総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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50話 デイリー任務~作戦会議~

 日の出前のまだ少し暗い朝、ゲルマニア鎮守府の士官用寝室で親衛隊中将フェーゲラインと重巡青葉の二人が同じベッドの中で添い寝していた。二人の両隣りには曙と霞まで一緒になって眠っていた。

 この二人(と曙と霞)はこの鎮守府において最早彼氏彼女、リア充と言って差し支えない関係になっていたのであった。

 「ううん、そこだ・・・いいぞ・・・」

 フェーゲラインがそんな寝言を言っていると突然、激しい音とともに寝室のドアが開けられた。

 びっくりしてフェーゲラインや青葉が目をこすりながら体を起こすと同時に、ドアから続々と武装親衛隊員が入ってきた。

 上官らしき男がフェーゲラインに対し言った。

 「フェーゲライン、デイリー任務の時間だ」

 「・・・え?」

 「みんなの目覚ましになってもらう」

 「嫌だよ、もう少し寝かせてくれ・・・」

 フェーゲラインは彼の言葉を無視して青葉と一緒にまたベッドに潜り込んだ。

 上官が顎で部下たちに指図する。

 部下たちは頷くとベッドに近づき、フェーゲライン達を力ずくで拘束しようとした。

 「うわあ、何をする!!もう少し寝たいのに!!青葉ちゃんをぎゅってしたいのに!新年初の投稿がデイリー任務かよ!!やめてくれ、あれ痛いんだからさ!!たまにはゲッベルスとかでやれよ!!」

 「黙れリア充!お前ら見るだけで虫唾が走るんだよ!!」

 彼女いない歴=年齢の悲しき孤独な親衛隊員達がフェーゲラインを罵倒する。

 「なんで青葉も捕まるんですかぁ!?」

 「ちょっと何をするのよ!」

 「離せこのクズ!死ね!」

 青葉や曙、霞も為す術なく拘束され、フェーゲラインたちは鎮守府の中庭へと連れて行かれた。

 

 中庭にはすでに大勢の兵士たちや将校、そしてヒトラーが待機していた。

 「総統閣下、連れてきましたあとは閣下の指示を待つのみです」

 部下の言葉にヒトラーが頷く。

 「うむ。デイリー任務は重要だし、何よりリア充には制裁を与えねばな」

 フェーゲライン達を取り囲むようにしていた兵士や将校(非リア充、オタク、変態)達が次々と罵倒の声を上げる。

 「このリア充め、添い寝とはどういうことだ!!」

 「幼女にも手を出すなんて、バッキャロー!!」

 「俺たち非リア充の身にもなって考えろ!一人で三股するとか!!ダサいし!!」

 「男の敵め!男の敵め!お前を処刑できると思うと!スカッとするぜーッ!」

 「よろしいならば戦争だ」

 罵詈雑言の中、フェーゲラインはついに諦めるように首を振った。

 仕方ない、これも運命だ。これがデイリー任務の宿命・・・

 ヒトラーの命令が響いた。

 「KO☆RO☆SU」

 次の瞬間、武装親衛隊員たちの構えたMP40がフェーゲライン達に向かって連射された。

 「はい死んだ!!」

 「なんで青葉もおおおおおおおおお!?」

 「ちょ、デイリーは二人の任務で、ってぎゃああああああああ!?」

 「ちょ、このクズ何すんのよ、ってぎゃあああああああああ!?」

 訓練弾をもろに食らいフェーゲライン、青葉、曙、霞は地面にどさりと倒れた。同時に、ピロリーン♪という謎の音が中庭に響いた。

 「女三人と添い寝するようなリア充には死を」

 ヒトラーはそう呟いて解散を命じた。

 

 

 

 ゲルマニア鎮守府、総統執務室。

 いつものようにヒトラーとその取り巻き達が次の作戦について話し合っていた。

 「・・・南方の深海棲艦の活動は現在沈静化しており・・・」

 「いま最も警戒すべきは・・・北方海域・・・」

 「もっと資源が必要・・・弾薬と燃料の確保が急務、ボーキサイトは幾分か余裕が・・・」

 側近達の話を一通り聞いた後で、ヒトラー椅子に座りなおすと彼らを見た。

 「諸君、君たちも話は聞いているかもしれないが近々大本営は、南方の海域の奪取と支配のため、一台攻勢計画を練っているという。現在我が鎮守府は最も戦力が多く、作戦の中核を担わされる可能性は高いだろう」

