総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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5話 忠実な側近~またまた復活~

 ドイツ第三帝国宣伝相、ヨーゼフ・ゲッベルスが目を覚ました時、最初に見えたのは木でできた天井だった。

 「ここは・・・」

 自分はベッドにいるようだった。

 ゲッベルスは辺りを見回して、驚愕した。この世にもういるはずのない人間がいたからだ。

 「ゲッベルス君・・・」

 その人間は妻のエヴァとともに自殺したはずのアドルフ・ヒトラーその人だった。

 そして、ゲッベルスは今までの記憶を思い出した。

 そうだ。 

 忘れもしない1945年の4月30日、総統閣下はエヴァとともに自殺し火葬された。

 そして、それから数日後家族とともに後を追うようにして自分も自殺したはずだが・・・。

 ゲッベルスはヒトラーのとなりに見知らぬ少女が二人いることに気付いた。

 どちらもセーラー服を身に着けており、一人は腰まで伸びた黒い髪に眼鏡、もう一人は腰まで伸ばした銀髪に前髪をまっすぐ切りそろえた少女だった。

 「私があんたをわざわざここまで運んできたのよ。感謝しなさい」

 銀髪の少女が言った。

 「あの、総統この方は・・・」

 「彼はヨーゼフ・ゲッベルス。私が信頼を置ける人物だ。ゲッベルス君、紹介しようこの二人は大淀に叢雲だ。大淀君、少し頼みがある。しばらく二人きりにさせてくれんかね。話がしたい」

 「はい」

 二人の少女は部屋を出て行った。

 ゲッベルスはヒトラーの顔を見て、「総統閣下、これはどういうことですか!?あなたはエヴァ様とともに自殺し、私も自決したはずですが・・・」

 ヒトラーは頷いた。

 「君の疑問はもっともだ。1945年4月30日、私はエヴァとともに自殺した。そのはずだったのが、神は私が死ぬのを許さなかったようでね・・・自殺の記憶もないから本当に死んだのかわからない」

 ゲッベルスはヒトラーの顔をまじまじと見つめた。

 「本当に閣下なのですか?」

 「ならばいくつか質問してみたまえ。君と私しか知りえない質問を」

 ゲッベルスはヒトラーに彼自身しか知りえないこと(総統地下壕での出来事など)を質問したが、どれも間違いはなかった。

 やはり彼は本物のヒトラーだ。そして自分も生きている・・・

 「何があったのか、これはどういうことなのか一から説明したほうがよかろう」

 そういってヒトラーは彼に今までのこと、すべてを話し始めた。

 ドイツが敗北し東西に分断されたこと。

 ここが2016年であること、つまり自分はタイムスリップしたこと。

 深海凄艦との闘い、艦娘の存在--

 どれもがゲッベルスを驚愕させるには充分であった。

 「ゲッベルス君、これは運命だ」

 ヒトラーは部屋の窓から外の景色を見た。青い空に砂浜。平和な光景だ。

 「本来なら起こりえないことが起こった。神の運命とした思えん。私は、我々はもう一度戦わねばならんのだ。闘争は存在するものすべてに与えられた義務だからだ」

 そういい彼はゲッベルスの顔を見た。

 「私一人だけだと思っていたところへ君が来た。これもまた運命」

 ゲッベルスもまたじっと彼の言葉を聞いていた。

 「もう一度ともに戦ってくれないだろうか?」

 こんなことはふつう起こりえないことだ。

 しかし事実起こった。これを運命といわずして何と言おう。

 そして自分が忠誠を誓った人物は誰だろうか。どこまでもついてゆくと誓ったのはどこの誰だ?

 自分、ヨーゼフ・ゲッベルスではないか!

