総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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13話 小笠原の決戦~り陸奥たかよ永遠に~

 数日後、小笠原諸島へ向かって海を進んでいる艦隊があった。

 その艦隊は一見空母や戦艦を含めた普通の艦隊に見えるだろう。が、一つだけおかしいところがあった。

 

 カタツムリのような体につぶらな瞳と戦艦陸奥の髪型をした謎の生物。

 通称、り陸奥たかが多数の艦娘達の中に混じって敵主力の待つ小笠原諸島に向かって進んでいた。

 

 ゲルマニア鎮守府の作戦指揮所は沈黙に包まれていた。

 ヒトラーと大淀をはじめ、鎮守府の主要なメンバーが指揮所に集まっている。

 今回の作戦は敵の主力を攻撃して全滅させ、鎮守府近海を確保するというクラウゼヴィッツ作戦最後の作戦にして最も重要な作戦だ。

 「り陸奥たか出したのは正解だったんですかね?」

 不安そうにクレープスがヒトラーに言った。

 「・・・ボーキ不足で加賀をはじめとする航空戦力に制限があるのだ。り陸奥たかで戦力を補うしかあるまい。一応戦艦ではあるのだからな」

 ヒトラーは言った。

 フェーゲラインも頷きながら「どっかのちょび髭が開発と出撃にボーキ使いすぎてボーキサイト不足なったんだろ?しかもできた装備はみんなショボかったそうじゃないか。総統運なさすぎワロタww」

 「KO☆RO☆SU」

 「はい死んだ!」

 突如、ヒトラー達の背後でサブマシンガンの銃声とフェーゲラインの悲鳴が響いた。

 ピロリーンと、どこからか音がする。

 「あれ?今、デイリー任務達成の音が聞こえたような気がしたんですが・・・」

 「気のせいだろ。フェーゲラインは処刑するものなんだよ」

 「アンタら酷いな!」

 大淀が無線機を手にしながらヒトラー達にツッコむ。

 カイテルが皆に言った。

 「まぁ、とにかくなんとしてもこの作戦を成功させて、そして摩耶の中破姿を、見ます!」

 「おぉーー!!」

 「お前ら少しは自重しろ!」

 ヒトラーがカイテル達にツッコむ。

 しかしヨードルも反論する。

 「お前に言われたかねぇ、ハゲ!」

 「鏡見てから言えよ!!」

 ちなみにヒトラーの家系は遺伝的には年を追うごとに薄毛になっていくタイプだ。

 ヒトラーの隣でフェーゲラインの声がした。

 「そうそう、一番自重してないやつに言われてもなww」

 「うおっ!?」

 ヒトラー達が驚く。そりゃそうだ。さっき処刑したばかりで死んでいないとはいえ回復には一日ぐらいかかるはずだが、ものの数分で復活したからだ。

 「お前いつ復活したんだよ!ダサいし!」

 ブルクドルフがツッコんだ。

 フェーゲラインが余裕の表情で言った。

 「いやぁ、青葉が高速修復材くれたんだよ」

 見ればフェーゲラインの隣には重巡の青葉が立っている。彼女は鎮守府の防衛用に残ったのだ。

 「いやぁ、青葉見ちゃいま「二人ともコロス☆」

 青葉が言い終わらないうちにヒトラーがそう言うと、妖精親衛隊の隊員たちがMP40を青葉とフェーゲラインに照準し連射した。

 「はい死んだ!」

 「なんで青葉もおおおおおおおお!?」

 悲鳴を上げて二人は倒れた。

 「なんでや!青葉関係ないやろ!」

 ヨードルがツッコんだ。

 「青葉め、勝手に資材を使いやがったからだよ。それにフェーゲ処刑はお約束なんだ。とにかく私は!この戦いに勝利して!そしておっぱいぷるーんぷるん!!するんだ!見てろ深海棲艦め!」

 ヒトラーの様子を見て、大淀はあんな司令官でよくここまで来たものだと思いながら、胃が痛くなるのを感じた。

 

 数時間後、加賀を旗艦とした艦隊は小笠原諸島の敵主力艦隊に近づきづつあった。

 ここまで進む間に、艦隊は空母ヲ級の戦闘機部隊の猛攻をくらった。

 艦隊の航空戦力はボーキサイト不足のために、限られている。そこでヒトラーと彼女たちは次のような戦法をとることにした。

 主力をたたくのは戦艦を中心として、空母は防空に徹することにしたのだ。

 そして敵主力が艦砲の射程に入ったときに戦艦の射撃で敵をせん滅することにした。

 

 そして彼女たちは敵主力艦隊をあと少しで目前としていた。

 偵察機からの情報が艦隊に届けられる。

 「空母ヲ級が3隻、うち一隻はエリート、戦艦ル級が3隻・・・」

 山城の報告に加賀は考え込んだ。

 「敵の航空戦力はまだある程度残っているはず。対して私と隼鷹と瑞鳳の航空戦力はもうそれほど残っていない・・・でもさっき敵の航空機攻撃が来たからまた敵空母が攻撃を仕掛けてくるまで余裕が残っているはず」

