幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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地の底の揺り籠。

護るべき者への志の違い。

その心に問え。

何をすべきか?




第三十二話 『大地《アースクレイドル》前編』

私達がエリア解放戦を行っていた頃。

 

クロガネクルーは独自の行動を行っていた。

 

エルザム少佐らの調査で中立地帯であるアースクレイドルがAnti・DC、今まで姿を見せなかった鉄甲龍、アマルガムの同盟に占拠された事が発覚した。

 

理由はベルターヌ化現象のドサクサに紛れてアースクレイドル内の何者かが奴らを招き入れた事で起こった結果だ。

 

これは何を隠そうマシンナリーチルドレンの開発者であるフェフ博士である。

 

野放しに出来ない状況の為、部隊を再び二つに分けて行動する事となった。

 

主軸となる部隊から説明する。

 

アースクレイドル代表のソフィア博士が内部に捕らえられているのでクロガネクルーはアフリカエリアの戦線に入る事は確定。

 

第六エリアから魔族の本拠地となっている内部コアへは勇者チーム。

 

この二つの主軸となる艦に私達の部隊が割り振りされる形である。

 

戦力が多い分、二手に分かれても問題ないと結論が出た為だ。

 

大体の割り振りは決まっている様なものなので続いての説明に移ります。

 

アースクレイドルルートへはクロガネ、ハガネ、ヒリュウ改、アークエンジェル、ドミニオン。

 

内部コアルートへは箱舟、第五エリアで合流した異世界メンバー。

 

先の戦闘で合流したGGGは内部コア組に組み込まれている。

 

そして転移後にGGGと行動していたD兄弟、極東防衛に組み込まれていたスーパーロボット組はアースクレイドル組に移動した。

 

未だ飛ばされたままの残りの記憶保持者達の行方が掴めない以上、下手な行動は出来ない。

 

出来る事ならイレギュラーな事象介入が起こらない事を祈りたい。

 

 

******

 

 

内部コアルート組と別れて数時間後。

 

元第二エリアことアフリカエリアへと到着した私達。

 

アフリカ海岸でクロガネと合流し目的地であるアースクレイドルへと向かった。

 

その道中で突入前の作戦会議が行われた。

 

 

「…(やっぱり、アースクレイドル周辺の砂漠に地雷が仕掛けられているのは原作と同じか。」

 

 

アースクレイドル潜入において、エルザム少佐達の調査結果から説明が始まった。

 

アースクレイドル周辺の砂漠に無数の機雷が設置されており、アースクレイドルの周囲を鉄甲龍の戦闘メカとAnti・DCの艦隊が防衛している形である。

 

内部は恐らくマシンナリーチルドレンやアマルガムの部隊が網を張っていると推測していいだろう。

 

問題はSRXチームからリュウセイが欠けている事、マサキの不在、アクセル中尉とキョウスケ中尉もまた行方が不明のままだった。

 

RシリーズがSRXに合体出来ない、サイバスターのサイフラッシュによる敵機殲滅が不可能と言う事態である。

 

この戦い、彼らが不在のままで進めろと言う事なのだろうか?

 

結局、原作と同様にクロガネが地中潜航でアースクレイドルに侵入、残りの艦が陽動へ回る事となった。

 

不安が脳裏を過ぎようとも私達は前へ進むしかない。

 

そして作戦会議は終了し、作戦開始時刻まで各自待機となった。

 

アースクレイドル攻略に際して私はガーリオン・カスタムからガーバインへと乗り換える事となった。

 

理由は数々の戦闘で乗機のガーリオン・カスタムをボロボロに酷使した為である。

 

何度修理をしても既に機体スペックが私に追いついておらず、何度も戦闘で不具合を見せていたのもそのせいだとティアリー博士に話をされた。

 

せめてもの形見としてガーバインにストライク・アキュリスを受け継がせた。

 

このガーバイン・クリンゲで戦う。

 

念神エクリプスと機神エザフォスは話し合いの結果、私達の奥の手として温存する事になった。

 

出所が出所なので正式な運用指針が確定するまで余り姿を晒さない方がいいとの判断だ。

 

 

『ハスミ。』

「お義父さん。」

 

