「総統、これはいったい?」とゲッベルスはヒトラーに尋ねた。
母校に帰還した艦娘達を迎え入れ、ヒトラー達が総統執務室に戻った時そこには犬のブロンディとヒトラーの机の上に乗っかっている何人もの妖精がいた。
よく見るとその妖精たちは皆武装親衛隊の格好をして小銃やサブマシンガンを抱えている。
「見ての通りだよ、ゲッベルス君。私が妖精達で新たに親衛隊を作ったのだ」
「なぜ、その必要が?」
「私の身辺警護、鎮守府や艦娘達そのものの警護、陸上戦になったとき・・・そういう事態を考えたら、新たに多数の人員が必要になるがそれをそろえる余裕はないのでね。妖精たちは沢山いるわけだから、代わりに務めさせようと思ったのだ」
ヒトラーは笑いながら言った。
「それに、親衛隊がいたほうが我々らしいと思わんかね?」
ボルマンが頷く。「言われてみればそうですな。後はスコルツェニーやヒムラーがいれば完璧ですな」
「ヒムラーはいかん。あやつは最後に私を裏切りおった」
そう言いながらヒトラーは椅子に座り、ブロンディや妖精たちと頭を撫でながら、戯れ始めた。その様子は今日の勝負が大勝利だったからであろう、非常に上機嫌だった。
無論、部下たちも大勝利で上機嫌だ。
この調子でいけば、小笠原攻略もそう難しくはあるまい・・・と皆が同じようなことを考えていると、執務室のドアが開き大淀が入ってきた。
何事かとヒトラー達が大淀の顔を見る。
「総統、また砂浜に人が倒れていました。男性が二名です」
「今はどうしているんだ?」
「二人とも保健室に・・・」
ヒトラー達は、夜中であったがすぐに保健室に向かった。
保健室のベッドに横たわっていたのは親衛隊少将ヴィルヘルム・モーンケと親衛隊中将だった。
ゆっくりと二人の目が開けられ、体を起こす。
二人は周りを見渡し、驚愕した。
ヒトラー、ゲッベルス、ボルマン・・・この世にはいないはずの人間が目の前にいたからだ。
「これは・・・」
戸惑うフェーゲラインにヒトラーがとった行動はこれだった。
「KO☆RO☆SU」
次の瞬間、ヒトラーの隣を待っていた親衛隊の妖精たちがMP40をフェーゲラインに向けて連射した。
「はい死んだ!!」
フェーゲラインは右手を挙げながら、銃弾を撃ち込まれまたベッドに倒れこんだ。
「おいいいいいいい!?そうとおおおおおおおお!!??何殺してんだああああああ!!??」
思わず大淀が叫んだ。
ヒトラーは顔色を何一つ変えず、「いやだってあいつヒムラーと一緒に裏切ったし。裏切り者には死を、だよ」
「いや、ここ第三帝国じゃないんですよ!どうすんだよ、あんたら殺人犯になっちゃうよ!」
ブルクドルフもツッコむ。
「安心したまえ、撃ち込んだのは訓練用の弾丸だ、死にはしない・・・たぶん」
「いや、たぶんじゃますます不安なんだが・・・」
「復活したZE☆」
周りのパニックをよそに死んだはずのフェーゲラインがまたベッドから起き上がった。
「ウオッ!?」
復活した二人との再会はこうして騒がしいものだった。
とにかく、その後ヒトラー達の説得により、親衛隊少将ヴィルヘルム・モーンケと親衛隊中将フェーゲラインが新たに鎮守府に着任することになった。
それからしばらくの間、加賀達の活躍により、小笠原諸島の的艦隊は徐々に損耗、弱体化していき残すは主力のみとなった。
しかし、損耗があったのは、ゲルマニア鎮守府も同じだった。
敵の潜水艦や戦艦、軽空母などが偵察時の予想よりも多く、また空母ヲ級を含む敵主力艦隊の猛攻によりゲルマニア鎮守府は弾薬や燃料等の資源を大量に消費することになり、その不足に悩むことになった。何より一番不足したのは、ボーキサイトだった。
「資源の不足が著しいです」
多くの部下、艦娘達が集まる総統執務室でクレープスはヒトラーに言った。
「度重なる出撃により特にボーキサイトの不足が激しくなっています。ボルマンと大淀が大本営と掛け合っていますが、すぐには芳しい結果は出ないでしょう」
ヒトラーが言った。「確かにボーキサイトは大量消費しているがこんなに激しいものか?」
ブルクドルフはクレープスをちらりと見た。
クレープスが恐る恐る言う。
「総統、ボーキサイトは・・・」
クレープスがすべて言い終える前に代わりにヨードルが説明した。
