「・・・今、なんて言いましたか?」
秘書艦である正規空母加賀はその凜とした目にさらに眼光を鋭くさせて聞き返した。
対して彼女に対峙するヒトラーの秘書、ボルマンも神妙な、しかし深刻そうな顔で言った。
「だから。総統閣下が不審者として警察に連れて行かれたと」
「・・・マジで?」
ブルクドルフが聞き返した。
「マジ。だって直接見たし」
「・・・いつかこうなると思ってたわ」
執務室内の人間を呆れの空気が包んだ。
そう。我らが総統閣下アドルフ・ヒトラーがついに警察に不審者として連れて行かれたのである。今からその経緯を語るとしよう。
太陽光が激しく照りつけ、セミが騒音を奏でる七月上旬、ゲルマニア鎮守府から少し離れたとある海水浴場。
ここ最近激務が続き猛暑ということもあり、ヒトラーは幾人かの部下と艦娘を引き連れて鎮守府一番近くにある海水浴場に涼を求めてやってきたのであった。
出発する前にヒトラーは女性用の水着とカメラをそれぞれ手に持ち「今日は加賀さんの水着姿を何としても撮影するんだ!ポロリもあり!!楽しみだな、加賀さんの水着姿、特に目に刺さるような!!おっぱいぷるーんぷるん!!」と叫び自作の駆逐艦娘のフィギュアとスクール水着を手にしたゲッベルスが「諸君!駆逐艦娘のスク水姿も忘れてはならない!!薄い胸、さわやかさ、柔らかい肌、あどけなさ!!ロリ娘の水着姿はまじすけべぇで、そそられる!!諸君、カメラは用意したか!?今すぐに駆逐艦娘を崇拝するのだ!!」と案の定変態共が騒ぎ加賀やユンゲ、大淀にコテンパンにぶん殴られるなど、色々と騒ぎが起こったが、何とかヒトラー達は海水浴場にたどり着いた。
最初の内こそ、ヒトラーは愛犬のブロンディと戯れながらパラソルの下で(ヒトラーとブロンディ共に艦娘達の水着姿をじっと見つめながら)寝っ転がったり日光浴したり泳いだりと涼を楽しんでいたのだが、いつも何かと騒動を起こすヒトラー達である。事件はすぐに起こった。
ヒトラーは海の景色を眺めんがらデッサンをしていたが、少し体を動かしたくもなってきた。せっかく海に来たのだから、(艦娘の水着姿を見ながら)砂浜を歩き回って海風に当たってくるか。
そう思い、ヒトラーが砂浜を散歩し始めたその時であった。
「あ、大淀ちゃん後ろ!!」
「へ?って、きゃああ!?」
突然、強風でも吹いたのか高波が起こり、巨大な水の壁が水着姿の大淀にクリーンヒットした。
そしてよくある展開だが、結合部分が弱かったのか大淀の水着が水の勢いとともに外れ、砂浜にはらりと落ちた。
一瞬、場を沈黙が包んだ。
大淀はすんでのところで胸を両腕で押さえてポロリは避けたが、大変な事態であることに変わりない。大淀の顔は見る間に赤くなった。叫ぶのこらえるのが精いっぱいのようだ。
周りも当然慌てる。
「ちょ、落ち着け!!てか何みんな見てるんだ!!」
「とりあえずこのタオルか浮き輪で隠せ!!」
「早く付け直せ!!」
と、周りが対応に追われているときであった。
そこにヒトラーの愛犬であるブロンディがさささっ、とやって来た。
そして。
ぱくりと。
砂浜に落ちていた大淀の水着を咥えた。
そして、そのままその場から走り去っていった。
「・・・おおおおおおいいいい!?!?」
「ブロンディーーッ!?それおもちゃじゃない!!早く返せ!!」
「きゃーーーー!?」
水着を食えながら走るブロンディはそのまま砂浜を先に歩く主様、ヒトラーの元へ駆け寄り、そのままその大淀の水着の金具がヒトラーのズボンの後ろに偶然引っかかる。
ヒトラーが振り返った時には、そこには口に何も咥えていない愛犬はいるだけだった。しかも水着が引っ掛かっているのはズボンの後ろだ。気づくはずもない。
はたから見れば、ヒトラーのケツからブラジャーの尻尾が生えているように見えるだろう。
「おお、ブロンディ、お前もついてきたのか・・・Gut Gut(よしよし)」
そのままヒトラーは売店へと向かった。
売店の店主にアイスクリームを注文しながら、それにしても熱いなと思いハンカチがないかズボンをまさぐった。
すると、ちょうどズボンの後ろに布製の何か・・・大淀の水着が引っかかっているのに気づき対して確かめもせずに額の汗をぬぐった。
それにしてもこのハンカチは何かおかしいな。
吸水性に優れているようだが重くなく、ふんわりと軽く、柔らかく、女性のようないい匂いがする。使っている材質がいいのだろうか・・・と思いながら店主を見ると、店主は目をぱちぱちとさせてヒトラーを見ていた。
「・・・あんた何で顔拭いているんだ?」
「・・・え?」
店主に指摘されてようやく自分の持っている物がなんなのか気づくヒトラー。
当然驚いた。
「おい、なんじゃこりゃあああああ!?女性用下着、ブラジャー、もとい、水着じゃねえかあああああああ!?!?」
