魔法少女リリカルなのは ~その拳で護る者~   作:不知火 丙

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本編 第十二話

― 高町なのは ―

 

 私は空から地面に降りた。

 着ていた服は、聖祥の制服に似た服になっていて、手には杖の様なものを持っていた。

 亜夜ちゃんはこっちを見て目をキラキラさせていて、一樹お兄ちゃんは手を顎に当てて何かを考えているようだった。

 

「え? え~~~! なに!? 何なのこれ!?」

 

 自分の姿を見ても何が起こったのか全然わからなかった。

 そんなとき、ジュエルシードの異相体って言われた怪物みたいのがコッチに攻撃 してきた。踏みつぶそうとして落下してくるけど、私はとっさに後ろにジャンプすると空に浮かび上がった。

 

「え、えええっーーーーーー!?!?」

 

 驚いているとレイジングハートが聞いてくる。

 

『魔法についての知識は?』

 

「全然! まったく、これっぽちもありません!」

 

『では、全て教えます。私の指示通りに。』

 

「はい!」

 

 今度は怪物が身体の一部を槍のように伸ばしてきた。

 

ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン!

 

 もの凄い勢いで迫ってくる。私は地面をすべるように移動する。

 

ドン! ドカン! ズガァーン!

 

 槍の様な攻撃が壁に、地面に、家に当たりもの凄い音を立てる。でもそれで攻撃は終わってなかった。怪物の攻撃はそこから鞭のようにしなり、こっちを追いかけてくる。今度は空に飛びその攻撃をかいくぐってかわしていると攻撃がやんだ。

 土煙でこっちを見失ったみたいだった、怪物を見るとあたりを見渡し私を探している。

 すると、一樹お兄ちゃんと亜夜ちゃんとあの子に気付いたみたいでそっちを向くと凄い速さで向かっていく。

 危ない! そう思ったけどこの距離じゃ間に合わない! そして轟音。

 

ズガァーーーン!!!

 

 土煙が上がる。私はとっさに叫ぶ。

 

「亜夜ちゃん! 一樹お兄ちゃん!」

 

「呼んだ?」

 

「へ?」

 

 私の声に後ろから声が聞こえてきた。

 そこにはフェレットを頭に置き、亜夜ちゃんを小脇に抱えた一樹お兄ちゃんがいた。私が驚いてまじまじと見ていると、

 

「どしたんだ、なのちゃん? 鳩がショットガンくらったような顔して?」

 

「それ、跡形も残らないの……」

 

「おっといかん、豆鉄砲だった」

 

 いかんいかんと言いながら一樹お兄ちゃんは頬をかく。そ、それよりも!

 

「か、一樹お兄ちゃん! 何で空飛べるの!?」

 

「え!?」

 

 そう言って私を見て、左右を見て、下を見ると、

 

「ああぁぁぁぁぁーーー!!!!!!」

 

 その叫びは、まるで自分が空を飛んでいるのにやっと気がついた様な感じだった。

 その時、上に浮かびあがろうと平泳ぎの様に何度か宙を泳いだ後落ちて行った。

 落ちる前、ご丁寧に亜夜ちゃんとフェレットを私に預けて。

 

「お兄ちゃん!?」

 

 亜夜ちゃんの声でハッとする。

 この高さから落ちたらひとたまりもない。私は慌てて後を追う。地面がみるみる近づいていく。間に合わない!

 

ダン!

 

 音が聞こえると同時に土煙が上がる。私は亜夜ちゃんをおろして一緒に落下した場所に駆けつける。

 

『お兄ちゃん(一樹お兄ちゃん)!!』

 

「呼んだ?」

 

 またしても呑気な声と共に土煙の中から一樹お兄ちゃんが出てくる。

 私たち二人は『だあ!』と言いながらずっこける。し、心配してそんしたの。亜夜ちゃんも頬をプクーと膨らませている。

 

「ちょっと、お兄ちゃんこんな時までふざけないでよ!!」

 

「いや~、悪い悪い。こうなんか、なのちゃんから期待の籠った目をs「私そんな目してないよ!?」なん……だと!?」

 

 心底驚いた様に言われても。

 

「だってさっき「何で飛べるの!?」って振ってきたじゃん!」

 

「純粋に驚いただけだよ!!」

 

「いきなり空飛んだら誰だって驚くに決まってるじゃない!」

 

 そう私と亜夜ちゃんは抗議する。そう言うと一樹お兄ちゃんはちょっと「しゅん」となり肩を落としている。

 そして顔を上げると何かに気づいたように「あっ」と声を上げる。

 その声を聞いて亜夜ちゃんと振り向くと怪物が体当たりして来る最中だった!?