「ボーキサイトは総統の度重なる航空機開発と正規空母加賀の大量消費で消えました。ちょび髭、お前がよく分かっていることだろ」
ヒトラーはしばらくじっとしていたが、やがて手をプルプルと震わせながら、かけていた眼鏡をはずしていった。
「・・・空母の魅力がわからんやつ残れ、アンポンタン」
その言葉に艦娘達が執務室がから次々と出ていく。残ったのは、クレープスとブルクドルフ、ボルマン、ゲッベルス、ヨードルにカイテル。
しばらくの沈黙のうち、ヒトラーは叫んだ。
「・・・んなこた分かってんだよ!!」
その怒鳴り声は執務室の外にいる艦娘達にも響いた。
「たしかにボーキが消えることは分かっていたが!それ分かってても使うぐらい空母と戦艦は強いんだよ!!それがわからんやつは大嫌いだ!!」
ヒトラーが立ち上がる。
「ボーキサイトを丸ごと消しても割に合うどころかおつりがたっぷり来るほど強いんだ空母は、それがわからんのか?」
ブルクドルフはそれに反論した。
「いや、それだけじゃないだろ加賀さんの中破姿見たいと言ってただろ!」
「ちょまっ!?大っ嫌いだ!!そんなわけないだろバーカ!!」
「無事に帰還したら、舌打ちして中破したら万歳してたしな!」
「私はそんな変態ではない!開発がうまくいかないんだよ!!」
そういってヒトラーは持っていた鉛筆を机にたたきつけた。
「畜生めぇ!!」
ヒトラーの弁解は続く。
「空母と戦艦はな、まず火力がものすごいのだ!航空機の大爆撃や雷撃、砲撃で一撃で艦隊を壊滅に追い込める!け、けっして胸や顔にウオッ!?となるわけじゃない!!それにいい装備を開発しようとしても出てくる装備はメッサーシュミットやスツーカ、烈風ではなくゼロ戦ばかり、とにかくボーキサイトが足らんかった~~あいつなら今頃、妖精たちを粛清している、そうスターリンなら!」
ヒトラーははぁはぁと息切れしながら座り、しかししゃべり続ける。
「空母や航空機開発にばかり資材を回すと・・・ボーキサイトが不足してまともに戦うことができないのは分かっていた・・・しかしどうしてもやめられんのだ!あの性能、あの大火力・・・活用しないわけにはいかない!そして何よりも魅力は!!目に刺さるような!おっぱいぷるーんぷるん!!」
部下たちがようやく本音をさらけ出したな、という顔をする。
「加賀さんはほんと美人で何でもできて巨乳で、本当にすばらしい!どっかのロリコン宣伝相は貧乳はステータスと言っているがな、ああいう巨乳娘だって希少価値高いんだよ、そうだろ柴田さん!!」
その言葉にクレープスは「だから柴田さんて誰なのよ」ブルクドルフは「俺が知りたい」とひそひそ話す。
執務室の外でヒトラーの話を聞いていた大淀は隣で呆然としている加賀と泣いている潮に「加賀さん、潮さん、ここから逃げてもいいんですよ・・・ねぇ、泣かないで・・・」と言った。
ヒトラーはうなだれながら言った・・・
「まぁ、とにかくまとめると・・・空母と戦艦と航空機は強すぎるもんだから使いすぎて資源が枯渇しているということだ・・・一応私にも責任はある」
そしてヒトラーは部下たちを見た。
「まとめるとこの資源不足のままでは敵主力をたたけず作戦は失敗に終わる、と言いたいのだろう?とりあえず燃料と弾薬はまだ残っている。しばらく空母の出撃は控えて戦艦中心でいこう。みんなもいい案があったら考えてくれ」
そしてヒトラーはまたうつむいた。
しばらくの沈黙が執務室に流れたのち、ヨードルが言った。
「り陸奥たか使えないの?」
ヒトラーは顔を向けた。
「あの化け物使えってか?」
またも執務室内はおろか艦娘達にも沈黙が流れた。
「あの謎すぎる生物・・・使って大丈夫なのか?」
こうして(不毛な)議論が進んでいる間にも、時間は進み、決戦の時が近づこうとしていた。
資源のやりくり、特にボーキサイトの量にはいつも悩まされる。
いつも読んでくれてありがとうございます。
コメント欄を見ると、ルーデルやドイツ艦娘の登場を期待する声がありますが、それについては現在検討中です。出すとしたら後半・・・結構先になると思う。何しろルーデルなんかは存在自体がギャグなほどチートだからな・・・。
そのうち、スコルツェニーやヒムラーも出していきたいと思います。
しっかりと頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします。