総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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31話 攻撃~救出はまだか~

 深夜、二個二個童画島。

 島の岩礁に乗り上げている大破した帝国海軍空母『飛龍』の甲板上で山口多聞は水平線を見ながら立ち尽くしていた。

 月明かりがなく星のみがかろうじて夜空を照らしている。

 山口は咥えていた煙草からフッと煙を吐き出した。

 「・・・これが最後の一本か・・・」

 当然ながら寂れた島内に煙草は一本もない。せいぜいシケモクが何本か転がってる程度だ。

 これからしばらくはシケモクを我慢して吸う羽目になりそうだな、と思っていると傍らで女の声がした。

 「・・・提督、眠れないんですか?」

 「・・・飛龍か」

 正規空母の艦娘、飛龍は山口の隣に立ち一緒に水平線を見た。

 「・・・思えば、あの日から3か月ぐらい経ちましたね」

 「死んだと思ったら未来に来ていた。しかも女の子になった空母やら潜水艦やらドイツ人までいる。まったく、人生何があるか分かったもんじゃねぇな」

 山口は一瞬フッと笑ったが、すぐに表情を硬くした。

 「・・・何か心配事がありそうですね」

 「そりゃそうだ。あいつらが・・・菅野達が出撃してから何日もたったがまるっきり連絡がない。そう、遠くない距離だしまさかあの化け物共に撃沈されたとは思えんが・・・」

 数日前、資源や救援の手掛かりを求めて、この島の最短に存在する別の島、ニチヤンネル島に菅野ら偵察隊を派遣したのだが、一向に連絡が来ない。近くの島だからすぐに辿り着くし、通信機も渡したし武装も可能な限り万全なものにした。

 何かアクシデントが起きたか、あるいは考えたくはないが・・・

 山口は煙を吐いた。

 「お困りのようですな」

 突然、山口のすぐ隣で男の声がした。

 見ると眼鏡に禿頭、陸軍の制服を着た男が立っていた。

 「神出鬼没だね、辻大佐」

 「褒め言葉と受け取っておきます。ところで、山口少将は菅野達のことで気がかりなのでしょう?」

 「何かいい考えがあるのかい?」

 「・・・正直言って私も頭を悩ませております。最悪の状況も考えておいたほうがいいでしょう。私の考えとしては・・・」

 辻は飛行甲板からほど近い飛行場に止められているスツーカを見た。

 「・・・あとしばらくして何もなかったら我々も直接乗り込むべきかと」

 「・・・そうだな」

 山口は短くなった煙草を咥え直し夜空をまた見上げた。

 