 

『きゃあぁぁーーーー!?』

 

 そう叫びながらとっさに杖を横にして防ぐ体制をとる。するとレイジングハートが、

 

『プロテクション』

 

 と言うと、怪物は私の前にあるバリアーに当たりそれ以上進めないみたい。

 でもそのバリアーにあたった瞬間は凄いは衝撃だった。後ろに吹き飛ばされそうなのをグッと堪える。するとレイジングハートが、

 

『マスター、イメージしてください。強力な攻撃を』

 

 そう言われとっさに左腕を突き出しイメージする。

 

『シュートバレット』

 

 レイジングハートがそう言うと、突き出した手から何かが飛び出し怪物に命中する。

 

グウオォォォォーーーーー!!!!

 

 そう叫びをあげながら三体に分裂する。私は撃ち出した反動で肩で息をする。手からは煙がたち昇っていた。

 

『良い魔力をお持ちで』

 

 レイジングハートに褒められ、怪物はさっきの一撃を受けたためかこっちを警戒している。するとあの子とレイジングハートが、

 

「あなたの魔力があればあれを止められます。レイジングハートと一緒に封印を!」

 

『封印のためには、接近による封印魔法の発動か大威力魔法が必要です』

 

 そう言ってきた。しばらくにらみ合いが続くと三体はクルッと背中を見せて逃げ出していく。

 

「あ、逃げた!」

 

 私はそのあとを急いで追うけど、

 

「速い! 追いつけない! ……あんなのが人のいる所に出たら大変な事になっちゃう! レイジングハートさっきの光遠くまで飛ばせない?」

 

 遠ざかる怪物の背中を見る。悔しくてレイジングハートを持つ手に力が籠る。それにレイジングハートが反応する。

 

『あなたがそれを望むなら』

 

 それを聞いて私は付近で一番高いビルに着地する。

 そこは逃げていく三体が良く見える恰好の場所だった。

 私は深呼吸をして息を整え集中する、すると胸の中で心臓とは別の何かが強く鼓動する。

 

ドックン

 

 そこから溢れる力をレイジングハートに送ると、レイジングハートの形が変形する。

 

『モードチェンジ、カノンモード』

 

 するとレイジングハートの先端がレイジングハートを中心とした丸い形から、槍の様な鋭い形になり、手元にトリガーが出てくる。

 

「まさか封印砲!? あの子砲撃型!?」

 

 そして更に力を送り続けるとレイジングハートが、

 

『ロックオンの瞬間トリガーを引いてください』

 

 そう言われると目に照準が映る。白い照準が三つそれぞれ怪物を追っている。

 照準はまだそろわない、焦りが出てトリガーを今にも引いてしましそうになる。まだ、まだ、

 

ピピピピピ、ピー!

 

 そろった!

 それと同時にトリガーを引き絞る、撃ち出されたのは三発。三発目を撃った瞬間反動で後ろに吹き飛んでしまった。

 どんどん怪物に近付きまず一体。それとほぼ同時に二体目。そして一番遠くにいた三体目に命中する。

 

グオォォォォォーーーー…………

 

 最後の叫びは空に消えそこに残ったのは三個の青い宝石だった。

 

― 斎藤一樹 ―

 

 …………実際その戦闘を見ると絶対に信じられないよね。

 普通は空を飛ぶのだって難しくて、いくらデバイスがインテリジェントデバイスだからってそうホイホイ空を飛べる訳でもない。現に飛べないやつだって沢山いるし、俺だって飛んで戦闘は出来るがそれだってかなり訓練したんだ。

 いやはや才能って凄いよね、いやマジで。これからホント毎日「高町道場」かね~?

 そんな事を思っているとなのちゃんの方も終わったようだ。俺は再び亜夜とユーノを小脇に抱えなのちゃんがいるビルの屋上に飛んでいく。

 

「お~す、お疲れ様~」

 

そう言ってなのちゃんに声をかける。

 

「あ、一樹お兄ちゃん」

 

 コッチに気付いて近付こうとするが、上手く力が入らないのか上手く立てないでいる。

 それを見かねた亜夜がなのちゃんに近付き手を貸す。「ありがとう」と言ってなのちゃんは亜夜の手をつかみ立ち上がる、そうすると二人でこっちに近付いてくる。

 今俺の前には三つのジュエルシードが浮かんでいる。ユーノはどこか安心しているようだった。

 

「これがジュエルシードです」

 

「綺麗な石だね」

 

 そう言ってきたのは亜夜だ。まあ、そんな可愛らしい物ではないのだが。するとユーノがなのちゃんに、

 

「レイジングハートをジュエルシードにかざしてください」

 

「こう?」

 

 首をかしげつつなのちゃんはレイジングハートをかざす。

 するとジュエルシードはレイジングハートの中に吸い込まれた。

 

『ジュエルシード、ナンバー18、20、21を回収しました。』

 

 そうレイジングハートが報告する。するとなのちゃんのバリアジャケットが解け私服に戻る。

 その手にはレイジングハートがしっかりと握られている。

 

「危ないところをありがとうございました」

 

 ユーノがそう言って頭を下げる。フェレットの状態でやると何とも変な感じだ。

 

「ま、お互いまだ自己紹介もしてないしそっから始めるか。そこのフェレットは事情説明もよろしく!」

 

 俺は全員を見渡し提案する。その提案に全員が頷く。

 

「そうだね。じゃあまず私からするの。高町なのは、聖祥大付属小学校の三年生だよ」

 

「私は、斎藤亜夜。なのちゃんと同じ学校のクラスメイトです」

 

「僕はユーノ・スクライア。信じてもらえないかも知れないけど、この世界とは別の世界から来たんだ。別の世界で遺跡の調査をしていてそこで見つけたのがさっきのジュエルシード。とても危険な物だって分かったから「管理局」保管してもらう為に船を手配したんだけど、その船が運搬中に事故にあったみたいで、それでジュエルシードが落ちた場所がこの付近だって判ったから何とか封印しようとしたんだけど……」

 

「魔力が尽きて、さっきの怪物に負けて負傷した所をなのちゃんに拾われた。そんなとこか?」

 

「う……そうです」

 

 ユーノが若干ショボーンとしている。

 

「管理局には連絡したのか?」

 

「いえ、急いでたので連絡はしていないです……」

 

「駄目じゃん。事件、事故があったらまずそれを対応してくれる所に連絡。こっちの世界じゃ常識だぞ?」

 

「……すいません」

 

 ズーン、と効果音が付いてそうな程ユーノが落ち込む。

 

「ねえねえ、お兄ちゃん」

 

「ん? 何だ?」

 

 そう言って振り向くと亜夜となのちゃんが「じー」っとこっちを見ている。

 

「お兄ちゃんまだ自己紹介してないよね?」

 

「それに、何で空を飛べるかも説明してもらってないの!」

 

 おふぅ、そうでした、それも説明しなきゃだな。流石に誤魔化せそうにないし。

ズーンと落ち込んでるユーノに対して自己紹介を始める。

 

「はじめまして、斎藤一樹だ。亜夜とは兄妹でなのちゃんとは友達だ。で、こっちが俺のデバイスでスサノオだ」

 

 俺はそう言って首に下げてるドックタグを引っ張り出す。

 

『はじめましてみなさん≪クソ野郎≫のデバイスのスサノオです。よろしくお願いします。』

 

「「「え?」」」

 

 みんなは何に驚いたんだろう?