 

コックピットで待機していた私に通信を送るテンペスト少佐。

 

 

『ギリアムの件だが、済まなかった。』

「いえ、あの少佐の事ですから何時かはバレると思っていました。」

『そうか。』

 

 

あのパイロット技能で予知能力所持のギリアム少佐の尋問から逃げられる筈もないと思いますので。

 

元仮面総統は伊達ではないですか…ね。

 

 

「…問題は黒の英知の意志が姿を見せ始めた事です。」

『例の絶望的未来を指し示す記憶だったな?』

「はい、記憶保持者達はその意志への耐性を持っているので悪い方向には堕ちないと思いますが…」

『耐性を持たぬ者はそうではないと?』

「はい…お義父さんには元々私が念動力で精神防御壁を敷いていますのである程度の精神汚染は防げると思います。」

 

 

正直に言えば不測の事態に置いての措置だ。

 

お義父さんを巻き込んだ以上、何かの妨害があると予測した私はそれなりの防御策を敷いた。

 

いずれ戦うであろう『喜びのアドヴェント』ら御使いへの対策を兼ねている。

 

これは私が出来るせめてもの対処策だ。

 

 

『護っていると思えば、お前にはいつも守られているな。』

「お義父さん。」

『大丈夫だ、お前の思いを無駄にはしない。』

「はい。」

 

 

作戦開始時間が迫る中、会話も程々に通信を切って出撃準備に入った。

 

私はパイロットスーツから首に掛けていたペンダントを取り出した。

 

以前EFにてケイロンと交換したペンダントである。

 

本来はあの人が付けていたサークレットだったが、EFにおける旅で破損してしまった。

 

縁あって私が修復してペンダントとして作り直したもの。

 

ヴァールシャイン・リヒカイトとの最終決戦の前夜。

 

互いに生きて会おうと交換しあったのだ。

 

彼には私が持っていた形見のペンダント。

 

私は彼の破損したサークレットから創り出したペンダント。

 

何時か何処かで再会する時まで。

 

 

「来たる日までどうか待っていてください……陛下。」

 

 

あの地で巡り合ったその時、私は貴方の元へ参じましょう。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

ハガネ、ヒリュウ改、アークエンジェル、ドミニオンから各機体が出撃。

 

アースクレイドル奪還作戦が開始した。

 

 

 

「ATXチーム各機へ、他の部隊が敵を足止めしている間に我らはアースクレイドルへ潜入する。」

 

 

「「「「「了解。」」」」」

 

 

キョウスケとアクセルが不在のATXチーム。

 

再び隊長として戻ったのがゼンガー少佐である。

 

 

「ブリット、お前の成長ぶりを見せて貰うぞ。」

「了解。」

 

 

弟弟子に当たるブリッドに。

 

 

「クスハ、どんな事があろうとも恐れるな。」

「はい。」

 

 

超機人の操人であるクスハに。

 

 

「ラミア、己の決めた道を歩め。」

「了解でありんす。」

 

 

人の心に目覚めたラミアに。

 

 

「ロサ、その真っ直ぐな想いを忘れるな。」

「了解です。」

 

 

人と共に歩む事を選んだロサに。

 

 

「ハスミ、彼らを頼んだぞ。」

「了解です、ゼンガー隊長。」

 

 

大地の揺り籠に囚われている希望を視たハスミに。

 

ゼンガーはそれぞれに声を掛けた。

 

 

「行くぞ!!」

 

 

一方地上では。

 

 

SRXチーム、戦技教導隊のハガネ隊。

 

オクト小隊、イルム中尉の新生PTXチームのヒリュウ改隊。

 

フリーダム、ジャスティスを中心としたアークエンジェル隊。

 

例の三人悪トリオのドミニオン隊。

 

そして第一エリアで奮闘したスーパーロボット部隊。

 

マジンカイザーを筆頭としたマジンガーチーム。

 

グレンダイザーも合流していた為、ベガ星連合軍と交戦していた可能性がある。

 

真ゲッターを中心としたゲッターチーム。

 

こちらも百鬼帝国製の機体が追従していたので離脱者が出たと思われる。

 

九州エリアで活躍していた鋼鉄ジーク。

 

そしてZシリーズでおなじみのスーパーロボット組もこの第一エリア組と共に合流していた様だ。

 

続いて鉄甲龍絡みでゼオライマー。

 

第三エリアで共に戦ったラーゼフォンと合流したライディーン。

 

第四エリアで共に戦い続けたミスリル。

 

日輪のダイターン3。

 

それが今回の作戦に参加したメンバーである。

 

この場にフリーデンのメンバーやミリシャ、シビリアンの彼らは不在だ。

 

もしもこの場に彼らが訪れていたのであれば、あの光景を思い出してしまう。

 

前世でアースクレイドル間近で御大将の月光蝶でズタボロにされたシナリオを…

 

当時はポ○ステ様を拝んでしまった位です。

 

 

「…(記憶がないにせよ、緊張感のないおしゃべりな事で。」

 

 

戦闘開始後、周辺の敵機を破壊しつつアースクレイドルへの道を切り開く。

 

道中、緊張感のない会話も多々あり。

 

流石に溜息をつきたくもなったが…

 

一応、同級生のよしみで言わないで置く。

 

甲児はさやかとマリアの取り合いの喧嘩に巻き込まれ。

 

竜馬もまたそれに近い状況に巻き込まれていた。

 

 

「…(問題は秋津マサトがどう出るかか。」

 

 

アースクレイドルへ近づく中、今回の戦いは彼の出生についても絡んでいるだろう。

 

例の力で次元連結システムの基礎となった記述の出所が判明した以上。

 

恐らく奴が生きていると確信した。

 

あの子を救う為にも奴を野放しにするつもりはない。

 

次元連結システム=クロスゲートとはよく言ったものですよ。

 

その内、次元力の一件でも絡んでくるだろう。

 

その時は腹を括る覚悟をしなければならない。

 

 

******

 

 

「ゼンガー!」

「奴は俺が引き受けた!」

 

 

アースクレイドルの頂上付近で斬り合う巨大な剣。

 

ダイゼンガーとスレードゲルミルが刃を交えたのだ。

 

 

「ウォーダン・ユミル!」

「ゼンガー、この先に…メイガスの元へ貴様達を行かせはせんぞ!」

「メイガスだと…もしや。」

「…行く末は我らの刀が答えるだろう。」

「ならば、押して参る!」

 

 

クロガネがアースクレイドルへ到達し、その外殻を超大型回転衝角にてこじ開け。

 

ゼンガー隊長が追撃してきたウォーダン・ユミルのスレードゲルミルを抑えている間。

 

私達はアースクレイドル内部へ潜入し潜入部隊は先に最深部へと向かった。

 

その道中、私とロサだけは別行動を取らせて貰った。

 

理由は不快な気配をアースクレイドルの別区画から感じたからと説明しておいた。

 

事前に侵入後の指揮を執るエルザム少佐から了承を得ているので敵前逃亡ではない。

 

そして一番その気配が近いエリアに移動し侵入を続けた。

 

作戦開始前に配布されたアースクレイドル内部のフロアマップが正しければ彼らが囚われているのは研究施設のエリアだ。

 

私達はそのまま研究施設に続く搬入路を進んでいた。

 

 

「この先の様ね。」

「ハスミ、さっきの話は本当なの?」

「ええ、間違いなく彼らはこの先に囚われている。」

「まさか舞人さんとガインさん、ブラックさんがAnti・DCに捕まっていたなんて。」

「恐らくはアマルガムか例の犯罪シンジケート経由でしょうね、舞人達が第五エリアで起こった次元震で散り散りになったのは知っていたけど…」

「ハスミ、もしかしたらガインさん達は…」

「彼らの超AIが奴らの制御化に置かれている可能性も否定出来ない。」

「!?」

 

 

私はロサに冷たいとは思ったが、私なりの結論を答えた。

 

Anti・DCやアマルガムらが絡んでいる以上、舞人達の生命が無事であるかは最悪の結果を含めて考えた方が良い。

 

奴らは本気を出せば、人の命など考えもしないだろう。

 

今までの奴らの行動がお遊びと言って良い程の規模だった。

 

そして追い詰められた者はその牙を剥く。

 

私は彼らの行動パターンが判っているからこそ判断した。

 

理由とすれば…

 

この状況下に置いて、私の中である言葉が思い浮かんでしまうからだ。

 

『悪夢のオンエア』

 

それはガイン達にとって屈辱的な出来事。

 

その言葉は舞人達の物語でガインが操られてしまうと言う出来事を記録した話のタイトル名である。

 

 

「ハスミ、私…私ね。」

「ロサ?」

「舞人さん、ガインさんとブラックさんを私と同じ目に合わせたくない。」

「…判っているわ。」

「だから、そうなったら…止めて見せる。」

「貴方だけじゃないわ、私と二人で…」

「いや、四人だ。」

 

 

こっちで単独行動に移れば来ますよね…

 

 

「今の話を聞いていたのですね、ギリアム少佐、テンペスト少佐。」

 

 

こちらの跡を追って来た、ギリアム少佐のゲシュペンスト・タイプRVとテンペスト少佐のヴァルシオン。

 

 

「ハスミ、すまん。」

「いえ、テンペスト少佐のせいでは…むしろ気になっていた事が明確になったので安心もしました。」

「気になった事?」

「ギリアム少佐、貴方が持つ予知能力は『数多の未来の可能性の中で、その時点で最も有力な未来を垣間見る事』が出来るで合っていますね。」

「!?」

「でなければ、特殊なジャミングを使って移動している私達を追う事は不可能の筈です。」

 

 

通信越しであるがギリアム少佐の顔色が少し変化したのを感じ取った。

 

予知能力の一件はテンペスト少佐に話していなかったので驚きを隠せていない。

 

 

「ギリアムに予知能力…だと?」

「分類するならシャイン王女が『不測の事態と危険察知の予知』、ギリアム少佐は『有力な未来線の予知』ですかね。」

「ハスミ少尉、それもアカシックレコードからの情報なのか?」

「半分は…残りは私なりの解釈です。」

「…」

「ギリアム少佐、今は余計な詮索をしている暇はない筈です。」

「判った、では少尉…君は戦列を離れて何をしようとしている?」

「囚われた希望の欠片を拾いに行く事とこの大地の揺り籠に隠された闇を知る事です。」

「闇だと?」

 

 

広がりつつある闇。

 

そしていずれ現れるであろう悪意から世界を護る為に。

 

私は知らなければならない。

 

この先に隠された闇を。

 

こんなゴタゴタをするつもりで部隊から離れた訳じゃない。

 

少しこちらの手の内を晒して置こう。

 

敵ではない、でも味方でもない。

 

私はどちらにもなれない半端ものだから。

 

 

「ハスミ少尉、君は一体何者だ?」

「キョウスケ・ナンブ、アクセル・アルマー、リュウセイ・ダテ、マサキ・アンドーと同じく私も転生者です。」

「君が転生者!?」

「但し、キョウスケ中尉達とは異なります。」

「異なる?」

「私は貴方が『実験室のフラスコ』と呼ぶ世界を造り出した存在と同じ世界からの転生者だからです。」

「!?」

 

 

実験室のフラスコ。

 

私なりの解釈で言うならこの世界観の事。

 

私はその世界観を造り出した人達と同じ世界に居た存在。

 

ただ何処にでも居る。

 

その物語が好きなだけの一般人。

 

唯のオタク、唯のマニア、唯のファン、唯のモノ好き。

 

私はその内の一人。

 

 

「こうなってしまった以上、アカシックレコードの契約に基づいて話せる事は話します。」

 

 

美しくも残酷で。

 

醜くも慈悲で。

 

ただパフォーマンス的な感覚で創られた世界。

 

この世界に生きる事となった私が行おうとしている事がどんなにエゴであるか。

 

私は語った。

 

それは絶望だったかもしれない。

 

それでも希望はあると言う事を。

 

知って欲しかったから。

 

 

=続=

 

 




山羊の面を被る悪魔は語る。

淀み始めた闇は噴き出し始めた。

だからこそ止めなければならない。

次回、幻影のエトランゼ・第三十二話 『大地《アースクレイドル》後編』

大地の底で希望は降り立つ。


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