人々は何を願い何を求めるのか。
ここにもそれを願い祈る姿があった。
睡蓮はいずれ訪れるであろう戦いから無事に戻る事を願うのだ。
この先に現れるであろう災厄と危機から友を生還させる為に。
新西暦186年12月31日。
日本で言う大晦日の日である。
地球並びに各コロニーで厳戒態勢のまま年を迎える準備を着々と進めていた。
ここにもそれを願う者達の姿があった。
「年末だって言うのにギリギリまで任務だなんて。」
「少尉、しょうがないですよ。」
「ふふっ戻ったら私が美味しい栄養ドリンクを出しますよ?」
「あ、え、遠慮しとくわ。」
「そうですか?」
「うん、疲れてないし。」
私達ATXチームも各地が祭りムードになる中で警戒態勢のまま各地の見回りを行っていたのだ。
民間人ではない私達が一緒にお祭りに参加できるとは思っていない。
これも任務の一環として割合する。
「アサルト0より各機へ基地に帰還すればエルザムが年越しと年明けの料理を準備して待っている。」
「わぉ!エルザム少佐ったら太っ腹ね。」
「楽しみです。」
隊長の言葉を皮切りにそれぞれが喜びの声を上げていた。
任務を全うした後、それぞれが伊豆基地に帰路を向けるのだった。
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伊豆基地に帰還した私達は任務中のレポートを纏めて提出し他の部隊や仲間になった人達の集うホールへ向かった。
既に何人かが待ちくたびれた様で話を進めていた。
そしてレイカー司令の挨拶を始め、今年の労い言葉と来年の誓いを立ててパーティが始まる。
そしてエルザム少佐を筆頭に非番だった女性パイロット達がお手製の料理を運んで来た。
今回は人数が多いので立食式となっている。
「ささやかながら年越しの料理と年明けの定番である御節料理を用意してみた。」
他にもソフトドリンクなどが揃っている。
当然、祝い事であっても酒類は禁止である。
パーティ中に出撃命令があっても可笑しくはないのだ。
全員にソフトドリンクが配膳され終わるとレイカー司令の号令がかかる。
「では、乾杯。」
「「「「「乾杯!!!!!」」」」」
ホール内にグラスを軽く鳴らす音が響いた。
パーティの始まりである。
「リュウセイ、これ…私が作ってみたの。」
「ラトゥーニが?どれどれ?」
軽食を取って食べていたリュウセイにラトゥーニが自分で作ったと言う料理を持ってきた。
どうやらおにぎりの様である。
「これマグロのトロか?」
「うん、マグロのトロ…だから”トロ“ニウムおにぎり。」
「うん、醤油ダレが効いててうまいぜ!」
「良かった///」
何処かでリア充爆発しろとかのセリフが聞こえて来るが気にしない。
寧ろ気が付いてない二人であった。
「皆さん、私もデザートを作って置いたの。」
「わお、さすがハスミちゃん。」
「任務中だったのでこれ位しか出来ませんでしたけど。」
「ハスミ、ありがとう。」
「隊長はこっちの果物ゼリーを…」
「うむ。」
「そっか、ボスって甘い物苦手だっけ?」
「一口食べただけでも卒倒する勢いだからな。」
「いつも隊長用に別で作っておくんです。」
「うまい。」
「テンペスト少佐…いえ、お義父さんもどうぞ。」
「ハスミ、いつも済まないな。」
ハスミがATXチームに渡したのはホワイトチョコと苺のムースである。
ちなみにゼンガーには砂糖不使用の果物ゼリーである。
事前に作って冷やして置けばすぐに出せる物だ。
「ドモン、私もエルザム少佐に習って作ってみたの。」
「ん、いいのか?」
「いいのよ、私がドモンに作ったのだから。」
「そ、そうか…ありがとうレイン///」
「ふふっ。」
リア充爆発しろその二。
「こらーボス、甲児君に作った料理を!!」
「ボス、食い物の怨みはって事だ!!」
「に、逃げるだわさ!!」
リア充爆発しろその三。
「カミーユ、ごめんなさい。」
「失敗は誰にでもあるよ、また今度頑張れば。」
「そ、そうよね。」
「ありがとう、カミーユ。」
リア充爆発しろその四。
「何なんだこの甘ったるい空気は…」
呆れる元影鏡隊の隊長。
「楽しいですね。(ああ、腹筋崩壊したいほど笑いたいよ。」
そんな感じでパーティは進んでいった。
そして年を越す除夜の鐘が鳴り響く中で一同がホールの窓ガラス付近に集まった。
伊豆の街で年越し恒例の花火が上がるのだ。
それを伊豆基地のここからでも見上げる事は出来るので全員が集まったのだ。
藍色の夜空に広がる色とりどりの花火。
それぞれが祈りを捧げる。
良いお年を。
そしてhappynewyearと口にするのだった。
=続=