総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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36話 帰還~ホルスト・ヴェッセルの歌~

 ゲルマニア鎮守府。

 その港では作戦に成功し無事生還した艦娘達とヒトラー達の再会の喜びで満ち溢れていた。

 「よくやった!!よくやった!!」

 ヒトラーはこれでもかというほどの笑顔で加賀や山城の手を固く握り、一人一人にハグをしていった。

 「あの、総統そう強く抱きしめられると痛いのだけど・・・」

 「ああ、すまない、だがよく帰ってきてくれた!!体のほうは大丈夫かね?」

 「大丈夫です、入渠すればすぐに治ります」

 ヒトラーは頷いた。

 「そうか、それにしてもすまなかったな。こんな目に合わせてしまって・・・山城達にも色々迷惑をかけてしまった。後でしっかりと休ませてやらんとな。鉄十字章ものだ、これは」

 それを聞いて加賀は少し微笑んだ。

 「大丈夫です。赤城さんともこうして無事に帰ってこれてまた鎮守府に・・・総統たちに会えたんですから。それよりも総統、報告があります」

 「なんだ?」

 「本来なら私達第一艦隊と救出艦隊が帰還する予定でしたが・・・島で同じく遭難していた人間と艦娘がいたので一緒に連れてきました」

 ヒトラーは鎮守府の窓から見えたスツーカや妻であるエヴァの顔を思い出した。

 「ああ、そうだったな・・・確かその中に私の妻がいたようだが・・・」

 「・・・え?」

 ヒトラーのある意味爆弾発言とも取れる言葉に加賀がピクリとしたとき、ゲッベルスやクレープス達に囲まれて同じく労をねぎらわれていた艦娘達の群衆から一人の女性の声がした。

 「あなた!あなたじゃないの!!」

 人ごみの中ををかき分けて現れたのは30代ほどと思しきブロンドが特徴の女性だった。

 どうやらヒトラーにとって非常に親しい人物であったのだろう、ヒトラーは喜びの声を上げ彼女に駆け寄り彼女を抱きしめた。

 「エヴァ!やっぱりエヴァだったか!!いままでどこにいたんだ?」

 エヴァは笑いながら言った。

 「私のほうこそそれを聞きたいわ。さっきまで地下壕にいたはずなのに気づいたら変な島で寝転んでいて・・・一緒にいた摩耶ちゃんや加賀さんがここまで連れてきてくれたのよ」

 ヒトラーはモーンケと再会を喜び合っていた摩耶を見た。

 「君が連れてきてくれたのかね?」

 「おうよ。なんか最初は怪しい奴だと思ったけどさ、加賀さんを看病してくれたりとかしてさ、色々助けてくれたんだぜ」

 「・・・そうか。私と同じようにここに来たのか・・・もう会えないと思ったよ。エヴァ、今までさみしかったろう。だがもう大丈夫だ、心配することはない一人にはさせん。こうしてまた会えたのはきっと神がこの世界へ連れてきてくれたのだ。また、この世界で新しい人生を始めようじゃないか」

 「そうね。こうしてまた会えたのも・・・運命だわ」

 ヒトラーはそっと、エヴァの唇に口づけした。

 その様子を見た電が少し顔を赤くしながら隣のゲッベルスに聞いた。

 「総統閣下とエヴァ様・・・いや、今はヒトラー夫人というべきか・・・結婚されているのだ。だいぶ昔にね。もう会えぬものと思っていたが、まさかこうして再開するとは・・・」

