曙(デイリー処刑を食らって)「なっ!何をするだァーッ!許さんッ!このクソ総統!」
ヒトラー「曙ーーッ!君がッ泣くまでデイリーするのをやめないッ!」
シュトロハイム「ナチスのホルストヴェッセルリートは世界一ィィィイイイ!!」
日本の、どこかにある田舎町。
国家社会主義ドイツ労働者党の副総統ルドルフ・ヘスと鎮守府から逃亡してきた時雨と夕立(とヘスらに拾われた捨て犬)はその町をぶらぶらと歩きまわっていた。
「ねーねーおじさん、これからどうするっぽい?」
夕立がヘスに尋ねた。
時雨と夕立、そしてヘスは現在の状況を一言でいえばホームレスであった。
あの地獄のような鎮守府から逃亡してとりあえず見た目は優しそうなヘスについて行ったが、誰も、これからどうしようか考えていなかった。
一応逃亡する際ある程度の現金や荷物は持ってきたが、それだけでは長く持つわけがないし、もしかすると追手が来る可能性だってある。大本営・・・防衛省に行くにしても快く受け入れてもらえるかどうか・・・
ヘスは頭をポリポリ書きながら言った。
「そうだな・・・とりあえず飯でも食べて力をつけよう。これからどうするかはそこで考えよう」
ヘス達は近くにあったマ○ドナ○ドの店内に入っていった。
「そういえばおじさんは外国から来たみたいだけど、どうしてここにいたの?」
店内でチーズバーガーを食べながら時雨はジャンボバーガーとLサイズのポテトをガツガツムシャムシャと食べるヘスに聞いた。ヘスの隣では夕立もバーガーをガツガツとすごい勢いで食べていた。
「うーむ・・・いや、実というと私もよく覚えていなくてね・・・ソ連の連中にに収容されていたことは覚えているんだが気づいたらここにいて・・・」
「ソ連?収容?」
「ああ、そうか・・・今はロシアだったな・・・何、収容といっても悪いことをしたわけじゃない。ただ不当な容疑をかけられてね・・・もう出れないと思っていたんだが・・・君こそなんであんなところにいたんだい?逃げているみたいだったが」
ヘスに問われ時雨はうつむいた。
あのブラック鎮守府での出来事は思い出したくもない。
吹き荒れる提督の暴力、ろくに与えられない食事や資源、満足に修復も装備もさせてもらえず、何度貞操の危機を感じたことか。
「いろいろあったんだ。いろいろ」
時雨の暗い顔を見てヘスは頷いた。
「・・・そうか。言いたくないならいいさ。でもいつかは相談してくれ。こうして腹が減って野垂れ死にしそうになったところを助けてくれたんだからな。何か少しでも礼はしたい」
「・・・そうかい?おじさんを助けられたのならそれは嬉しいことだね」
「私もね・・・昔はいろいろあったのさ」
ヘスは昔を懐かしむような顔をした。
「ミュンヘンやベルリンでの輝かしい日々・・・総統との栄光あるドイツでの日々・・・ニュルンベルク・・・良い時も悪い時も・・・悪い時のほうが多かったかもしれないがね・・・でも後悔はしていない。またやり直せるのなら、たとえ変えられなくても喜んで行くさ」
「・・・僕もね」
ヘスの顔を見て時雨はポツリとつぶやいた。
「僕も・・・昔はいろいろあったんだ。レイテとか、スリガオとか・・・山城と扶桑のこととか。いつも僕だけが生き残った」
ヘスも夕立もじっと何もしゃべらず時雨の話を聞いていた。
「今はこうして、この姿になってまた戦えるようになったけど・・・あそこでも同じだったよ。どこへいっても僕の周りには・・・苦しいことしかない」
時雨はヘスと夕立をじっと見つめた。
その眼はとても悲しそうだった。自分はどうすればいいというのか?分からないという、悲しみの目だった。
「僕はまだ、ここにいても、大丈夫なのか・・・」
「時雨ちゃん・・・」
「どうしてここにいちゃいけないんだい?またやり直せばいいじゃないか」
ヘスの言葉に時雨は顔を上げた。
ヘスの目には力強い意志が宿っていた。
「私には難しいことはよくわからないが・・・君の話を聞く限り君の周りは苦難の連続だったようだね。しかしだからと言ってあきらめていい理由はない。戦わねばならないのだ。生きている限り。かつて私がつかえていた総統がそうだった。ミュンヘン一揆で逮捕された時も・・・ベルリンでのアカやユダヤ人との戦い、長いナイフの夜・・・総統の進む道をあらゆる運命が阻もうとした。だが総統閣下は鋼の意思で、運命と格闘し勝利し続けた。最後にはどこかでしくじったのか敗北してしまったが・・・だが我々は最後の最後まで運命と戦い続けた。たとえそれが変えることができない運命だったとしても。人間とはそういうものじゃないか?立ち向かわなければ状況は良くはならない。人生とは戦いの連続だ」
時雨は言った。
「・・・でも。僕はまだいけるかな。力も、なにもない。たまに分からなくなるんだ。どうしてここにいるのか」
時雨にとって、まだ駆逐艦だった時も、艦娘に生まれ変わった時も決して幸福とは言えない人生であった。
自分だけが生き残り苦しいことしか残らない。守るべきものが、守ろうとしたものがなくなっている。
どうしてここにいるのか?何のためにいるのか?時雨にとってそれは永久に分からない問題だった。
ヘスは微笑んで時雨の手を取った。
「どうしてここにいるか、じゃない。ここにいるから、だ。総統の出現も、私たちの戦いも・・・すべては必然だった。一度はもうだめかと思ったが、私は今こうしてここにいる。君たちもこうしてここにいる。生きる理由はいくらでもあるはずだ。望みを、意思を失ってはいけない。それはもう人間じゃない。ただの奴隷だ」
ヘスの言葉を時雨はじっと聞いていた。
時雨は彼の目を見つめた。
優しい目だ。この人も自分と同じように悩み、戦ってきたのだろうか。
確かにこの人の言う通りなのかもしれない。生きる理由はいくらでもある。ここにいてもいいのかもしれない。・・・希望はあるのかもしれない。守るべきものも。
「・・・そうだね。雨は、いつか止むさ」
時雨は笑った。
この人にならついて行ってもいいかもしれない。
二人の様子を見て夕立も微笑んでいた。
「あ、時雨ちゃん、おじさん、見て!雨が止んだっぽい!」
ヘスと時雨は店内の窓から外を見た。店内にいる間、外では雨が降っていたのだが、いつの間にやんだのだろうか。
道路には水たまりがいくつもできており、空では雲がだんだんと晴れていき太陽がその姿を現していた。
水たまりが日光を反射して光っていた。
止まない雨はない。
その頃ゲルマニア鎮守府では。
「畜生めぇ!!なんでMe262が・・・メッサーシュミットが、スツーカが開発できないんだよ!!出てくるの、キャベツ栽培装置だのパンジャンドラムだの、紫外線照射装置だのへんなのばっかりじゃねぇか!!」
「普段の行いが悪いからじゃね?変態総統ww」
「そうよ!少しはオッパイプルンプルンとかやめなさいよ、この変態クソ総統!!」
「KO☆RO☆SU」
「はい死んだ!!」
「なんで青葉もおおおおお!?」
「ちょ、なにすんのよこのクソ総統、デイリーは二人の任務だって、ってぎゃあああああ!?」
フェーゲラインと青葉、曙がヒトラーによるいつものデイリー処刑を食らっている真っ最中だった。
今日も鎮守府は平和である。