ドイツ第三帝国海軍の空母グラーフ・ツェッペリンは亜宇酒美津鎮守府のバルコニーに立ちながら海を眺めていた。
思い出すのは第三帝国時代の記憶ばかりだ。
祖国の工廠での建造と中断、再開、ヒトラーによる建造中止命令。
竣工することなく終戦間際の混乱の中自沈し、その後ソ連軍によって引き上げられたものの、結局標的艦としてすぐに処分された。
何のために生まれたのか考える暇もないまま、沈みもう二度と日の目を見ることはあるまいと思っていた。
しかし、世の中何があるか分からない。気づけば自分はこうしてこの世に生き返っている。人間の少女として。
気づけばドイツの寂れた港町の工廠で人間として覚醒し、何が起きたかも分からず行く所もなく彷徨っていたところを、親衛隊長官ハインリヒ・ヒムラーの名を名乗る人物に出会い、そのまま日本に連れて行かれた。
鎮守府の執務室で手続きをしながら、ヒムラーは言った。
『君と私は一緒だ。行く所もない、目的もない。だがやるべきことはある。私と共に戦わないかね?』
あれから一か月ほど経った。
いったい自分はここで何をしろというのか?
竣工することなく自沈するという非常に短い生涯を送った自分にとってそれが疑問だった。まだ答えは見つかっていない。
いつか答えは見つかるのだろうか・・・
その思っていたところに、誰かがグラーフの肩を叩いた。
「グラーフ、長官がお呼びだわ。私たちに会わせたい人がいるみたい」
「・・・ん、ああ、ビスマルクか。すまない、考え事をしていたんだ」
目の前にいる金髪のロングストレートに碧眼の少女は同じく第三帝国海軍の戦艦であったビスマルクだった。彼女も蘇って彷徨っていたところをゲーリングと出会いここに来たのであった。
「会わせたい人というのは?」
「会議室に」
「分かった」
二人はそのまま会議室へ向かっていった。
会議室ではヒムラーとヘスが話をしていた。
「・・・ドイツの艦娘を2人も。いったいどうやって手に入れたんだ?」
「なに、少し状況把握と観光のためにドイツに戻っていたらな、現地にドイツ出身の艦娘がいるといううわさを聞きつけてな。少し興味が湧いてゲーリングと一緒に探していたら寂れた港町で彷徨っていたところ見つけて保護した。それで、日本まで連れてきたというわけだ」
「・・・どうやって連れてきたんだ?パスポートはあったのか?お前と彼女達の分の」
「私の分に関して言えば、あったよ。そういうわけかこの世界に覚醒した時点で私の分の身分証明書一式が揃っていた。だが彼女たちの分は当然なかったからね、少々憚られたが不正な手段を使わせてもらった」
「・・・そうか・・・」
「・・・まあ、今は彼女たちの分の身分証明書一式がきちんと揃っているがね・・・おっと、どうやら御嬢さんがた来たようだ」
会議室のドアのコンコンというノック音にヒムラーは反応し、ドアへ向かっていった。
「やあ、グラーフ、ビスマルク、今日は君らに紹介したい人がいるのだ」
ドアが開いた瞬間、現れたのは二人の美少女だった。
一人は薄い金髪にグレーの瞳、真っ白い肌、もう一人は金髪碧眼、街で会えば、十人中十人の男が振り返るだろう。
どうやら、艦娘というのは揃いも揃って皆美少女らしい。
少々緊張しながらもヘスは二人に握手した。
「どうも、国家社会主義ドイツ労働者党副総統を務めていましたルドルフ・ヘスです。ここで働くことになった。今後ともよろしく」
二人の目が一瞬ヘスをじっと見つめた。どうやらまた一人NSDAPの関係者が来たことに驚いたらしい。
しかしすぐに相手も挨拶を返す。
「・・・Guten Morgen.私が航空母艦グラーフ・ツェッペリンだ。貴方もここに着任することになったのか?そうか・・・それではこちら今後ともよろしく」