 その言葉に艦娘達は驚きの声を上げた。

 「えええええ!?あのクソ総統、結婚してたの!?信じらんない!」

 「え、マジで!?」

 「・・・頭にきました」

 「Oh・・・そんなの聞いてないデース・・・」

 「いや、まだお妾さんとか愛人ならチャンスがあるはず」

 「おい、お前なにとんでもないこと言ってんだよ」

 その様子を見ながらフェーゲラインは笑いながら言った。

 「ほんと、あの変態ちょび髭が結婚できるなんて信じられないよな。世も末だなww」

 曙や青葉も反応する。

 「ほんと、あの変態が結婚するなんて冗談でもいやだわ!!」

 「え?じゃあ総統は妻のいる身でありながら不倫やセクハラを」

 「KO☆RO☆SU」

 ヒトラーがそう言った次の瞬間、ミレニアム大隊所属の武装ss隊員がMP40をフェーゲラインと曙、青葉に照準し一気に連射した。

 「はい死んだ!!」

 「なんで青葉もおおおおおおおおお!?」

 「ちょ、何すんのよこのクソ総統、デイリーはあの二人の任務で、ってぎゃあああああ!?」

 短機関銃弾の連射をまともに食らった三人はそのまま後方に吹っ飛んでピロリーン♪という音とともに地面に崩れ落ちた。

 その様子を見て呆れながらヨードルが言った。

 「総統・・・デイリー任務に曙を・・・子供を巻き込むつもりですか?」

 「態度の悪い奴にお仕置きするのは当然であろう。それよりも」

 ヒトラーはエヴァの手を握りながら周囲の艦娘や幹部達に言った。

 「加賀達が、妻が無事に帰ってきてくれたのだ。皆で祝おうではないか」

 モーンケが頷いた。

 「確かにそうですね、総統。パーティーでも開いて祝いましょう」

 「そうか、じゃあ久しぶりに鳳翔さんと間宮さんの手料理がたらふく食えるな」

 「お前は食うことしか考えてないのか」

 「そうだ!!祝いのイベントとして駆逐艦娘討論会を開こうではないか!!これを機に駆逐艦の魅力を伝え駆逐艦娘の崇拝を訴えるのだ!!」

 「ゲッベルス、お前は自重というものを知らんのか」

 「じゃあティーパーティーの用意もするデース!!」

 「じゃあ比叡はカレーを・・・」

 「「「やめろ!!!」」」

 艦娘達や幹部らの喧騒が始まりかけたその時、歌声がどこからか響き始めた。

 どうやら武装ss隊員の一人が上機嫌になって盛り上げようと歌い始めたらしい。

 

 

 Die Fahne hoch! Die Reihen fest geschlossen!

(旗を高く掲げよ!隊列は固く結ばれた!)

 SA marschiert Mit ruhig festem Schritt

(SAは不動の心で、確かな歩調で行進する)

 Kam'raden, die Rotfront und Reaktion erschossen,

(赤色戦線と反動とが撃ち殺した戦友たち、)

Marschier'n im Geist In unser'n Reihen mit

(その心は我々の隊列と共に行進する)

 Kam'raden, die Rotfront und Reaktion erschossen,

(赤色戦線と反動とが撃ち殺した戦友たち、)

Marschier'n im Geist In unser'n Reihen mit

(その心は我々の隊列と共に行進する)

 

 ホルストヴェッセルリート。

 国家社会主義ドイツ労働者党の党歌。

 ある一人の突撃隊員の死をきっかけにして広まったヒトラーたちにとっては懐かしい歌であった。

 また一人、また一人と歌い始めたちまち港は歌で響き渡った。

 

 

  

 Die Fahne hoch! Die Reihen fest geschlossen!

(旗を高く掲げよ!隊列は固く結ばれた!)

 SA marschiert Mit ruhig festem Schritt

(SAは不動の心で、確かな歩調で行進する)

 Kam'raden, die Rotfront und Reaktion erschossen,

(赤色戦線と反動とが撃ち殺した戦友たち、)

Marschier'n im Geist In unser'n Reihen mit

(その心は我々の隊列と共に行進する)

 Kam'raden, die Rotfront und Reaktion erschossen,

(赤色戦線と反動とが撃ち殺した戦友たち、)

Marschier'n im Geist In unser'n Reihen mit

(その心は我々の隊列と共に行進する)

 

 彼らの歌を邪魔するものは、できるものは誰一人としていなかった。

 ヒトラー達は今ここに新たな勝利の一歩を踏み出したのだった。

 

 

 

 


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