 

「そんでもってユーノ、一応俺は「管理局」の士官学校を出てるからこれからジュエルシードの探索俺に任せてもらえるか? と、言いたいところだけど人員がたんね―からとりあえず協力ってことで良いか?」

 

 …………ちょっとした間を挟んで

 

「「「ええ~~~~~~~~~!!!」」」

 

 案の定三人とも驚いた。はぁ~これから士郎さんとかにも知らせなきゃなんないし気が重いな~。

 大丈夫かな俺? この後の事を考えるとそう思わずにはいられないのだった。

 

― クロノ・ハラオウン ―

 

 今日の仕事を終え、デスクで書類整理していると久しぶりにあいつから連絡が入った。メールが届いていてそれに気付いたエイミィが声をかけてくれた。

 

「ん? クロノ君。一樹からメールが来てるみたいだよ?」

 

「ホントか?」

 

「うん、ほらそこ、受信欄に一樹のメールが」

 

 …………ここで僕は一瞬開けるかどうか迷った。

 はっきり言って一樹が関わるとかなりの確率で碌な目にあわない。士官学校時代に嫌と言うほど巻き込まれたのだ。そう思っていたがエイミィが、

 

「じゃ、開けるよ~。え~っと何々?」

 

 ― クロノへ ― 

 

 元気ですか?

 

 楽しいですか?

 

 最高ですか?

 

 特に何もないですか?

 

「何これ?」

 

 そんな事僕が知りたい! そう思っていると、

 

「クロノ執務官、封書が届いています」

 

 そう言って一人の事務官が僕に近付いてきた。

 

「誰からだ?」

 

「え~、カズキ・サイトウと書かれています」

 

 エイミィと顔を見合わせる。とりあえず事務官から封書を受け取る。

 しかし何と言うタイミングで届くんだ、封書を確かめているとちょっとした厚みがある中には数枚の紙が入っているようだった。そしてもう一つの事に気がつく。

 

「消印がない……」

 

 そう呟く。エイミィも「え?」と言う顔になっている。

 僕は慎重に封書を開け中の紙を取り出す。中にはA4の大きさの紙が三枚程入っていた。一枚目は普通の手紙だった。

 なんてことは無い、最近あった事が書かれている。そしてもう一枚目を見てみる。それを読むと僕は頭を抱える。

 その様子を見てエイミィが声をかけてきた。

 

「どしたのクロノ君? また何か厄介事?」

 

「ああ、それも結構事が大きくなるかも知れない。エイミィ、僕はこの事を艦長に報告してくる」

 

「分かったよ。後は私でも出来そうだからやっとくよ」

 

「ごめん、助かる」

 

「良いって、後でちゃんと埋め合わせしてもらうから」

 

「分かったよ」

 

 そう言って僕は艦長室に向かうのだった。一樹から届いた「報告書」を持って。その報告書にはこう書かれていた。

 

― 事故発生報告書 ―

 

1発生時間(現地時間)

 新暦65年4月5日 20時35分頃

 

2発生場所

 第97管理外世界 地球 日本 海鳴市

 

3当事者

 漂泊民族 スクライア一族

 ユーノ・スクライア

 

4事故内容

 上記当事者が遺跡から発見した「ジュエルシード」が管理局へ運搬途中事故に遭遇し上記場所に散らばったもの。当事者が回収している所に本職が居合わせ事情聴取したところ発覚したもの。なお「ジュエルシード」について判明している事は以下の通りである。

 

5ジュエルシードについて

 スクライア一族が遺跡において発見したもの。古代に製造されたエネルギー結晶体、ロストロギアと判明。個数は全部で21個と判明している。暴走した際次元震が発生する可能性があり。早急な封印処理が必要。暴走時、そのまま「暴走体」となるか周辺の動植物を取り込む「暴走体」のいずれかになる。動植物をとりこんだ際その特性を引き継ぐため非常に厄介とになる。

 

6その他

 現在、現地協力者と共に、封印処理を実行中。しかし上記の特性から早急の処理が必要なため、増援を要求するものである。

 

                                以上 斎藤一樹

 

― 斎藤一樹 ―

 