「Guten Tag.私はビスマルク型戦艦のネームシップ、ビスマルク。 よおく覚えておくのよ」
「さて、これで我が鎮守府のメンバーは全員そろったわけだ」
ヒムラーが会議室にいるメンバーを見渡しながら言った。
「全員がそろったところで早速、我々の今後の方針を決めたいと思うのだが――」
ヒムラーがそう言いかけた時、異変が起きた。
突然、けたたましい音を立てて会議室の窓ガラスが割れ、ほぼ同時に手のひらほどの筒状の物体が数個、投げ込まれた。
「なん――」
何だ、誰かが言いかける前に、その物体はシュー!!と勢いよく白い煙を噴出し会議室にあっという間に充満していった。
「ガスだ、逃げろ!!」
ヘスは叫び、会議室のドアへ走り戸を開けようとしたが、開かなかった。まるで、外からものすごい力で塞がれているようだった。そうしている間にもガスは充満し視界を遮っていく。
「・・・くそ・・・何が・・・」
だんだん、意識が朦朧とし体から力が抜けていく。ヘスはそのまま床に倒れ伏した。
割られた窓のほうから、悲鳴や怒号、「何だお前たちは、何を・・・」というヒムラーの声が聞こえた気がしたが確認する気力もなく、そのままヘスの意識は闇に落ちた。
「まったく、これはすごいな。一瞬で効いたぞこのガス弾。おかげで思ったより簡単に作戦が終わった」
数分後、窓の外では迷彩服を着た武装親衛隊員達が投げ込んだガス手榴弾の威力に感嘆していた。彼らの目の前にはヒムラーやグラーフをはじめ、突然の襲撃に眠らされた亜宇酒美津鎮守府の面々が横たわっていた。皆、ぐうぐうと眠っている。
「ええ、一瞬で全員眠ってくれました。まったく、大博士(グランドプロフェッツォル)も便利なものを作ってくれたものだ」
彼らはゲルマニア鎮守府の提督であり、総統であるヒトラーの命を受け、グラーフらドイツ艦娘を拉致するためこの鎮守府を襲撃したのだった。そして、作戦は大成功である。
「大尉、これで全員です、あとはスコルツェニー中佐と合流するだけです」
大尉、と呼ばれた男――規格帽に軍用コートを着込み、赤い目と腰につけた異常なまでに長銃身のモーゼルが特徴的な男――は頷き、手で早く彼らをトラックに積み込め、と仕草した。
「よし、起こすなよ、ゆっくり丁寧に確実に・・・」
武装親衛隊吸血鬼化擲装甲弾兵戦闘団『最後の大隊』の隊員たちはグラーフたちをトラックに積み込み、自らも急いで私服に着替えトラックに乗ると、そのままどこかへと去って行った。
あとには、無人の鎮守府だけが残された。
ヒトラー「KO☆RO☆SU」
フェーゲライン「はい死んだ!!」ズダダダダダダダピロリーン♪
青葉「何で青葉もおおおおおおお!?」ズダダダダダダダピロリーン♪
曙「ちょ、デイリーは二人の任務でってぎゃああ!?」ズダダダダダダダピロリーン♪
ヨードル「・・・三人は今度は何をやらかしたんです、総統?」
ヒトラー「いや・・・前回デイリー任務を迂闊にも忘れてしまったからな。今回はあとがきで確実にやっておこうと思ったのだ。ところでだ、諸君、そろそろグデーリアンやロンメルやマンシュタインの活躍を見たくはないかね?」
クレープス「そういや、ドイツ軍のssなのにまだ有名な将軍が活躍していませんね」
ヒトラー「なんでも作者が番外編で彼らを活躍させる予定らしい。しかも・・・」
クレープス「しかも?」
ヒトラー「作者はガルパンとコラボさせるつもりらしい」
ヨードル「何ですって?」
グデーリアン「こうしちゃいられねぇ、はやく登場させてくれ!!戦車道で電撃戦やって女の子とキャッキャウフフフしたい!!」
ロンメル「私からも頼む、きゃーロンメル様ってされたい」
マンシュタイン「いや、私はできれば提督として・・・」
ヒトラー「それじゃあ、みんな楽しみにしてくれ。畜生めぇ!!」