総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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 番外編です。


27話 番外編1~総統閣下が総統閣下シリーズをご覧になるようです~

 ゲルマニア鎮守府、総統執務室。

 その部屋の主であるドイツ国総統、アドルフ・ヒトラーはクレープすら部下に報告を受けていた。

 「総統閣下、閣下はこの前の休みオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督の映画『ヒトラー~最後の12日間~』をご覧になられましたね?」

 「ああ。なかなかよく再現できた映画だと思ったね。私役のブルーノ・ガンツなんか、あれ私のクローンなんじゃないか?と思うぐらいの出来だったな。記録映画としては素晴らしい出来栄えだ。それで?わざわざ報告するということは何か問題があったのか?」

 ヒトラーはクレープスを見た。

 「はい、総統閣下・・・この映画の前半で総統が我々4人組に激昂するシーンがありますね?」

 「ああ、あの国防軍やSSを裏切り者と言って、それから私が自殺表明をするシーンだろ?事実だけどな」

 ブルクドルフがクレープスをちらりと見た。

 「総統閣下・・・そのシーンのことなのですが・・・」

 クレープスは口をつぐんだ。どうやらあまり自分の口から言いたくないらしい。

 ヨードルが追って説明する。

 「シュタイナーがネットサーフィンしてたらそのシーンが嘘字幕貼られて面白おかしくされている映像を見つけました。それがこちらです」

 ヒトラーは部下からパソコンを受け取ると、ニ○ニコ動画のサイトが映っている画面を見た。

 『総統閣下はスマホにお怒りのようです』

 『総統閣下がアンパンマンについて語るようです』

 『総統閣下はテレビ局にお怒りのようです』

 と題されている動画が多数掲載されている。ヒトラーはマウスを手に取るとそのうちの一つ一つを視聴し始めた。

 

 

 ~総統、『総統閣下シリーズ』を視聴中~

 

 

 どれくらいの時が経っただろうか。

 数十分経過したと思い気づいたら執務室の中を沈黙が支配していた。

 誰も言葉を発しない。ただパソコンの作動音が室内に響いているだけであり妙に大きく感じられた。

 しばらくした後、ヒトラーはパソコンをぱたんとたたむと動画を見るためにかけていた眼鏡をプルプルと震える手で外した後、静かに言った。

 「・・・大体見当はついているが、この動画が面白いと思ったものは残れアンポンタン」

 執務室にいた艦娘や部下たちが部屋から退散していき、部屋にはカイテル、ヨードルクレープス、ブルクドルフ、ゲッベルス、ボルマンだけが残った。

 しばらくの沈黙が続いたが、それはヒトラーの怒号によって破られた。

 

 「・・・なんなんだよこの動画は!深刻な雰囲気ぶち壊してんじゃねぇよ!ていうか、このカメラの位置に人物の配置、どう見ても今の俺たちと同じじゃねぇか!!」

 ヒトラーの怒りの声は執務室の外で待機している艦娘達や部下達の耳にも届いた。

 「言っておくがな、このシーンかなり深刻な内容なんだぞ!ドイツが滅びる直前の悲壮感が変な空耳や字幕でぶち壊されて名作映画が台無しだよ、そんなことする奴は大っ嫌いだ!!」

 ブルクドルフがすかさず反論した。ヒトラーをなだめようとする。

 「総統閣下、悪意があるわけじゃないから許してあげたら」

 「うるせぇ!!大っ嫌いだ!冗談じゃねぇぞバーカ!!」

 「総統、あんたはユーモアのセンスがないのか!?」

 しかしヒトラーの名作映画の雰囲気がぶち壊されたことに対する怒りは収まらない。

 「第一、この動画総統である私が全然ろくな扱いを受けていないじゃないか!!」

 ヒトラーは鉛筆を机にたたきつけた。

 

 「畜生めぇ!!!」

 

 ヒトラーの怒りの声が鎮守府中に響いた。

 彼の怒りはなおも続く。

 「私が変態のおたくされたり、部下に馬鹿にされたり、馬鹿騒ぎやったり、今の俺たちと全く同じ状況でウオッ!?て驚いたよ!この映画は将来の俺たちを暗示していたんだな、なんで初めて見たとき気づかなかったんだろう!これと同じことをあの人物でやってみろ、お前ら速攻で粛☆清だぞ、その人物とはもちろんそう、スターリン!!」

 ヒトラーははぁ、はぁ、と息を切らせながら椅子に座った。

 「もっと不満なのはな、このMAD作品に花がないことだ。単に面白けりゃいいってもんじゃない。いいか、時代は萌えなんだ!私が今本当にほしいものはな、目に刺さるような!おっぱいぷるーんぷるん!!」

 執務室の空気がどんどん白けていく。

 「動画内でもうちょっとかわいい女の子と戯れるシーンがあれば文句はないんだけどな!!ポロリとかパンチラとか萌え要素があればあの映画もっと売れたと思うぜ」

 

 執務室の外では潮がえぐえぐと泣き、加賀が呆然とした様子で執務室のドアを見つめていた。

 大淀が泣いている潮をなぐさめる。

 「あの変態ちょび髭、とうとう壊れたわね・・・」

 

 執務室内ではヒトラーがうなだれたまま、話を続けていた。

 「私が結局言いたいのはな・・・この動画は面白いよ、うん。すっげぇ、面白い。ただ動画内での私たちの現状があんまりにも私たちに似すぎているのが怖くなったのと、総統である私がろくな扱いを受けていないことに怒りを覚えてついかっとなってしまったんだ。動画製作者よ、申し訳ない」

 ブルクドルフは部下たちをちらりと見渡した。

 みなどうすればよいか分からずにいる

 ヒトラーは最後の締めくくりとして部下たちを見て質問をした。

 「・・・ところでこの動画見つけたのはシュタイナーらしいがいつシュタイナー帰ってきたんだ?」


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