幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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蒼き深淵の底より現れる異形。

彼の者、醜悪たる姿を偽る為に美しいもので囲う。

だが、真実は変えられぬ。

美しさは一瞬だからこそ輝く。

永久の美と言う言葉はないのだ。






第二十三話 『魔海《マカイ》前編』

第一、第二エリアの友軍と合流し第三エリアにて部隊編成後に私達は第四エリアへと到着した。

 

第一、第二、第三エリアの均衡が崩れない程度に残留組を配置してきた為、ややこしくなっている。

 

それを踏まえての説明の後に今回の話へと移ります。

 

理由は第四エリアの変異後地形が前と同じじゃない為だ。

 

 

******

 

 

まずは各エリアの残留組から。

 

第一エリアの残留組はGGG、極東エリアのスーパーロボット軍団、GEAR、イオニア一行よりライガー組、エルドランチーム、宇宙からはプリベンターが駆けつけている。

 

これはドラゴ帝国がメタルナイトと言う新戦力を増員した事、機械化帝国より新たな幹部であるエンジン王の出現があった為である。

 

また行動を縮小していたガルファも動きを見せる様になったとの事で銀河達は本部に戻る事となった。

 

そしてプリベンターが追っている例の組織の影も気になるが彼らに任せるしかない。

 

場合によっては『男爵』に出張をお願いする予定だ。

 

マサトはとりあえず『冥王化』はしていないので様子見である。

 

第二エリアの残留組はドラグナーチーム、アルビオン隊、キリコ一行、宇宙より獣戦機隊が合流している。

 

第二エリア解放戦の間、姿を潜めていたウドの街のAT乗りに続いて未確認のAT乗り達が姿を現した。

 

それらを止める為に抑止力として残留する事となった。

 

オマケに野盗化した敵組織の残党部隊も現れている。

 

一例として某毒蛇部隊とか…

 

第三エリアの残留組は残りのイオニア一行、これに白の谷や他のレジスタンス連合、グッドサンダーチームとコズモレンジャーJ9が加わっている。

 

光達もセフィーロの防衛に協力したいとの事で残留する事となった。

 

未だセフィーロの影に潜み続けるデボネア、邪竜一族とドン・ハルマゲの侵攻が終わった訳ではないのも理由だ。

 

宇宙の方はアムロ大尉らロンド・ベル隊を中心としたUCガンダムチームと再結成されたナデシコ組が網を張っているので何かあれば連絡が入るだろう。

 

そして第四エリア侵攻組は合流したスペースナイツ、ミスリル、SRXチーム、戦技教導隊、新たに加わったプロジェクトTD、GGGを除いた勇者チーム一行、ハガネクルー、ATXチーム、マサキ、シャッフル同盟、アークエンジェルクルー。

 

戦技教導隊にラトゥーニの同郷の仲間であるアラド、ゼオラ、オウカの三名が加入した。

 

本来なら普通の生活に戻る事も可能だったが、ラトゥーニが戦う事を決めているのなら自分達もその力になりたいと志願したのである。

 

マサキについては大地震による転移と例の方向音痴が原因で彷徨っていた所をプロジェクトTDのメンバーと合流したSRXチームに発見されたらしい。

 

プロジェクトTDはアイビスとツグミチーフだけと思ったが、スレイも一緒だった。

 

理由はシャイン王女と出会った事にある。

 

彼女は金持ちの道楽と言っていたフェアリオンの開発真意とシャイン王女の決意を知り、その考えを改めたらしい。

 

シャイン王女は、国と民そして平和を願う一人の人間として戦う事を決意した。

 

スレイもまたその理由を知らずに金持ちの道楽と失言してしまった事に色々葛藤したが、現在は収まっている。

 

アステリオンの件も珍しい事にスレイが納得した上でアイビスが搭乗している。

 

アイビスに虚億でもあったのだろうか?

 

もしくは周囲が彼女達に何らかの影響でも与えたのかもしれない。

 

ちなみにロサはツグミチーフに捕まり色々とフレームに可愛いデコレーションをされてしまっている。

 

本人も満更でもないようなのでそのままにして置いている。

 

こう言うのを『可愛いは正義』だろうか?

 

一例としてプ○キュアみたいな状態になっている。

 

えーと…

 

ロサ、可愛いのは良いけど…普通のままで戻ってきてね。

 

んで、私は勇者チームと共に勇者ロボとエクリプスの件でリュウセイに動画&写真撮らせてくれと迫られている。

 

判ってたよ、判ってたよ。

 

転生しても性格ブレてない事も解ってたよ。

 

だから軽く絞めました、勿論梁山泊的に軽くです。

 

リュウセイ、そんなにこの世の終わりが来たような顔しなくても…

 

五体満足で生きてるからいいでしょ?

 

次に他所様に迷惑かけたら…解ってるよね?

 

リュウセイも了承してくれたし丸く収まったので放って置いた。

 

なんやかんやで浜田君から映像データを貰ってさっさと逃げて行きました。

 

勇者チームの情報流出を避けたいのに何やってんだが…

 

エクリプス?戦闘以外で見せる訳ないでしょう?

 

知られると不味いモノが搭載されているのだから絶対にありえません。

 

今は知る対象が少ない方が良い。

 

それでもスフィア・リアクターとして覚醒し始めるランドさんには感づかれるだろうな。

 

その時は潔く腹を括るしか…

 

いや、手はあるな?

 

知りたがる山羊の力ならそれが可能だ。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

それから数日後。

 

第四エリアのバリアを破壊、航行を続けると見えてくるのは青い海原と所々に見える諸島群だ。

 

本来はオセアニアを中心としたエリアを取り込んでいるが、ここでは海域に面したエリアが集中的に組み込まれたのだろう。

 

そして奪い返す最後のアフェタが水のアフェタのみになっている為、支配エリアの障壁バリアが弱くなっている。

 

これは外部からの侵攻を容易くする事が可能…つまりは更なる敵を呼び込む事になる。

 

これが何を意味するかはいずれお分かりになると思います。

 

 

「何処へ行っても海ばっかりね。」

 

 

ハガネの展望室から外の様子を伺うエクセレン達。

 

丁度、休憩時間である。

 

 

「調査の結果、第四エリアは地球圏における海域に面した地域の集合体の様ですから海ばかりなのも当然です。」

「つまり…このエリアの魔族は水の属性なのか?」

「ヴァリオンの話ではそうみたいよ。」

「ちなみに地の属性が弱点となりますのでロサの本領発揮場とも言えるわ。」

「じゃ、パワーアップしたロサちゃんに期待でもしましょうか?」

「うーん、姿だけ変わっただけなのですが?」

「それは気持ち次第ってね。」

 

 

現在、ロサはツグミチーフのお遊びの名残でデコられたままになっている。

 

フリルで猫耳付けたガーリオンなのでニャンコリオンとでも言うべきか?

 

可愛いけど、ロサ…

 

お願いだから戦闘中だけはその姿は止めておこうね。

 

ファルセイバー辺りが色々と危険だから。

 

第二エリアに続き第三エリアでも修羅場の真っ最中だったのでゆっくり語る事が出来なかったが…

 

無事にロサは勇者チームに受け入れて貰えました。

 

少しばかり心配だったが素性を知った上で受け入れてくれたのだ。

 

彼らには感謝しきれない。

 

で、何故ファルセイバーが出て来るのかと言うと…

 

どうやらロサが彼に一目惚れされたらしい。

 

あれ?過保護バリバリのユキ一筋じゃなかったっけ?

 

確かにロサにも過保護になりたくなるオーラが出ているのは判るよ?

 

これで過保護な青い機体まで出てきたら泥沼ですな。

 

笑い事じゃないけど…

 

 

******

 

 

一方その頃。

 

第四エリア侵攻部隊に編成された記憶持ちの一行はと言うと…

 

 

「第一エリアでそんな事が起こっていたのか…」

 

 

キョウスケの言葉を皮切りにハガネ艦内の使用されていない一室で話し合いを続けていた記憶持ち一行。

 

メンバーはキョウスケ、アクセル、リュウセイ、マサキ、ドモン、シュバルツ、宗介、相羽兄弟、キラ、舞人、瞬兵、洋である。

 

他とも連携を取りたかったが、各エリア防衛の為の部隊編成の事もあり致し方ない。

 