 加賀は顔を上げた。

 「今ある航空機をすべて発艦させて空母を優先に敵艦隊を攻撃しましょう。今がチャンスのはず」

 もちろんすべてを発艦させれば艦隊の防空能力は著しく下がることになる。だからこれは一種の賭けともいえるだろう。だが、戦争には思い切りの良さも必要だ。

 次々とゼロ戦や九七式艦攻、九九式艦爆が発艦していく。

 しばらくした後、加賀達艦隊ははるか遠くの洋上で空中に黒い弾幕やソラニンぼる煙を確認した。敵艦が攻撃を受けたり、激しい対空砲火を行っているのだ。

 「やりました」

 目を閉じ戦闘機部隊の指揮、操縦を行っていた加賀が言った。

 「空母ヲ級一隻を大破、一隻を中破・・・敵艦隊の航空戦力は大きく減少した」

 空母は中破以上に追い込めば基本、航空機を使えない。それに夜戦になると、まったく攻撃が行えなくなる。脅威ではなくなり、的になるのだ。

 やがて、艦隊と敵艦隊のお互いの戦艦の主砲がそれぞれ射程圏内にはいった。

 動けなくなった空母は格好の的だ。

 観測機からの情報もあり山城たち戦艦の正確な射撃で山積の空母ヲ級の周りに無数の水柱が立ち水柱が消えたころにはヲ級の姿も消えていた。

 が、同時に風切り音がしたかと思うと、加賀と隼鷹の周りに水柱が立つ。戦艦ル級の砲撃が着弾したのだ。

 服がはだけ、たちまち中破に追い込まれる。

 「ああ~、こんな格好いやだぁ~」

 「・・・頭にきました」

 山城たちも負けじと砲撃するが、煙で遮られなかなか当たらず、さらに敵の砲撃が加賀に集中する。

 「このままじゃ・・・」

 そのとき、何かが加賀の前を遮った。

 り陸奥たかであった。り陸奥たかにル級の砲弾が着弾する。

 「盾に・・・!」 

 加賀が目を見開くと、り陸奥たかはそのまま砲撃を行いながら三隻のル級に向かって突進していく。

 敵もり陸奥たかに攻撃を集中し始める。

 次々と被弾し傷つくり陸奥たか。

 「待って、このままじゃ・・・」

 しかし懸念をよそにり陸奥たかは敵艦隊に突っ込んでいく。敵もなかなか沈まないり陸奥たかに業を煮やしているようだ。

 

 そして敵艦隊を目前をした次の瞬間、り陸奥たかは背中の第三砲塔を中心に大爆発を起こした。

 

 その爆発は大きいもので、爆炎と爆風は周りのル級全員を襲い、爆風は加賀達のところまで届いた。

 煙が晴れてくると、そこにル級の姿とり陸奥たかの姿はなかった。

 「え・・・」

 しばらく彼女たちは理解をするのに時間を要した。

 まとめるとこういうことだった。

 

 り陸奥たか、敵艦隊に突っ込む。

 り陸奥たか、敵艦隊を目前にする。

 り陸奥たか、敵艦隊を巻き込んで大爆発を起こす。

 り陸奥たか、敵艦隊を全滅させる。特攻で。

 

 しばらくの沈黙ののち、艦娘達及びゲルマニア鎮守府のメンバーは叫んだ。

 「り陸奥たかあああああああああ!!」

 

 そして煙が晴れた時、その中に人影を確認した。

 鎮守府の作戦指揮所でヒトラーは呟く。

 「もしや・・・」

 予想は当たった。

 現れたのはミニスカートに露出の高い服、艤装を模したカチューシャを付けた茶髪のボブカットの美少女だった。

 クレープスがヒトラーに言った。

 「総統、これはもしや」

 ヒトラーは頷いた。

 「やったぞ、り陸奥たかが戦艦陸奥に、元の姿に戻ったああああああああ!」

 海上に浮かびながら彼女は艦娘達に自己紹介した。

 「長門型戦艦二番艦の陸奥よ。よろしくね。あまり火遊びはしないでね。お願いよ?」

 

 とにもかくも、クラウゼヴィッツ作戦は成功し、こうして幕を閉じた。

 

 

 そのころ、南方の、とある島では一人の男が砂浜に打ち上げれらていた。

 「こ・・・ここはいったい・・・私はなぜこんなことに・・・?」

 ドイツ帝国海軍元帥、カール・デーニッツ。彼は気づけばドイツ帝国海軍の制服を着て砂浜に打ち上げられていた。

 「おーい!誰かいないか!誰か!」

 デーニッツは立ち上がって周りを見渡しながら叫んだが、何の反応も帰ってこなかった。

 自分のほかに打ち上げられた者はいないようだ。彼は島を散策することにした。

 そして、散策している間に島の岩礁に何か巨大なものがあるのを確認した。

 その巨大な物体に近づいて、彼は絶句した。

 「なぜだ・・・なぜこんなものがここに!?」

 

 岩礁に打ち上げられていたものの正体は巨大な空母だった。ところどころペンキや装甲、飛行甲板がはがれているが確かに巨大な空母がそこにあった。一目でわかるほどに。何より特徴的だったのは・・・

 「日本海軍か?」

 艦首には日本海軍の軍艦であることをしめす、金色の菊花紋章がついていた。  

 「いったい・・・何がどうなっているんだ・・・?」

 ドイツ帝国海軍元帥カール・デーニッツはしばらくの間そこに立ち尽くすしかなかった。




フェーゲラインは処刑するもの。以上。
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