総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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 今回はまじめな話です。ネタはありません。


10話 初めての空母~侵攻開始~

 色々と騒がしい、どうでもいい論争が終わった直後、ヒトラー達の下に新たな来客が来た。

 頭痛薬を飲み終えたばかりの大淀が言った。

 「総統、新しい艦娘が着任してきました」

 ボルマンが腕時計を見た。

 「もう時間です。例の正規空母が来たのでしょう」

 ヒトラーは部下に新しい来客を迎えるよう命じた。

 

 正規空母、加賀がゲルマニア鎮守府の中に入ると、そこには小太りの男と、セーラー服を着たメガネの少女がいた。

 「・・・あなたが提督なの?」

 男は首を振りながら、「いや、私達は総統閣下の秘書だ。私の名前はマルティン・ボルマン、こちらが軽巡の大淀。君のほうこそ、新しくここに着任した?」

 加賀は頷いた。

 「では、総統はあそこの総統執務室にいらっしゃるから、そこへ案内しよう」

 そういってボルマンは執務室に向かって歩き出した。

 加賀と大淀も続く。

 「ちょっといいかしら」

 加賀は呼びかけた。

 「さっきから、提督ではなく総統と呼んでいるけれど何か訳が?」

 ボルマンの代わりに大淀が答えた。

 「総統がそう呼べと言っているんです」

 「・・・どうして?」

 「・・・見ればわかります」

 そう話しているうちに総統執務室と札のある部屋の前に着いた。

 ボルマンが言った。

 「まず、私が総統をお呼びする。許可をもらいそれから、総統に会ったらまず右手を挙げて『ハイル総統』とあいさつしなさい」

 そういって彼はドアをコンコンと叩いて開けた。

 「総統閣下、新しく着任した艦娘です」

 ボルマンが二人を見た。

 加賀は中へ入り、そして驚いた。

 そこには男が一人、たぶん提督だろうがその姿は七三分けの髪型に何より印象的なのはちょび髭の姿の男、アドルフ・ヒトラーそっくりの男がいた。

 しばらく言葉を失ったが、言われたことを思い出し右手を上げ「ハイル総統」と口にした。

 男がこちらを見つめる。

 立ち上がりこちらに歩み寄ってきた。

 「よく来てくれた、お嬢さん。君の名前をお聞きしたい」

 「正規空母の加賀です。・・・あなたが私の提督なの?」

 男は笑った。

 「そうだ。アドルフ・ヒトラー。言っておくがこれが本名だ」

 「・・・冗談でしょう?」

 アドルフ・ヒトラー。かつてヨーロッパを地獄に陥れた独裁者。そしてすでに故人のはず。

 それが今自分の目の前にいる。しかし常識的に考えて、彼が本物ということはありえないはずだ。となると可能性として挙げられるのは何らかの理由があって、別人がそう名乗ってなりきっていると考えたほうが妥当だろう。

 だが・・・目の前の男はそっくりであるばかりか、どういうわけか何かオーラを感じた。まるで人を引き込むような、得体の知れないエネルギーを感じた。

 どういうわけか、背中がぞっとした。

 彼女が気づいていないだけで、彼は本物なのだ。正真正銘、本物のアドルフ・ヒトラーなのだ。

 「緊張しなくて言い。君の考えることはわかる」

 ヒトラーは笑いながら言った。

 「私は死んだことになっているからね。私が『アドルフ・ヒトラー』の真似をしていると思われても仕方がない。だがこれは事実だ。そしてここでは私はこのゲルマニア鎮守府の司令官で、君は私の部下だ。これもまた事実。だからは君は私の命令に従えばよい」

 確かにそうだ。ここでは自分はあくまで部下だ。

 そこに踏み込んでいく理由もない。

 とはいえ、加賀には彼に対する不信感が芽生えてきた。

 しかし自分は一応軍人だ。余計なところに踏み込むべきではない。

 そして彼女はまず彼に第一に報告すべきことがあった。

 「提と・・・総統、報告が」

 「?」

 「ここに入るとき、門に捨て犬がいたのだけれど。どうすれば?」

 「・・・どんな犬だった?」

 「シェパードのメス・・・捨て犬にしては妙ね」

 ヒトラーはシェパードという言葉に思いあたりがあった

 もしや・・・

 

 ヒトラーが外に出ると、そこにはダンボールに入った大きい犬がいた。

 黒い体毛の立派な体躯をしたシェパード。

 ヒトラーは見覚えがあった。

 「ブロンディ・・・」

 かつて、ヒトラーが総統地下壕で飼っていた犬。そして最後は青酸カリの効用を試すため、毒殺した。

 ブロンディがこちらを見るとすぐにヒトラーの下に駆け寄って彼の周りを歩いたり手をなめたりとなついてきた。

 「すまんかった・・・」

 そういってヒトラーはブロンディの頭をなでた。

 そして大淀に「君、この鎮守府で飼うことにしよう」

 そのころ、工廠では建造のコンテナの前でクレープスとブルクドルフが固唾を呑んで様子を見守っていた。

 「頼むぜ・・・変なのでないでくれよ・・・」

 前のり陸奥たか事件を思い出しながらクレープスは時計を見た。

 そして・・・

 「商船改装空母、隼鷹でーすっ!ひゃっはぁー!」

 巫女さんみたいな白い制服に赤いスカート、紫色の長髪でかなりノリのよさそうな、ポジティブそうな少女と

 「扶桑型戦艦姉妹、妹のほう、山城です。・・・あの、扶桑姉さま見かけませんでした?」と、黒髪のボブカットに巫女さん風の着物、赤いミニスカートのなんか暗そうな対照的な少女が現れた。

 「・・・大きいな・・・」

 「総統が見たら絶対言うな・・・」

 とクレープスとブルクドルフはひそひそ話した。

 とにかく、戦力は確実に増強され整いつつあった。

 こうして、空母二人と初めての戦艦が一人、そして犬一匹が新たな仲間に加わった。

 

 数日後、加賀、隼鷹、山城、青葉に摩耶、那智、那珂と涼風と潮と叢雲、電の十人はゲルマニア鎮守府から出撃して、小笠原沖に向かって航行していた。

 「敵の前衛部隊を撃破せよ」

 それがヒトラーの出した命令だった。

 これまでの偵察を繰り返した結果、敵の構成、配置がある程度判明してきた。

 まず主力である戦艦と空母、その護衛艦隊がが小笠原諸島にいる。

 そこから、その周りに軽空母や戦艦を配置して小笠原への進路を阻んでいる。

 さらにその道のりまでには潜水艦や駆逐艦、重巡が多数存在し夜戦の際にはかなり厄介になっている。

 実際、輸送船やその他の船舶は航空攻撃に加え、これらの夜間の襲撃によってかなりの被害をこうむっていた。さらには陸地への航空機などによる攻撃も小数ながら確認されてきている。もはや無視はできない。

 ヒトラーたちゲルマニア鎮守府の面々はついに本格的な侵攻に打って出ることを決断した。

 

 クラウゼヴィッツ作戦の幕がようやく開かれた。

 主役であるヒトラーと艦娘達が壇上に立つときがやってきた。

 役者は壇上に立つと幕が降りるそのときまで実力を出し続け観客を引き寄せ続けなければならない。たとえ何があろうともだ。

 彼ら彼女たちにそれだけの力があるだろうか?




 艦これを始めたきっかけが加賀さんだった。
 たぶん加賀さんがいなければ艦これやることも、このss書くこともなかったと思う。
 毎回読んでくれてありがとうございます。
 感想、ご意見お待ちしています。

 追記
 前々から予告していた「帰ってきたヒトラー」のラブライブverのss始めました。
 題名は「ラブライブ!~ER IST WIEDER DA~」です。そちらのほうもよろしくお願いします。
 

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