第一エリアでの状況を知る宗介、相羽兄弟からの説明から始まり。

 

前の世界でゾンダーとの決戦に参加していた舞人達は今回の戦いに助力出来なかった事を話した。

 

 

「結局、ゾンダーによる都心制圧作戦と並行して都心に逃げ込んでいたラダム樹の早期開花が起こってしまった。」

「ゾンダーとの東京決戦は前の世界で俺達も参加していたのですが…」

「僕達、今回は凱さん達に助力出来ませんでした。」

「結果的にGGGとスペースナイツに重荷を背負わせる事に…」

「仕方がない、前に聞いていたが敵の策略も関わっていた以上…それぞれが出来得る限りの事は出来た筈だ。」

「…」

「前の世界ではラダムに操られた僕が奴らの指揮を執っていたんだけど…まさかランスがその役になっているとはね。」

「話は伺っています、やはり家族同然だった人達と戦うのは…」

「割り切らなければならない時は誰にでもやってくる。」

「そうだよ、出来る事なら救ってどうしても…と言う時は覚悟を決めないといけない時もね。」

「覚悟を決めるか…」

「うん、僕らもその時が来たら決めなきゃいけないんだね。」

「洋君、瞬兵君…」

「舞人さん、僕達は大丈夫です…ちゃんと分かっていますから。」

「解っているさ、君達の事を信じているからね。」

 

 

転生しているとは言え、彼らはまだ十代の少年だ。

 

舞人を含め勇者達と共に行動していた少年達はどれだけの修羅場を潜り抜けて来たのだろう。

 

それは当人達の知る事でこちらが口を出す事は出来ない。

 

 

「後悔しても仕方がない、今は起こり得る状況を整理するぞ。」

「同意見だ、これがな。」

 

 

キョウスケを始めとした記憶所持者達は第四エリアでの状況を改めて確認し起こり得る状況を纏めた。

 

もっとも起こり得るのは魔族の介入、そしてオーブとの早期接触だろう。

 

宗介からは連絡が取れていないトゥアハー・デ・ダナンの動向。

 

キラは捕虜となっているイザーク達の説得。

 

舞人達はこのエリアで敵の魔族に洗脳されている仲間達の安否。

 

リュウセイはOZからAnti・DCへ占領されたままになっているリクセント公国。

 

マサキはテスラ研脱出の際に交戦したインスペクターの幹部の件。

 

DボゥイからはCITY-NO.5に居るトモルの件。

 

ドモンらはアースティアで起こった出来事と第三エリアで受けたDG細胞の傷跡の件について伝えた。

 

他の仲間達が揃っていれば別の一件が思い出せるが、今の自分達が関わる予定の事象はその位である。

 

前の世界で起こった事象が起こるかもしれない起きないのかもしれない。

 

曖昧な事象変異で自分達の先読みが通用しなくなりつつあるのだ。

 

 

「所でよ、ハスミの事はどうなったんだ?」

「一応は解決したって言うか何と言うか…」

「また、ややこしいのか?」

 

 

マサキの発言を皮切りに舞人達が質問を始めリュウセイもその理由について話に加わった。

 

 

「ハスミさんがどうかしたんですか?」

「舞人達は知らなかったよな、アイツも一応…転生者なんだよ。」

「えっ?」

「ハスミさんも?」

「何だか曖昧な言い方みたいですけど…」

「正確にはかもしれない…だ、アイツ自身が直接明かした訳でもない。」

「どうしてですか?」

「アイツはちょっとばかし厄介な案件を抱えていてな、俺達との前世上の記憶を交えた直接の接触は出来ない事になっている。」

「つまり普通の会話や接触は可能で前世の記憶を交えた会話は不可能と言う事ですか?」

「そう言う事だ、これがな。」

「ちなみに一言でも俺達に例のアレで知り得た記録の事を話すと無限力の介入で人類滅亡から宇宙リセットと言う最悪な爆弾を抱えている。」

「それに協力する事は出来るが遠回し程度にしか協力する事が出来ないときた訳だ。」

「どうして彼女が…!」

「その理由はアイツがアカシックレコードと繋がっているからだ。」

 

 

