ゲルマニア鎮守府に併設されている軽空母鳳翔が経営する居酒屋『鳳翔』。
元ドイツ第三帝国軍需大臣アルベルト・シュペーアは頭を抱えてうなだれていた。
彼もまた、数週間前にこの世界に復活し説得を受けこのゲルマニア鎮守府に勤務していたが、彼は現在総統の無茶ぶりに悩んでいた。
「姫級改造計画・・・なんでこんなことを・・・」
そう、われらが総統であるヒトラーが硫黄島の泊地鬼と装甲空母鬼の撃破のために戦艦武蔵を大改造して姫級、鬼級ぐらいのスッペクを持たせろとシュペーアと工作艦明石に命令したのだ。
当然、だれもやったことのないことだからこうしてシュペーアはどうすれば良いのか、と頭を抱えて悩んでいた。
「シュペーアさん、何そんなに悩んでいるんですか?」と、隣でビールのジョッキを持った明石が言った。彼女はその名の通り、機械関係に強くこのゲルマニア鎮守府の技術部門の中核を担う人物の一人でもある。その表情はシュペーアと対照的に明るい。
「いやぁ、俺の専門、兵器とかじゃなくて建築なんだけど・・・資源の量をどうにかしろとか兵器の量産とかなら軍需大臣の経験があるからまだいいけどさ・・・やってく自信ないよ・・・」
「大丈夫ですよ、私がついていますし。それにこれはいろんな新技術を試すチャンス・・・」
ふふふ、と明石が意味深な笑みを浮かべる。
「その通り。なんでも提督は私を無敵にしようと色々とアイデアを練っているというじゃないか。あの時思う存分暴れられなかったからな、私はむしろ楽しみだぞ」
隣に座っている改造計画の当の本人の戦艦武蔵もヒトラーが自分をどんなふうに強くしてくれるのかと期待しているようでどこか楽しみしているような表情だ。
それでもシュペーアの不安はぬぐえ切れない。
「いや、第一これ資源と金の無駄遣いじゃないかな・・・姫級に大改造とか・・・」
「まったく、総統閣下も馬鹿なこと考えたな」
カウンター席に座っていたシュペーアと明石の後ろで声がした。
後ろを振り向くと、テーブルに座り酒盛りをしているヨードル、那珂、ブルクドルフ、クレープス、那智、隼鷹にフェーゲラインと青葉がいた。最近どうも彼らの仲がいい感じになってきているのは気のせいか?とシュペーアは思った。
ヨードルが続けた。
「武蔵を姫級に改造しようだなんて、いくらなんでもばかげている。下手したら資材ををすっからかんにして前みたいにタピオカパンひとかけらの生活になるかもしれんぞ。そんなことするより航空機の製造に力を入れるべきだ」
「ならそう言えばいいんじゃないか?」
フェーゲラインが言った。クレープスが反論する。
「馬鹿言え、どうせ相手にされないかお前みたいに処刑されるかだ」
「まぁ一応提督の決定だから行くとこまで行けばいいんじゃね?」
「いいじゃないか、無敵の超戦艦なんて。色々と無茶に見えるが意外とうまくいくかもしれないぞ」
隼鷹と那智が日本酒の入ったコップをぐいぐい飲みながら言った。
ブルクドルフがため息をつきながら言った。
「あんたらは気楽でいいよ。戦うことだけ考えればいいんだからさ・・・でもこっちは資材とか作戦も考えにゃならんのよ・・・総統の無茶ぶりを止める方法なないかな」
「蒼き鋼のアルペジオのキリシマとラブライブの東條希と総統のR18同人誌作ってあげれば止めるんじゃね?」
フェーゲラインが笑いながら適当に言った。
ブルクドルフがそれだという顔で言った。
「名案だ、フェーゲライン、それ全部お前が一人で作れ。後で雑誌に載せてエロ漫画家としてデビューさせてやる」
「ヤメテ」
「もう不安しかねぇよ・・・」
フェーゲラインがパンと手を叩いた。
「ああ、もうこんなこと考えても無駄だ!!今日はとりあえず飲みで食いまくろうぜ!!飲み会の〆はもちろん夜店のタンメン!!加賀さんの金で・・・」
「KO☆RO☆SU」
店内で赤城と晩飯を食べていた加賀がそう言った途端、店内にいた妖精がMP40をフェーゲラインと青葉に向けて発射した。
「はい死んだ!!」
「なんで青葉もおおおおおおお!?」
銃声が店内に鳴り響き、ピロリーン♪という音とともにフェーゲラインと青葉はその場に崩れ落ちた。
明石が悲鳴を上げて那珂が歌いだす。
「フェ、フェーゲさああああああああん!?」
「い~つになったら~~フェ~ゲは学習するの~~♪」
こうして、様々な不安と期待に包まれながらその日の夜は終わり、翌日改造計画が実行に移された。
数日後、総統執務室。
軍需大臣アルベルト・シュペーアと明石はアドルフ・ヒトラーに改造計画の経過について報告を行っていた。
「現在、妖精たちや明石ら専門チームが総力を挙げて計画に着手するも技術的な困難や資源資金の不足は如何ともし難く・・・恐れながら総統閣下、この計画は中止すべきかと」
「技術的困難・・・例えばどんなものがあるのかね?」
「例を挙げれば主砲です。総統閣下は、46㎝三連装砲の代わりに80㎝列車砲ドーラを搭載しろとおっしゃられましたが、反動や重量が重すぎて搭載は困難、51㎝連装砲ならまだ可能性がありますが・・・」
「80㎝は諦め51㎝にしろと?それは認めん。80㎝砲は敵の一撃粉砕及び武蔵の無敵化のために絶対に譲れん」
シュペーアははぁ、とため息をついた。こんなんだからドイツは負けたんじゃないんだろうか?そう考えていると隣に立っていた。明石が言った。
「あの・・・総統」
「なんだ?」
「レールガン・・・ならいけるかもしれませんが・・・」
「なんだそれは?」
「電磁石の力で砲弾を飛ばすやつです。反動、重量も軽減できるし炸薬も使わないからその分砲弾を多く積むこともできますが、未知の技術ですから上層部が許してくれないくて・・・ほかにも試したい新技術があるんですけど、だめですかぁ?」
そんなの資源や金に限度があるしさすがにそんな得体のしれないもん許可するわけがないだろう。シュペーアはそう思い、明石に諦めるよう言おうとしてーー
「許可する」
「えっ!?」
「いいんですか!?」
明石がぱあっと顔を輝かせた。
「武蔵を無敵にする為なら金と資源に糸目はつけん!!どんどん新技術を試せ!!君には期待しているんだからな!!頼んだぞ!!」
「ありがとうございます、総統!!」
「いやいやいやいや!!」
こうして、シュペーアやドイツ軍人たちの不安をよそに明石と妖精やほかの艦娘が改造計画にノリノリになっていき、鎮守府の負担はますます重くなった。
同時にヒトラーの要求もエスカレートしていった。
ある日にはーー
「総統!!重量が重すぎてこのままでは沈んでしまいます!!」
「重すぎて沈む?だったら潜水機能、防水機能、キャタピラをつけて潜水と海底走行が可能なようにしてしまえ!!」
またある日にはーー
「総統!!動かすのに動力が足りません!!」
「よし、原子力機関を搭載してカバーするのだ!!」
「そ、そんなこと「やれます!!」
「あ、明石いいいいい!?」
資材不足の影響は酷くなっていった。
ある日のことーー
「提督~~?おさわりは禁止されて、あれ?私の槍は?」
「ああ龍田、それなら資材にするってっ解体されたよ」
「・・・え?」
またまたある日のこと
「叢雲、待ちに待った酸素魚雷だぞ!!」
「これでもっと強くなるのね・・・あれ?ないわよ?」
「え?そんなはずは・・・」
「ああ、それならそれも資材にするって解体されたって話だぞ」
「・・・え?」
それまたある日のこと
「かえせ~~!!俺のパソコン返せ~~!!」
「離すのです!!キーボードクラッシャー!!これは大切な資源なのです!!」
「いや、ゲームさせてくれよ~~!!」
「そんなこと言ってどうせ最後は壊すのだからよこすのです!!ちゃんと有効活用してやるから感謝するのです!!」
「ちくしょ~~!!!タピオカパン!!!」
こうして、幾多もの困難を乗り越えて武蔵姫級改造計画は進行していった。