 ならば言うべき答えは一つ。

 

 「Sicher Mein Führer(もちろんです、我が総統)」

 

 ヒトラーはゲッベルスの手をぐっと握った。

 ここでゲッベルスはあることを思い出した。

 「総統、私がここに来たということは家族も流れ着いてきたのではないですか?」

 「・・・残念ながら浜に流れ着いていたのは君だけだった」

 ゲッベルスは押し黙った。ヒトラーはわずかに目をそむけた。

 彼は自殺の際、子供たちも道連れにした。それはドイツ第三帝国が敗北した世界で生きられるわけがないと思っていたし、赤軍の恐ろしさも考えられると、自決が賢明だと思っていた。しかし、今こうしてみると救えなかったものだろうか、と思えてきた。

 「ゲッベルス君、君の忠誠心はうれしかったが、同時に総統として君の家族を救えなかったこと・・・特に子供のことに関しては申し訳なく思っている。だが、希望を捨ててはならない。君がここに来たのだから、家族もまたここにいずれ来るだろう」

 ゲッベルスは頷いた。

 いずれにせよ、この鎮守府に新たに仲間ができたのだった。

 

 数日後、ヒトラーは工廠の艦娘の建造装置の前にいた。

 資材を資源を投入して妖精たちがせわしなく動く。

 そして煙が、もわっとたちこめてそこから一人の少女が現れた。

 

 「よ!アタシ、摩耶ってんだ。よろしくな」

 首のあたりで切った髪にセーラー服の美少女。

 ヒトラーには男勝りの性格が見て取れた。

 「総統!我が鎮守府初の重巡です!」

 大淀は笑顔でそう言った。

 だがヒトラーはそんな言葉聞いていなかった。

 ミニスカートに美脚、そしてなによりセーラー服の襟からちらちら見える豊かな胸部装甲と谷間。

 「すばらしい・・・」

 「?」

 「まさか早速出会うことができるとは!目に刺さるような!おっぱいぷるーんぷるん!!」

 「それか!?最初に言うことがそれか!?」

 「しまった!思わず口走ってしまった・・・って、ちょま、待っててば!!」

 ヒトラーは摩耶との初対面で早速殴られた。あんなこと言ったら当然である。

 

 それから数日後。四月もそろそろ終わるころ。

 大淀は事務室で仕事をしていた。

 そこへゲッベルスが入ってきた。

 「あ、ゲッ「ペ」ルスさん、何か御用ですか?」

 「それだ。それに関して話に来たのだ」

 「?」

 大淀の頭の上にはてなマークが生まれた。

 「君、私の名前は?」

 「ヨーゼフ・ゲッ「ぺ」ルス」

 「・・・ヨーゼフ・ゲッ「ベ」ルスだ。・・・ここに来てからずっとそうだ。ペ、ではなくベなのに皆ゲッペルスと呼ぶ・・・第三帝国時代もそうだった。宣伝相なのに皆ゲッペルスとよび、ちゃんとゲッベルスと呼んでくれたのは親と総統だけだった・・・ひどいのになるとゴエッベルスと呼ぶやつも・・・」

 そういう彼の目は涙ぐんでいた。

 彼女はなんか聞いてはいけない黒歴史を聞いたような気がした。

 「私が総統についていくと決めたのも、親以外で初めて正しい名前で呼んでくれたのが総統だったからだ・・・」

 「・・・」

 「ぐすっ」

 どうでもいいことのはずなのになんか重い雰囲気になっていた。

 

 その時、鎮守府の玄関先には一人の少女がいた。

 セーラー服にキュロット、髪を後ろで結んだポニーテル。

 手帳やマイクの入った鞄を肩にかけながら少女はにっと笑った。

 彼女はこの鎮守府にはある変わり者の提督がいると噂で聞いていた。

 本名を名乗らずアドルフ・ヒトラーを名乗っているのだと。自らを総統と呼ばせていると。(実際はそれが本名で本物なのだが)

 「さて、どんな人なんでしょうねぇ・・・楽しみです 」 

 鎮守府に新たな波乱が起きそうだ。 

 




 最後の話、ゲッベルスが総統に忠誠を誓った理由等の話はもちろん冗談です。実際は彼はちゃんとゲッ「ベ」ルスと呼ばれていた・・・と思います。
 間違ってもゴエッベルスでもなく、ゲッ「ペ」ルスでもなくゲッ「ベ」ルスです。テストに出るかもしれません。
 最後に二つ。
 鎮守府の名前を募集しております。私の考えとしては鎮守府の名前にはドイツ語で狼の砦、狼の巣を意味するヴォルフスシャンツェがいいのではと持っておりますが、皆さんの意見もお聞きしたいと持っております。
 もう一つは大方のストーリーは決まっていますが、こんなネタを扱ってほしい、こんなアイデアがあるという方は遠慮なくコメントしてください。
 読んでくれてありがとうございます。

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