アカシックレコードと言う言葉に混乱する少年組に助け舟を出したのはパートナである勇者達である。

 

 

「アカシックレコード?」

「アカシックレコード…過去、現在、未来と宇宙における万物の記憶を収めてあるとされる大いなる記録の事だ。」

「それって!?」

「この世の英知を収めた記録か…」

「それがあのハスミとやらと繋がっていると?」

「ああ、いつどこでそんな事が出来る様になったのかは俺達も知らん。」

 

 

舞人はアカシックレコードに繋がっているならばその記録を利用すれば今までの事件を未然に防げたのでは?と話すが…

 

理由を知るキョウスケらはそれを否定した。

 

 

「待ってください、それなら今まで起こっていた事件を未然に防く事も出来た筈じゃ!」

「そこがややこしい所だ。」

「ハスミによればアカシックレコードで知り得ても介入出来る事象と出来ない事象があるらしい。」

「その邪魔をしているのが無限力そして事象変異のバランスを取る為にアカシックレコードが介入制限を掛けている訳だ。」

 

 

宗介はこの事に苛立ちを覚えるもドモンとシュバルツがそれを制した。

 

 

「勝手な…情報を与えるだけ与えてその事件に介入出来ないとは、まるで情報の無駄遣いだ。」

「宗介、物事には一つの流れを変えた場合…それを正す為に別の流れが入る事もある。」

「己の望むがままに流れを変えれば、その本流はやがて激流となり己を飲み込むだろう。」

「つまり彼女がアカシックレコードの提案を素直に受け入れているのはそのせいだと…?」

 

 

続けて相羽兄弟が理由を察して助言を入れた。

 

 

「ハスミなりに物事が混乱しない道を選んでいると考えた方が良い。」

「僕らの様な例外が出たんだし…その無限力とかアカシックレコードの対応とかで苦労しているんじゃないかな?」

「…」

 

 

キラがふと思い出してキョウスケに質問した。

 

 

「キョウスケ中尉、どうしてそこまで理由を知っているんですか?」

「さっきも話したが彼女からは直接聞く事は出来ない…なら間接的にならどうだ?」

 

 

納得した舞人を他所に更に年下の少年達は?を浮かべていた。

 

「…そうか!」

「えっと、どういう事ですか?」

「つまりハスミさんは直接伝えられないから別の方法でキョウスケさん達にこの事を知らせたんだよ。」

「ああ、なるほど。」

「まったく、その話を聞かされた時はビビったぜ。」

「昔からアイツはタヌキとかキツネっぽい所があったからな。」

「リュウセイさんってハスミさんと幼馴染なんですか?」

「幼馴染って言っても小さい時だけで親御さんが亡くなってから別れていたし二年前に再会した位でその間の事はあんまり知らねえんだ。」

「複雑ですね。」

「まあそう言う事にしておいてくれよ。」

「兎に角、ハスミには例の記録の話を直接聞く事は絶対にするな。」

「解ってるよ、聞いた途端に人類滅亡じゃ堪ったもんじゃねえ。」

 

 

再び話を戻し、キョウスケはキラに話を振った。

 

 

「キラ、オーブに関してはお前が一番知っていたな?」

「はい、中立を貫いていると言うのは変わらずですが…」

「場合によっては戦火に巻き込まれる事を覚悟しておいた方が良い。」

「解っています、それでも僕はオーブや世界を火の海にするつもりはありません。」

「ああ、出来得る限り俺達で護り切るぞ。」

 

 

互いの情報整理を終え、一先ず今回の会合は終了となった。

 

 

******

 

 

しばらくして第一種戦闘配備のアラームが艦内に鳴り響いた。

 

侵攻中の海域に魔族と思われる敵の集団を発見した為である。

 

どうやら別の組織に所属する大隊が襲撃を受けているらしい。

 

敵対勢力の可能性も否定出来ないが襲撃相手が魔族である事は変わりはないので救援に向かう事となった。

 

それは新たな可能性が産み出した結果だったのである。

 

 

=続=

 

 




これは望んだ結果だったのか?

それとも新たな災厄の兆しなのか?

次回、幻影のエトランゼ・第二十三話 『魔海《マカイ》後編』。

蒼き海は魔の血で染まる。

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