 俺と亜夜となのちゃんはユーノを連れて高町家に戻っている。今どう説明したら良いか考えてるけどいかんせん中々思い浮かばない。

 まあ、ありのままを話して、御三方(士郎さん、恭也さん、美由希さん)の協力を取り付けられれば戦闘になってもある程度余裕が生まれるだろう、幸いさっきの戦闘は全部スサノオが録画済みだし、これとセットでユーノがしゃべれば大丈夫だろう。

 原作ブレイクになるが、この時点ではっきりさせといたほうが良いんじゃないかと考えている。気持ちに余裕があるというのは思いのほか重要だと俺は思っている。コソコソするより堂々と行動出来た方が良いしな。

 そう考えていると間もなく高町家に着くと言う所でなのちゃんが口を開く。

 

「ねえ、一樹お兄ちゃん。どうしてもお父さんたちに話さないと駄目?」

 

「駄目って事は無いけど、何で?」

 

「何でって言われても……」

 

「士郎さん達に心配させたくない?」

 

「……うん」

 

「じゃあ、大丈夫だ」

 

「え? なんで!?」

 

「その理由はたった一つ、シンプルな答えだ。テメーは俺を……じゃなかった。話さない方が心配だからだよ」

 

「それはそうだけど、でもとっても危ないんだよ!?」

 

「いやいや、それは俺のセリフですよ?」

 

 この子は自分の事を棚にブン投げて何を言いやがりますか。

 

「それに、いくらなのちゃんが魔法を使えるからって実力は士郎さん達の方があると思うぞ?」

 

 まあ、空を飛ばないっていう条件は付くけど………でもそれも何とかしちゃいそうだから怖いんだよなあの戦闘民族は。

 

「そ、そうなんですか?」

 

 ユーノが驚き聞いてくる。

 

「うん。多分戦い方に次第だとは思うけど一般隊員には絶対と言っていいほど勝ち目がない気がする」

 

「その人たちは魔法は……」

 

「使えない人です。リンカーコアねーし」

 

 それを聞いて黙ってしまったユーノ。まあミッドの常識で考えたらあり得ないからな、そりゃー吃驚するだろう。

 でも実際稽古とかしてるとホントそう思うんだよね。確か「とらハ」かなんかのOVAで銃弾かわしてたし。あり得ねーっての!

 

「ね~ね~、お兄ちゃん。私にもリンカーコアだっけ?ソレあるの?」

 

「うん、亜夜もあるみたいだね」

 

「ホント! やった! 魔法使える! それならなのちゃんの事手伝える!」

 

 グッとガッツポーズする亜夜、しかし俺は、

 

「でも、デバイスがないから無理だね」

 

「なん……ですって?」

 

 ギギギ、と首を動かし聞いてくる。そんなショックだったのか。

 

「お、お兄ちゃん!」

 

「なに?」

 

「デバイス貸して!」

 

「無理」

 

「何で!?」

 

「これ、普通のデバイスじゃないし、俺専用だから他の人には使えない」

 

「え~!」

 

「まあ、その辺は何とかする予定なのでとりあえず今まで通り「高町道場」で稽古しとれ」

 

 そう言うと亜夜は「む~」とむくれながらも納得してくれた。それを聞いてなのちゃんは亜夜に聞く。

 

「亜夜ちゃんも手伝ってくれるの?」

 

「うん! みんなで探せばきっと早く見つかるよ!」

 

「で、でも……」

 

「危ないってこと? それなら大丈夫でしょ? お兄ちゃんも付いてるし。士郎さんと恭也さんもいれば百人力でしょ!」

 

 むん! と言いながら力瘤を出す真似をする。

 

「ま、とりあえず士郎さんたちも心配してるだろうから家に入ろう。詳しくはそれからだ」

 

「え? でもこっそり出てきたよ?」

 

「いやいや、絶対に気付いてるから。多分玄関あたりで待ってるぞ?」

 

「確かにその通りかも」

 

 俺と亜夜がそう答える。なのちゃんはいまいち信じられないのか「そうかな~」と首をひねっている。

 そして全員で高町家の門をくぐるとそこには恭也さんと美由希さんが立っていた。俺はなのちゃんをみて、

 

「ほらね」

 

 そう言うのだった。

 

 俺達は再び挨拶をしつつ高町家に上がる。そこには高町家全員と俺と亜夜とユーノがいる。

 初めはなのちゃんが抱いていたユーノに、みんな興味があるみたいで見ていたが、俺が出来事を話し始め、ユーノがしゃべり始めると終始無言になった。

 魔法の事、ジュエルシードの事、怪物との戦闘の事、等々それを説明して俺が録画していた映像を見せてみんな驚きを隠せなかった。

 何せ空を飛んで、ビームを撃つのだ簡単に信じられる訳がない。映像ならCG技術で作れるからそう言われた方がまだ信じられる。最終的になのちゃんがみんなの目の前で変身して納得するのだった。

 

「と、言う訳で力を貸してもらいたいのですが」

 

 と俺は士郎さんと恭也さんに聞く。

 

「う~ん、見た限りだと私と恭也だけでも何とかなりそうだが? なのはが一緒じゃないと駄目なのかい?」

 

「そうですね。ジュエルシードですがこれを封印するには魔力が必要です。それは現状俺となのちゃんしか出来ないです。そして最悪、魔力でしかダメージを与えられない可能性があるので、そうなるとなのちゃんにも参加してもらうのが現状では最良だと思うんです。そうなると士郎さんと恭也さんには囮になって貰ってなのちゃんがその隙に攻撃準備。そうするのが基本になりそうです」

 

 そう俺が提案すると士郎さんが聞いたきた。

 

「さっき言ってた管理局の動きは?」

 

「連絡はしてあるのでそのうち来ると思います。ただ直ぐに来れるかどうかは分かりません」

 

「何でだ?」

 

 恭也さんが聞いて来る。

 

「あ~、万年人手不足ってのも理由ですね。後はこれ以上に重要な案件があればそっちが優先されるでしょうし」

 

 自分で言っててなんか情けなくなってきた。

 

「管理局って言うのはどんな組織なの?」

 

 美由希さんが聞いてくる。

 

「え~っと、次元世界をまとめて管理する、警察と裁判所が一緒になった様なところで、他に各世界の文化管理とか、災害救助とかを行う場所で、他に細かい仕事は多くあるんですけどおおざっぱに言えばこんな感じですかね?」

 

「警察と裁判所が一緒になってるの? それって大丈夫なの?」

 

「良くは無いと思いますよ? 管理局が法を決め、法を適用して、法を執行してますし。権力が集中し過ぎてますから」

 

「……それは、まずいな」

 

「「え? どういう事?」」

 

 亜夜となのちゃんが聞いてくる。

 

「え~っとな、極端に言うと管理局が有罪って言えば無罪の人でも有罪になっちゃうしその逆もあり得るんだ。日本じゃそんな事ないだろ? どんなに偉い人でもその法律でちゃんと取り締まられるだろ? 管理局の場合偉い人が悪い事をしても無罪になっちゃうかもしれないんだ」

 

「何それ! 駄目じゃない!」

 

「そんなの良くないよね?」

 

 亜夜となのちゃんがそれぞれ言ってくる。そうだよな。その通りだよな。

 

「そんな組織で大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だ問題n……いえすっごく心配ですけど、連絡したのは信頼のおける人物なので大丈夫です」

 

 恭也さんの問いについネタで答えそうになるが言いなおす。

 

「その人物ってどんな人なんだい?」

 

「え~、正義感が強くて、そういう不正が許せないタイプの人間です。士官学校の時の同僚ですよ」

 

「実際にあってないから何とも言えないが、一樹君がそう言ってるのなら大丈夫だろう」

 

 ある程度納得してくれた士郎さん。これなら大丈夫そうだ。

 

「一樹、それでそのジュエルシードってのはどんな形をしているんだ?」

 

「あ、それは実際に見てもらった方が早いので見せますよ。なのちゃんジュエルシード出して」

 

「うん」

 

 そう言うとなのちゃん(桃子さんが写真撮影していたためバリアジャケット姿)レイジングハートからジュエルシードが一つ出てきてテーブルの上に置かれる。

 

「これがそうなのか?」

 

 恭也さんが手に持って近くで見る。

 

「ええ、今は封印処理してるから手に持っても大丈夫ですけど、それ以外は触れないでください。何が起こるか見当がつかないので。後は……何か注意事項あるか? ユーノ?」

 

「え~っと、ジュエルシードは願いをかなえるって言われてますけど願いが叶ったって言うのは聞いた事がないんだ。だからやっぱり見つけたらすぐに連絡してくれるのが一番だと思う。全部で21個、そのうち3個を見つけたから後18個だね。注意事項としてはそれぐらいしかないと思う」

 

「そっか、とりあえず現状はこんなもんですね。無理にとは言いませんし、なのちゃんに絶対危ない事をさせたくないと言うのであれば探索には同行させません。この件は無かったこととしてもらっても「待って!」……なのちゃん?」

 

「一樹お兄ちゃんどうしてそんなこと言うの?」

 

 なのちゃんが悲しそうな顔をして聞いてくる。

 

「……さっきも言ったように凄い危ないからだ。下手をすれば命に関わる。そんな事に関わってください何て俺は頼めない」

 

「それは私が子供だから?」

 

「それも理由の一つだ。他にもあるけどね」

 

 そう言うとなのちゃんは士郎さんと桃子さんに向き直り力強く言う。

 

「お父さん、お母さん、私ユーノ君と一樹お兄ちゃんのお手伝いしたい!」

 

「「…………」」

 

「なのは!?」

 

 士郎さんと桃子さんは黙っていて、ユーノが驚いて声を上げる。

 

「このままじゃみんなが危なくなっちゃう。亜夜ちゃんも、アリサちゃんも、すずかちゃんも、はやてちゃんもいる海鳴が危なくなっちゃう。私それを黙って見てるのなんか絶対にやだ。それに私、手伝う事が出来る力がある。レイジングハートも協力してくれるって言ってる。だからお願い、私もお手伝いしたい!!」

 

 それを聞いて士郎さんは考えているが桃子さんが、

 

「私は反対はしないわ」

 

 そう言ってくる。

 

「お母さん!」

 

 なのちゃんが嬉しそうに声を上げる。

 

「なのはが此処まで言う事なんて今まで無かった事だもの。私はなのはの好きにさせてあげたい」

 

 そう言って優しく微笑んでなのちゃんの頭をなでる。

 

「……なのは、さっきも一樹君が言ってた様にとっても危ないんだよ? それは勿論分かっているね? それでも手伝いたいのかい?」

 

「うん!」

 

「……ふう、分かった。なのはの好きにしなさい。お父さんのと恭也もいるから大丈夫だと思うけど、ちゃんと一樹君の言う事を聞くんだぞ?」

 

「ありがとう! お父さん、お母さん!!」

 

 そう言ってなのちゃんは嬉しそうに二人に抱きついた。良い家族だ、俺は改めてそう思う。

 これなら予想以上に早く終わるかも知れない。そう思っていると聞き忘れていた事があったのを思い出した。

 

「ユーノ、そう言えば怪我とか大丈夫なのか? まだ真の姿に戻ってないけど?」

 

「え? ああ、怪我とかは大丈夫、大した事ないから。姿の方は魔力がまだ戻ってないから当分はこのままだね」

 

「え? お兄ちゃん、真の姿ってどういう意味?」

 

 気になった亜夜が聞いてくる、高町家の面々も気になっている様でこっちを見ていた。

 

「あ~、言ってなかったっけ? ユーノはジュエルシードを集めて真の姿に戻ろうとしているんだ!!」

 

「「な、なんだってー!」」

 

 そう言うと驚く亜夜となのちゃん。

 

「そして、真の姿に戻ったユーノはその巨大な力で次元世界の征服を目論んでいるのだ!! そしてその目的を阻止する為に魔法の力を手に入れた一人の少女が立ちはだかる!! その少女は仲間と力を合わせてユーノを倒す事に成功する!! だがしかし! 次元魔王ユーノは死ぬ間際に不吉な言葉を残す! 「例えこの僕を倒しても第二、第三の僕が現れジュエルシードを狙うだろう!」そう言い残すとユーノは消えていくのだった。かくしてこの海鳴につかの間の平和が訪れるのだった……。即興としては割と良く出来たと思うんだけど、どうよ?」

 

「「どうよ?」じゃないよ! 僕そんな事しないよ! 次元魔王って何なんだよ!」

 

「不覚にもちょっと面白そうって思った自分が情けないわ!」

 

「だ、駄目だよユーノ君そんなことしたら」

 

「しないよ!?」

 

 なのちゃんそこ信じちゃうんだ。

 

「あれ? じゃあ、真の姿って言うのも嘘なの?」

 

「ん? 真の姿は本当です。ジュエルシードは全く関係ありませんが」

 

 美由希さんが聞いてきたので答える。

 

「今は魔力が無くなっちゃってるから戻れないけどしばらくしたら戻れます。なのははもう見てるよね?」

 

 ユーノはそう言ってなのちゃんを見るが、

 

「え? 私見てないよ ?私が拾った時はもうフェレットだったよ?」

 

「え? そうなの?」

 

「じゃあ、元も姿に戻るか。俺の魔力少し分けてやるよ」

 

 俺はそう言ってユーノに魔力を分ける。まあ、満タンにできるほど上げらんないけどね! ユーノはAランク保有なので満タンにすると俺が枯渇する。

 

「ありがとう、一樹」

 

 そう言うとユーノが光に包まれ、光が収まるとそこには民族衣装の様な服を着た少年が立っていた。

 

「あれがユーノの……本当の姿」

 

 俺がネタを呟くが誰も反応が無い。突込みが無いのは寂しいものである。

 

「「あー!! 夢でさっきのと戦ってた男の子!!」」

 

 二人がユーノを指さして叫んでいる。

 あ、そっか。二人とも見た事はあったんだ。どうやって夢に出たのかは知らないけど謝っている所を見ると何かしらやったのか?

 それとも二人が魔力を感じてその光景を無意識に見たのかは分からなかった。ペコペコ謝っているユーノをほっといて士郎さんに聞く。

 

「じゃあ、士郎さん、恭也さん、明日から探索お願いします。俺はいったん家に帰ります。亜夜はもう遅いので泊めてもらっても良いですか?」

 

「別にかまわないけど、一樹君は泊らなくて良いのかい?」

 

「ええ、この事を父さんにも言っとかないと不味いので。ちょうど家に戻っている事ですし」

 

「一馬さんも関係者なのかい?」

 

「ええ、一応管理局員です」

 

「……そうか、じゃあなのはがお世話になると伝えておいてくれるかい?」

 

「ええ、分かりました。伝えておきます」

 

 そう言って俺は玄関に向かう。それに気付いた亜夜が聞いてくる。

 

「あれ? お兄ちゃん帰っちゃうの?」

 

「ああ、この事父さんにも伝えておかないといけないしね。亜夜は今日は泊っても良いって言ってたぞ?」

 

「何でお父さんにこの事言うの?」

 

「あれ? 言ってなかったっけ? 父さん管理局員だよ?」

 

「え~! そうだったの!?」

 

「うん、そんでもって俺のデバイスは父さんの手製なんだよ」

 

「そ、そうなの!じゃあ、私も帰ってお父さんに話しする!」

 

「そうか? もう夜遅いし明日でも大丈夫だぞ?」

 

「善は急げって言うでしょ!」

 

「わ、分かった。それなら帰る準備して来い」

 

 亜夜の剣幕に押されつつ俺はそう言い、亜夜と一緒に帰る事になった。

 士郎さんに一声かけ、亜夜と一緒に帰路につく。これからジュエルシードをめぐってのひと騒動、何とか穏便に済まさないとな。

 フェイトとプレシアの事もあるし。リニスにも言っとかないとな。そう思いながら家に向かうのだった。

 

 

 

 

 


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