総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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 この前久々に(約一か月ぶりに)ユーチューブで鳳仙(球磨嫁閣下)さんの閣下これくしょんの動画見ようとして初めて、2月の上旬にお亡くなりになられたことを知った。とても面白くてこの小説の参考にもさせてもらっていたのに・・・今更ながらご冥福をお祈りします。




57話 南方へ~秘密の作戦会議~

 東京、市ヶ谷にある防衛省。

 そのどこかにある秘密の会議室で、日本の運命を決める会議が行われていた。

 「・・・いよいよやるのか」

 巨大な円形のテーブルに備え付けられた椅子の一つに座る小柄な男が書類を見ながらつぶやいた。

 男の見つめる書類の表紙には「南方海域及び諸島の奪還作戦について」と書いてある。

 現在日本に関して言えば日本やアジア諸国は南シナ海やシンガポール海峡を奪還、シーレーンを確保し資源を輸入に頼る日本は何とか生き延びてきた。

 しかしフィリピン南部、インドネシア、パプアニューギニアは未だ深海棲艦側が掌握しており、日本が確保したシーレーンや資源がいつ奪われるか分からない。

 またこれらの地域には姫級、鬼級の深海棲艦が無数に跋扈し太平洋における深海棲艦の活動の拠点と考えられてきた。

 南方の海域を叩くことは日本の安全を確実なものにかつ主力を叩き太平洋の自由を確保することでもある。

 そのための大規模反攻作戦に関する概要がそこに書かれていた。

 「勝算はあるのですか?」

 「おいおい、初めから負けるつもりで戦うやつはいないぜ。あの戦争だって例外じゃない。みんな勝つつもりでいた。計画はろくなもんじゃなかったが・・・」

 隣に座る部下の問いに小柄な男は笑いながら答えた。

 彼の名前は山本五十六。

 大東亜戦争を知る者にとって知らぬ者はいない存在であり、海軍大将、名将である。

 「そして我々は大敗し祖国と国民に深い傷を負わせた・・・一度大敗したからには同じ轍を踏むわけにはいかん」

 作戦計画書を見つめる山本に、向かい側の席に座る丸メガネの男、東条英機が言った。

 「こうして償う機会を与えられた以上、我々は死力を尽くして戦わねばならん。そうだろう?」

 「・・・そうだな」

 東条の言葉に頷く山本。

 本来ならあのブーゲンビルの上空で生涯を終えたはずの自分がこうして蘇ったのも何かの縁だろう。ならばその使命に応えるのみ。

 東条が同じく会議に出席していた丸メガネの男に言った。

 「そもそもこの作戦案を発案したのは山本大将と、辻大佐だったな。辻大佐、本作戦の明確な目的と概要を説明してくれ」

 東条に作戦の開設を求められた男、辻政信は頷きながら立ち上がった。

 「それでは本作戦について説明させていただきます。そもそも本作戦の目的は南方海域及び諸島の奪還、敵主力の殲滅、そしてそれによるシーレーン、資源の確保と太平洋の安定確保にあります」

 会議室の壁にプロジェクターによって太平洋地域の地図が映される。

 「作戦は三段階に分けられます。まず第一段階としてフィリピンミンダナオ島を強襲、奪還します。同時にインドネシアスマトラ島から東方に向けて進撃を開始します」

 辻の持つレーザーポインターがそれぞれの島を指す。

 「第二段階はジャワ海、パンダ海を奪還。シーレーンと石油資源を確保。そして最も重要なのが第三段階です。深海棲艦主力はニューギニア島やその近くの海域・諸島にその拠点を置いているものと考えられます。そこを全力をもって叩き、海域と諸島を完全に奪還します。なお、今回の作戦ではオーストラリア方面からオーストラリア軍および米軍が進撃を支援します」

 東条はうなずいた。

 「敵に二正面作戦を強いるわけだな。問題は補給だな・・・我が軍の弾薬や燃料、食料の備蓄、および補給はどうなっている?」

 「そうですな・・・今のところ、決して少なくない、作戦には十分と思われる物資を備蓄していますし、一応シンガポール海峡のシーレーンも確保しています。進撃先は資源の宝庫ですし補給や現地調達する分には困らぬと思いますが・・・」

 「補給なら俺に任せろ!!」

 「誰だ!?」

 突然会議室に響いたこの場にいないはずの人間の声に東条が大声を出した。

 完全密室、閉ざされているはずの秘密の会議室にいったい誰が入ってきたのかと室内は呆然となる。

 山本は声のした入り口を見た。

 会議室の入り口に立っていた声の主は日本陸軍最大の汚点、インパール作戦で(おもに補給などで)盛大にやらかした男、牟田口廉也の姿がった。

 「物資の補給なら、俺のジンギスカン作戦で――」

 「憲兵隊!この男をすぐに連れ出せ!!生死は問わん!!」

 「はっ!!」

 東条がそばにいた憲兵隊に牟田口を拘束するよう怒鳴る。

 憲兵隊が一斉に牟田口の身柄を取り押さえその場から連れ出す。

 「なっ! 何をするだァーッ ゆるさんッ!」

 牟田口はなんとか拘束を逃れようと暴れたが多勢に無勢、すぐに会議室から連れ出された。

 「・・・ふう。邪魔者はこれでいなくなったな」

 東条がため息をつく。

 山本もうなずく。

 「まったく。彼に任せては勝てる戦も勝てなくなります」

 (・・・あいつどうやって会議室に入ったんだ?)

 辻がそうもっともな疑問を思う中、東条は会議を続けることを宣言した。

 「・・・補給や物資の問題に関しては特に憂えることはなさそうだな。しかし油断は禁物だ。あの戦争で我々は後方を軽視して盛大にやらかしたからな・・・しっかりと不測の事態に備えるよう指示しよう。して・・・作戦を実行する鎮守府は?」

 東条の問いに辻が答える。

 「・・・私が一つ作戦の遂行にふさわしい鎮守府を知っています」

 辻は笑いながら言った。

 「戦力人材ともに豊富・・・やらせるなら・・・あそこがいいでしょう」

 山本がわずかに表情を曇らせる。

 「・・・あの鎮守府か。しかし・・・あの男は信用できるのか?」

 「大丈夫です・・・今は立場は我々が上ですし・・・信用できるでしょうな」

 辻はそう言ってにやりと笑った。

 「ヒトラー総統なら間違いなくやるでしょう」

 こうして、一大反攻作戦「バルバロッサ」の決行が決定された。


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