総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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35話 ゲルマニア~何度でも蘇るさ~

 ゲルマニア鎮守府、休憩室。

 いったいいつになったら飽きるのだろう。

 軍需大臣アルベルト・シュペーアは部屋でじっとたたずみあるもの見続けているヒトラーをみて思った。

 もとは来賓を招くための部屋でありかなり広めの部屋だったのだが、ヒトラーが提督として着任してから彼専用の休憩室として使用さていた。(といっても出入りは自由で実際には平時には普通に幹部や艦娘がくつろいでいるが)

 その部屋の真ん中、ヒトラーの目線の先にはには白く巨大な街の模型があった。

 真ん中に巨大な道路が直線に走り、左右には官庁街が無数に立ち並ぶ。巨大凱旋門を抜けた先にはさらに巨大なドーム型の神殿のような建物があった。

 世界首都ゲルマニア。

 かつてヒトラーがベルリンを「世界の首都」にと夢想しドイツの敗戦とともに消えた幻想の都。

 その模型をヒトラーはじっと見つめていた。

 もうかれこれ数十分は立っている。いくら模型好きの人間でも同じものを見続ける奴はそういない。

 それだけ彼がこの計画に情熱を持っていたということだ。

 「・・・あの、総統」

 ヒトラーの隣に立っていた大淀が言った。

 「今日は救出艦隊が帰還する予定日ですが・・・」

 「分かっている」

 ヒトラーは大淀の声を遮って言った。

 「それで大淀君、君は私に何をしろいうのかね?」

 「いえ、その・・・」

 「私はこれまでの人生で幾度となく運命と格闘を強いられた。あのウィーンでの画家としての日々。第一次大戦、ミュンヘン一揆、アカとユダヤ人との戦い、独ソ戦、ベルリンでの最後の日々・・・」

 ヒトラーはゲルマニアの模型の周りを歩きながら語り始めた。

 「幾度となく運命に阻まれたがそのいずれも私の進撃を止めるには至らなかった。それが私の使命だったからだ。途中しくじって一度は敗北を悟ったがしかし神に助けられ今はここにいる。新たな仲間とともにだ」

 ヒトラーはそっとドーム状のフォルクスハレの屋根に触れた。

 「この街で、この世界で新たな時代を築き上げる・・・それが私の夢であり使命だった・・・私は負けるわけにはいかんのだ。ただの人間として、司令官として終わるつもりはない」

 ヒトラーは振り返り、大淀らを見た。その眼には強い意志が宿っていた。ミュンヘンで、ベルリンで、鎮守府で、初めて会った時から変わらぬ眼であった。

 「大淀君、君は何か心配をしているようだが、それは違う。使命を果たす総統である私の命令を実行に移せぬ者がいるか?否。よほどの裏切者でもない限りそれはいない。彼女なら・・・加賀なら必ずやるはずだ」

 そう言ってヒトラーはシュペーアを見た。

 「・・・シュペーア。君もどう思う?私は・・・我々はまだやり直せれるかね?」

 ヒトラーにじっと見つめられながらシュペーアは答えた。

 「・・・幕が下りるまで・・・主役は常に舞台の上に」

 「その舞台はまだ続いているかね?」

 「少なくとも生きている限りは」

 ヒトラーは頷いた。

 「そうだ・・・その通りだシュペーア。たとえ何度打ちのめされようと、たとえそれが決して変えられぬ宿命だったとして私は何度でも立ち向かってやるさ・・・立ち向かわねばならん・・・それが総統たるわたしの宿命だ・・・」

 まったく変わらないな総統は。

 ヒトラーの様子にシュペーアは思った。

 ビアホールでの演説からベルリンでの最後の日々に至るまでヒトラーは信念を曲げぬある種、狂気と魅力に溢れたフューラー(総統)であり建築家として色々と面倒を見てもらったひとりの人間、友人だった。

 おそらく周りがいくら変わろうと彼は一人わが道を進み続けるのだろう・・・永遠に。

 「そう、そうだ。このゲルマニアを建設した暁にはついでにオタク首都アキバニアも建設して!二次元の美少女とメイドさんと胸部装甲の大きい艦娘に囲まれた生活を送るんだ!!地上の楽園を作るのだ!!いつか必ず加賀さんと武蔵と山城を!おっぱいぷるーんぷるんするんだ!!」

 フェーゲラインが笑いながら言った。

 「そんなことだから第三帝国滅びるんだよ、変態ちょび髭WW」

 「KO☆RO☆SU」

 「はい死んだ!!」

 「なんで青葉もおおおおおおおお!?」

 次の瞬間、部屋にミレニアム大隊の武装ss隊員が侵入しMP40をフェーゲラインと青葉に連射、ピロリーン♪という音とともに二人はばたりと倒れた。

 シュペーアはその様子をじっと見続けていた。

 本当に変わらないな・・・

 シュペーアは胃薬の必要なかった昔の生活を懐かしんだ。大淀も同じことを考えていたことは言うまでもない。

 

 「失礼します総統閣下」

 ふと、部屋に一人の男が入ってきた。白いコートに身を包んだ金髪のメガネの肥満体の男。名前は確かモンティナ・マックスとかいう親衛隊の少佐だったか。隣には褐色の軍用コートを着込んだ終始無言の男とレンズの数が多い奇妙な形のメガネを身に着けた血まみれの白衣の男がいる。

 「なんだ」

 「通信部より報告。例の救出艦隊からです。我レ作戦ニ成功セリ、到着スルとのことです」

 ヒトラー達は目を見開いた。

 「何!?」

 「それは本当か!?」

 「成功したんだ・・・成功したんだ!!」

 「万歳!ジークハイル!!」

 ヒトラーは大声で言った。

 「大淀、すぐに全軍に伝達だ、作戦は成功したと。港で迎え入れる準備だ!!」

 「はい!!」

 「あ、あと総統」

 ニヤニヤ笑いながら少佐が続けて報告した。

 「吸血鬼・・・例の研究のことですが試作品第一号が完成したためご覧いただきたく存じます」

 「分かった」

 「あ、あとリップヴァーン中尉と隼鷹の入浴の様子を盗撮したんで一緒に見ましょう」

 「分かった。すぐに行く。ていうか先にそれ済まそう」

 「アホか!!」

 次の瞬間ヒトラーはユンゲと大淀から一斉にパンチを食らった。

 ヒトラーの体が吹っ飛んでゲルマニアの模型に着地、模型は粉々に崩れた。

 その腹の上にドカッと秘書のユンゲは靴を乗せ、冷たい目で睨んだ。

 「少しは自重しろちょび髭」

 「「「「「ハイッ!!!」」」」」

 「あ、総統、窓の外を見ください・・・救出艦隊です!!山城たちです!!加賀も赤城もみんないます!!あと知らないやつも!!」

 ヒトラーは雪風から双眼鏡を借りると窓から海を眺め見た。

 そこには見慣れた部下たちの顔が――仲間たちの顔がいた。一人も欠けていない。それどころか知らない顔もいる。

 「おい、あれデーニッツじゃないか?」

 「ムッソリーニに似たやつはいるぞ!!」

 「スツーカがいるんだがあれはもしや・・・」

 「エヴァ!?エヴァなのか!?こうしてはおれんぞ、すぐに港に向かうぞ!!」

 ヒトラーは部下を伴って港に向かって駆け出し始めた。

 勝利の時は確実に迫っていた。

 


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