 現在、東京の防衛省・・・大本営では上層部によって南方海域への一大攻勢計画が立てられていた。当然、その情報はヒトラー達のもとにも届いていた。

 ヒトラーの言葉にクレープスが頷いた。

 「確かに閣下の言う通りです。西方海域を制圧し、日本のシーレーン、生命線といえる輸送航路を確保したとはいえ、まだそれだけでは十分ではありません。南方海域では深海棲艦の主力が跋扈し、文字通り人一人っ子近づけん状況です。そもそも主力の数もほかの海域と比べ桁違い。現在は沈静化しているとはいえ、何時こちらに大攻勢を仕掛けてくるか・・・新たな資源確保のため、そして何よりも今後の憂いをを絶ち深海棲艦に対する優位を確固たるものにするためにも南方への攻勢は重要でしょう」

 確かに、南方海域はそれまでとは桁違いの数の深海棲艦が跋扈しており、掃討もままならない状態だった。これまでとは違う桁違いの物量、質ということもあり、今深海棲艦に対しどちらかといえば優位といえる状態の人類側にとってはその脅威は相当な頭痛の種であり、不安材料だった。

 逆に言えば、この深海棲艦の巣窟ともいえる南方海域を解放し支配すれば、人類側の勝利への道は決定的なものになるといっても過言ではない。

 防衛省やヒトラー達が南方への進撃を考えるのは当然であった。

 しかしもう一つ不安材料がある。

 ヘルムート・ヴァイトリング大将が地図を指さしながら総統に言った。

 「しかし総統閣下、北方海域では深海棲艦の活動が活発化しつつあり、姫級が活動しているのではないかとの情報も非常に不確実ながら報告されています。南方に戦力を集中しては逆に北方や東方の海域から叩かれる恐れが・・・」

 要するに彼は南方を警戒するあまり、北方ががら空きになったり、二正面作戦になることを恐れているのだ。

 ブルクドルフが反論する。

 「確かに北方海域や東方からの攻撃には警戒すべきだ。しかし現在の、一番の懸案は南方の深海棲艦だろう?今までと違う物量、質を誇る一番の脅威だ。今叩くべきはここだろう」

 周りの将軍たちもそれぞれの意見を述べたり議論を始めたりした。

 ヒトラーの周囲がざわつく。

 ヒトラーはしばらくして将軍たちの議論を手で制すと結論を述べた。

 「今ヴァイトリングが言ったように」

 ヒトラーは将軍たちを見る。

 「北方海域も見過ごせない。しかし今一番の脅威にして敵の中核は南方に存在する。多方面に警戒しつつ、南方海域の敵を撃滅し、これを我が物にするべし。これが今我々がすべきことであろう。大本営から指令が来るのもそう遠くはあるまい。南方制圧に向けた作戦計画を練り上げること。そして、来るべき作戦に備え、艦娘の練度をさらに上げ装備、資源を充実させること。すぐに取り掛かれ、計画を練り上げるぞ、作戦から艦娘の訓練に至るまで」

 ヒトラーの命令に将軍たちは答えた。

 「Heil Hitler」

 

 

 

 会議の後、地下の資料室で地図や資料を広げなら、長身の男が思考を繰り広げていた。男はドイツ陸軍の将校の制服に身を固めじっと地図を見つめていた。襟の階級章には元帥であることを表す柏葉の紋章が金色に輝いている。

 ドイツ陸軍元帥、エーリッヒ・フォン・マンシュタインはヒトラーの命に従い、南方の制圧に向けた作戦計画を一人練っていた。

 「南方海域の奪取、か・・・この敵の桁違いの戦力・・・独ソ戦を思い出すな・・・」

 電灯に照らされた顔が僅かに動いた。

 何しろ今までとは桁違いの物量の敵を相手にするのだ。ドイツ軍最高の頭脳をもってしてもすぐに有効な作戦を練るのは難しい。

 マンシュタインにとって、圧倒的物量を誇るソ連との戦いを思い起こさせた。

 「・・・あの時の失敗を繰り返さぬようにしなければな・・・」

 マンシュタインはまた思考を再開した。来るべき勝利を確実なものにするために。

 傍らのヒトラーから渡された作戦計画書には「バルバロッサ作戦」と書かれていた。


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