「へ、変態だ・・・女性の水着で汗拭くやつがいる・・・不審者だ・・・下着泥棒がいる・・・」
「ち、違う!?こ、これは私は何も知らん!!自、事故だこれは」
「ちょっと、あなたなにやってるんですか?」
隣を見ると、警備員らしき人物がいる。
明らかに容疑者・不審者を見る目でヒトラーを見ていた。
「さっき水着を紛失したという届け出があったんですがね・・・まさかあんたが盗んだのかい?」
「違う!!私は何も知らない!!」
「じゃ、なんで女性用水着で顔なんか拭くんです?しかも地味に笑顔でしたし」
「ち、違う!!わ・・・私は何も知らんのだ!!って、なに手錠出してんだ!?待って!!マジで待っててば!?超、待っててば!?だああああああああああ!?」
こうして、ヒトラーは容疑者・不審者として警察に連れて行かれた・・・
ボルマンが事の顛末を話した後、総統執務室内は沈黙に包まれた。
ブルクドルフが重い口を開いた。
「・・・それ本当に事故だったのか?総統がわざとやったんじゃないんだよな?」
何人かは総統がわざとやったのではないかと疑っている。それも当然だろう。実際ヒトラーは「おっぱいぷるんぷるん!!」とか言う変態だから。
ボルマンは首を横に振った。
「いや、現にエヴァ様など目撃者が多数いる。明らかに事故だった」
フェーゲラインが鼻で笑った。
「いや、変態総統のことだからわざとだろそれww」
「青葉もそんな気がします・・・」
「そうよ、あのクソ総統のことよ、絶対ワザとに」
「KO☆RO☆SU」
加賀がそう言った瞬間、ミレニアム大隊所属の武装SS隊員がMP40をフェーゲライン、青葉、曙の三人に素早く照準し連射した。
「はい死んだ!!」
「なんで青葉もおおおおおお!?」
「ちょ、これクソ総統の仕事で、ってぎゃああああああ!?」
無数の訓練弾を食らった三人はピロリーン♪という音と共に崩れ落ちた。
(暫くの間)動かぬ肉の塊と化した三人を見下ろしながら加賀は言った。
「私が総統のデイリー任務代行係だということ忘れたの?」
と、その時ジリリリリリと机の黒電話が鳴った。
ボルマンが受話器を手に取り何度か頷くと部下たちを見た。
「警察署からだが、総統を迎えに来てくれとのことだ。容疑は晴れて、注意だけで済んだらしい」
部屋に安堵と、わずかなながら失望の空気が流れた。
十分後、エヴァ・ヒトラーと加賀は黒塗りの総統専用車に乗り、警察署に向かっていた。総統を迎えるためだ。
暫くの間、車内は沈黙に包まれていたが、ふと加賀が口を開いた。
「・・・提督が結婚しているなんて驚いたわ」
エヴァが加賀を見た。
「どうして?誰でも結婚ぐらいするでしょう?」
「いえ・・・ただ、雰囲気的にそういうのとは無縁の人に思えて。あなたはどうして提督と結婚しようと?」
ヒトラーは変態だが、女子供には何かと優しいし、しかし同時に距離を置いているようにも加賀には感じられた。そして時には非情な時も、ゾッとするときもある。
加賀にとってヒトラーは謎めいた人物だった。
不思議そうな目で加賀はエヴァを見た。
対してエヴァは何でもないように答えた。
「愛していたからよ。今もね」
エヴァの目は遠くを見ているようだった。悲しそうでも幸せそうでもあった。
「ずっとあの人を追いかけていた・・・でもなかなか振り向いてくれなくて。結婚してくれと言われた時は本当に幸せだった」
エヴァは加賀を見た。
「私もわからなくなる時があるわ。彼のことが。総統の内面は謎ね。やさしい時も、非情な時も・・・永遠に謎だわ。でも私はそれでいいし、それがいいと思うわ」
「・・・」
また車内を沈黙が包んだ。
車はすぐに署についた。
警察署の扉からゆっくりとヒトラーが歩いてくる。
少し疲れているようだった。
エヴァと加賀を見ると少し笑った。
エヴァを抱き、キスをしたあと、加賀の手を取る。
「すまない」
ヒトラーが言った。
「心配をかけてしまったな」
エヴァを首を振った。
「大丈夫よ、あなたがそんなことするわけないと信じてたから」
「私もです、総統。あなたは私達の司令官ですから」
「さ、帰りましょ」
ヒトラーはエヴァと加賀を交互に見詰めた。
「・・・ありがとう。すまないね」
ヒトラー達はそのまま車に乗り込み、鎮守府へと戻っていった。
日はすっかり暮れ、夜空に星が瞬いていた。
これから番外編で書こうと思ってる話
・フィンランドの白い死神が深海棲艦をヘッドショットしまくる話
・金髪の野獣が艦娘の衣服のエロさにめざめて服フェチになる話
・国家元帥が、ただひたすらプラモ作る話
・ブルクドルフとクレープスがエロ本を巡り戦う話
他にも色々考えていますが何かやってほしい話があったら作者の活動報告にどしどし投稿してください。
ありがとうございます。