フェーゲライン「はい死んだ!!」ズダダダダダダダピロリーン♪
青葉「なんで青葉もおおおお!?」ズダダダダダダダピロリーン♪
曙「ちょ、デイリーは二人の任務で、ってぎゃああああ!?」ズダダダダピロリーン♪
デイリー達成☆
硫黄島。
かつて深海棲艦によって陥落させられ、数か月前ヒトラー率いる艦娘達によって奪還された島。そこには現在、対深海棲艦戦闘の拠点とすべくゲルマニア鎮守府の出張基地が展開されていた。
表向きはゲルマニア鎮守府やその他の艦娘・部隊の出張部隊が展開する基地である。
しかし、ヒトラーをはじめとするゲルマニア鎮守府の面々は密かに硫黄島に大改修を加え、地下に秘密研究施設を作っていた・・・
「はぁ・・・あ~~暑苦しいなぁ・・・いくらドイツと総統閣下のためとはいえ、こんなジメジメして薄暗いところに長いこといるのは応えるな・・・」
地下施設の廊下を一人の大柄な男が歩いていた。
親衛隊の制服を着用し、襟元の階級章からは彼が大佐であることが分かる。
しかし何よりも特徴的なのは右目に装着された奇妙な片メガネのような物体に手袋と制服の袖の間からちらちらと見える金属製の腕であろう。
男が廊下を歩いていると、向こうから部下が歩いてきて、男にナチス式敬礼をした。
「ハイル・ヒトラー!シュトロハイム大佐、体の調子はどうですか?」
「ハイル・ヒトラー!調子なら今日もすこぶる快調だ!!わがナチの科学力は世界一だからな!」
部下の問いに男は笑いながら金属製の腕を振り回した。
男の名はルドル・フォン・シュトロハイム。ナチス親衛隊の大佐にしてナチスがその科学力を結集して作り上げた最強のサイボーグ。
スターリングラードの戦いで壮絶な戦死を迎えたはずの彼だったが、やはりというべきかこの男もまた現世に蘇りゲルマニア鎮守府の一員として戦っていた。
「それよりも大佐、ご報告したいことが・・・」
「なんだ?」
「総統がメキシコに派遣していた調査隊がアステカ文明の遺跡で石仮面を発見したそうです」
「何!?」
石仮面が発見された、という報告に驚くシュトロハイム。
石仮面――それは装着したものを吸血鬼化させる恐るべき仮面。
かつて究極生物になることを夢見た一人の男が作り上げた呪われた道具。
その男との激闘の末、石仮面は全て処分されたかに思われたが、どうやらまだいくつか残されたいたらしい。
「ふむ・・・メキシコあたりを探せばまだ残っているだろうとは思っていたが・・・思ったよりも早く見つかったな・・・して今どこに?」
「すでにこの研究施設に持ち込まれています。現在、捕虜にした空母ヲ級に対する使用実験を準備。大佐のゴーサインさえ出ればいつでも実行できます」
「そうか・・・では、早速本日中に実験を開始するのだ!」
「はっ!!」
数時間後、厳重にロックされている実験室には物々しい雰囲気が漂っていた。
白衣を着た研究員が機材やコンピュータの間を行き来し、緊急時に備え重武装を施した武装親衛隊員達が緊張の面持ちで待機している。
実験室の中央には防弾ガラスで覆われ、重装甲が施された巨大な穴があった。
さらによく観察すれば穴の底にはしっかりと拘束された空母ヲ級の姿がある。大破し海上に漂っていたところを親衛隊が密かに捕え捕虜にした貴重なサンプルだ。
その様子を震えながら眺める一人の艦娘がいた。
「・・・」
軽巡洋艦娘、夕張。鎮守府の地下施設の実態を不幸にも知ってしまい彼女は一時拘束されていた。秘密を守るため、解体するなり、轟沈させるなりして消しても良かったのだが下手にやると上層部にばれてしまうし、貴重な艦娘である。彼女は密かに監視付きでこの硫黄島に送られていた。
夕張はこれから行われるであろうおぞましい実験に恐怖と僅かな怒りを覚えていた。
敵とはいえ、戦争にもルールはあるであろう。相手は人類の敵だ。しかしだからといって相手に残虐な行いを加えて自分も外道に堕ちる理由はない。
しかしあの鎮守府で見た凄惨な光景は筆舌に尽くしがたいものだった。
これからいったいどのような惨劇が繰り広げられるのか・・・
そんな夕張に、いつの間にかいたのかシュトロハイムが話しかける。
「夕張ちゃあ~~ん・・・何をそんなにおびえている?少し怯え方が異常じゃぁないかぁ~?」
「大佐・・・大佐は自分が何をやっているか分かっているんですか?いくらなんでもこんなの・・・」
「夕張よ、お前の気持ちは確かによく分かる・・・いま我々が行おうとしていることは決して美しい行為ではない。だが勝利のため、未来のためやむを得ないことなのだ。これは総統閣下の命令だ。そして総統が誤ったことは一度としてない・・・」
「ふざけないでっ!!あなたに軍人としての、人間としての誇りはないの!?」
シュトロハイムは夕張の方に鋼鉄製の義手を乗せ、もう片手でガラスと装甲で覆われた実験用の巨大な穴を指差した。
「なぁ、聞け・・・いま我々は石仮面を使って深海棲艦を吸血鬼化させる実験を行おうとしているが、何も心配することはない。防弾ガラスはティーゲルのアハトアハト(88ミリ砲)の弾丸すら余裕で耐えるし、装甲にいたっては厚さ60センチ、大和型の46センチ砲の砲弾ですら耐えられる。さらに!壁の側面には吸血鬼の弱点である紫外線照射装置が無数に取り付けられ、緊急時には吸血鬼化した個体を徹底して焼き殺すことができる!!壁には機関砲、火炎放射器が取り付けられ、酸素に関してもボンベを通して供給してあるから、外部とはほとんど完全にシャットアウトさせられている・・・サンタナの時の二の舞にはならん・・・」
シュトロハイムはそこまで言ってにやりと笑った
「動物園の檻の中の灰色熊(グリズリー)を怖がる子供がおるか?いなァァァ~~いッ!たとえやつが狂暴化してもあんな化け物、イチコロで倒せる!我がドイツの科学力は世界一ィィィ!できんことはないイイィーッ!」
シュトロハイムは夕張の方から手を放すと目の前の実験用のサンプルに向き直った。
「もうそろそろ時間か・・・事前に確認しておこう。紫外線照射装置は?」
シュトロハイムの問いに研究員たちが答える。
「電力、装置ともに異常なし。正常に作動します」
「緊急時の防衛用設備は?」
「これも異常なし。正常に作動します」
「酸素供給管と外部は完全にシャットアウトされているか?」
「現在酸素ボンベによって実験管内部に空気を供給中。外部とは完全にシャットアウトされており、100パーセントの安全を確認します」
「よし、それでは・・・実験を許可するっ!!」
石仮面による深海棲艦の吸血鬼化という狂気の実験が行われようとしていた。