 それから数時間後、ニチヤンネル島

 「・・・まったく、この島にこんなもんがあったなんて・・・」

 島に漂流した艦娘の一人である摩耶はため息をついた。

 彼女達は現在、島に残されている旧日本軍によって設けられた地下壕の中にいた。

 敵の偵察機の目を避けるため党内を散策していたらトーチカのようなものを発見し中に入ったら、地下空間が広がっていたのだ。

 菅野も続けて言う。

 「・・・まじか、あのオッサンのいうことホントだったんだな・・・お、缶詰発見」

 「なぁ、その二個二個童画島って島にも艦娘がいるのか?」

 「ああ、何度も言ったろ。ホントすごいぜ、飛龍にあきつ丸に・・・そういやドイツ人もいたなぁ・・・あ、缶詰空じゃねぇかバカヤロウ」

 「・・・何とかして連絡が取れればいいだけどな」

 もちろん、連絡がついたからと言ってどうなるか考えてはいない。が、それでも何とかなりそうだ、という気はした。

 「それにしても地下壕があって助かったな・・・何か役に立つものがあるかもしれん」

 ムッソリーニが言った。

 二個二個童画島や地下壕の存在。八方塞がりの状況での新たな発見は彼女たちに何かしらの希望を与えていた。

 「そうですね。敵の攻撃もある程度はしのげるだろうし、食料や弾薬、通信機もあるかもしれません」

 「とりえずこれからどうするかだな・・・」

 彼女たちが今後の方針について話し合っていた時だった。

 突然、火山が噴火したような爆発音が響いたと思ったら、地下壕内が激しく揺れた。

 あまりの出来事に一瞬慌てる。

 「うおっ!?」

 「なんだ!?」

 「敵の攻撃だ!」

 「・・・見てきます!」

 真っ先に落ち着きを取り戻した白雪が地下壕の外に向かう。

 摩耶たちも出口に向かう。

 その間にも爆発音と振動は地下壕内に伝わった。

 「白雪!」 

 「これは・・・」

 地下壕とつながっている狭いトーチカの覗き穴から白雪は外の様子を覗っていた。

 何が起きたのか、謎はすぐに解けた。

 空をいくつかの黒い物体が飛び交っている。

 目を凝らせば、正体はすぐに分かった。

 深海棲艦の戦闘機と爆撃機だ。

 飛んでいた爆撃機の一つが黒い物体を落とすと同時に、爆発音と巨大な火柱が目の前で巻き起こった。振動が伝わる。

 「ぐ・・・っ」

 「野郎、もう着やがったか・・・!!」

 おそらく、偵察機が飛んでいた時点で自分たちは敵に追われ気づかれていたのだ。

 その証拠に、摩耶は洋上にいくつか黒い点が浮かんでいるのを見た。

 「・・・くそっ包囲されたか」

 「・・・爆撃で我々を炙り出すつもりか、あるいは・・・」

 「どうするの?」

 エヴァが摩耶に聞いた。

 「知らない島で目が覚めたと思ったら、さっそく爆撃だわ。とんでもないサプライズね。なんとかしないと・・・」

 「そんなことは分かってるよとにかくいったん体勢を立て直そう!おい、だれか加賀と赤城を運ぶの手伝ってくれ!!」

 

 「間に合わなかった・・・?」

 ニチヤンネル島が包囲され摩耶たちが攻撃され始めたちょうどそのころ、山城達救出艦隊はすでに島まであと少しというところまで来ており、隼鷹が飛ばした偵察機で島の様子はリアルタイムで分かっていた。

 「いや、攻撃はまだ始まったばかりだし、島には地下壕があるって話だ。すぐには死なないだろうけど・・・急がなきゃあね」

 「・・・島を包囲している敵の編成は?」

 「今わかっている限りで島の近くにいるのは駆逐艦クラスが2、重巡クラスと戦艦クラスがそれぞれ1・・・航空機もあるから近くには空母がいるかも」

 「参ったわね・・・不幸だわ」

 山城は頭を抱えた。だが、今の状況を呪っても仕方がない。ここで立ち止まっても事態は好転しない。やれるのは自分たちだけだ。

 「隼鷹、航空機を発艦して!島を包囲している敵艦を少しでも減らすのよ!全艦私に続いて!」

 「あいよ!」

 「了解!」 

 仲間を守るため彼女たちは何があろうとも進んでいく。そこに幾多の苦難があろうとも。

 

 そのころ二個二個童画島

 「・・・」

 ドイツ空軍大佐ハンス・ウルリッヒ・ルーデルは基地の跡内でぐっすりと眠っていたが、突然起床した。

 そして彼は隣で寝ていた相棒のガーデルマンを起こした。

 「起きろ、ガーデルマン・・・休んでいる暇はないぞ」

 「石仮面が一万二千枚・・・石仮面が一万二千一枚・・・はい?何ですか大佐・・・」

 「いいから起きろ、出撃するぞ」

 「え?え?何でですか?敵襲でもないのに・・・」

 ルーデルは首を振った。

 「いいや、なんかよく分からんが近くで何か大変なことが起きている様な気がするんだ・・・それにここ数日、イワン共とまともに殺りあえていない!せっかくこの世界に甦ったのに!!俺は戦闘がしたいんだ!!ガーデルマン、出撃するぞ!」

 「え?ええ~~~」

 ルーデルは有無を言わさずガーデルマンを引きずると飛行場のスツーカに向かっていた。

 破壊の調べが始まろうとしていた。

 

  




 後書き
モーンケ「皆様、本作品を毎度読んでくれてありがとうございます。突然のお知らせですがここで前々回から告知していた人気投票の結果を公表したいと思います」
ヒトラー「うむ。まぁ、結果は分かっとるよ。どうせ総統のこの私がぶっちぎりの一位に決まっている。早く結果を公表しろ」
ブルクドルフ「」チラッ
クレープス「・・・総統閣下、そのことなんですが・・・総統閣下は・・・三位でした」
ヒトラー「・・・え?ちょっと待て、総統の私が何で・・・」
ヨードル「二位はゲッベルス、そして一位は・・・青葉とフェーゲラインのコンビです」
ヒトラー「ふざけんな!なんであんな奴らが私より上なんだ!?青葉はまだわかるよ!かわいいからさ!でもなんで自重しないロリコンと嫌みな奴が上位なんだ!!畜生めぇ!!!」
ゲッベルス「一番自重しない総統に言われたくないですよ!!」
フェーゲライン「ただの変態のオッサンに投票する奴なんかいねぇよww」
ヒトラー「KO☆RO☆SU」
フェーゲライン「はい死んだ!!」ズダダダダダダダピロリーン♪
青葉「なんで青葉もおおおおおおおおお!?」ズダダダダダダダピロリーン♪

 鎮守府は今日も平和です

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