へ後送される可能性があった。

 これから体験するであろう戦場の地獄を小さな駆逐艦娘が体験することを心配して忠告するドイツ兵。だが、彼は時雨もまた相当な修羅場、トラウマを乗り越えてきたことを知らない。

 「いや、四つ目の選択肢もあるよ」

 時雨が主砲を磨きながら言う。

 「敵を全滅させて仲間と一緒に生還する、さ。大丈夫、すぐにやられるほどヤワじゃないさ。むしろ僕を舐めない方がいい・・・」

 時雨はじっと、異様に澄んだ目をしながらドイツ兵を見た。子供離れしたその様子にわずかにたじろぐ。

 「・・・そうか。まぁ、志願だからな文句は言うなよ。俺の言葉は忘れない方がいい」

 「うん、古参兵の意見は尊重するよ」

 兵士や艦娘たちは来たるべき戦いに備え装備を整備するのであった。

 

 

 

 

 「バウアー大尉、見てください」

 仮設の部隊指揮所の近くでは戦車兵クルツ・ウェーバーが今回の派遣で送られてきた装備に驚いていた。

 ウェーバーが指をさす先には巨大な、重厚感あふれる重戦車ティーガーⅡの姿があった。第二次大戦中の最強の戦車の一つである。その隣にはパンター中戦車の姿もある。

 かつてのバウアーの最強のそして良き相棒達が何両も指揮所に近くに並んでいた。

 ヒトラーや上層部は貧弱な装備しか送らなかったわけではない。ちゃんとした装備も(中隊としては過剰と言える量を)送っていたのだ。

 バウアーが目を丸くする。

 「こいつはティーガーⅡじゃないか!!パンターまであるぞ。上層部の連中、貧弱な武装しか送ってこないと思っていたがちゃんと考えているじゃないか」

 「PAK(対戦車砲)やロケット砲も用意されてるみたいです。しかしこいつで深海棲艦と戦えますかね?」

 「安心しろこいつが搭載している戦車砲はただの戦車じゃない、砲弾に艦娘用の砲弾を転用したり改造したものを使っている。深海棲艦やイワンどもとまともにやりあえる。これで安心して戦争ができるな」

 「大尉、失礼します」

 部下がバウアーに声をかけた。

 「さっそく鎮守府より直々に指令が届きました。『状況が許す限り速やかに、現在位置より南20キロに存在する敵中継基地に対し偵察行動を実行せよ。可能であれば敵の補給等の活動を妨害せよ』とのことです。詳細はこちらの命令書に」

 部下がバウアーに書類を手渡す。

 「そうか、ついにパーティーを始める気になったか。こいつらとイワンどもにドイツ戦車兵魂を教育してやるいい機会だ。すぐに部隊の選抜にかかるぞ!!」

 「Ja!」

 こうして早速懲罰部隊『黒騎士中隊』は初の実戦に出撃するのであった。


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