それは星に籠り…
平和を謳歌する中で…
静かに静寂な滅びを迎えた…
幼き日の少女は『夢物語』として静かに紡いだ…
閑話・零 『滅曲《マーチエンド》』
曇天の空に草木も咲かぬ大地。
それは燃え盛る鉄屑達の亡骸で埋まっていた。
まるで墓場の様に。
『どうして、何故!?』
『噛み砕け…!』
******
蒼い。
蒼い。
蒼い。
蒼いのに何故そんなに真っ赤なの?
蒼い狼さん?
どうしてそんなに真っ赤に染まってしまったの?
蒼い狼さんは何も言わずに傍に居た大きな人をガブリと食べてしまいました。
ボリボリ。
ボリボリ。
ボリボリ。
お腹一杯になった蒼い狼さんは大きな朱い狼さんになりました。
大きくなった朱い狼さんは次のご飯を探し求めて動きました。
小さいけれど神様の様な心の王様。
鋼鉄の人。
赤と白と黄色の人。
太陽の人。
三日月の人。
昆虫の人。
獣の人。
白い人。
赤い人。
遠い星から来た人達。
そして。
悲しい思いをした蒼い人。
苦しい思いをした紫の人。
悔しい思いをした金の人。
恨みたい思いをした傷の人。
皆、皆、皆。
朱い狼に食べられてしまいました。
終わった頃には朱い狼のお腹は満腹でした。
そしてお腹の中から聞こえるのです。
色々な声と一緒に音楽が聞こえた。
<風の行進曲>
心地よい音楽を聴いた朱い狼は言いました。
『愚かな静寂を求めたのはお前達だ。』
朱い狼はあざ笑いながらひと眠りにつきました。
『我々の選択は間違っていたのか?』
朱い狼のお腹の中で食べられてしまった人の一人が答えました。
でもそれは誰にも聞こえずに消えてしまいました。
まるで風の様に。
『見つけたぞ。』
居眠りをしていた朱い狼を見ていた人が居ました。
銀色の腕を持った大きな蒼い鬼でした。
『ベーオウルフ!!』
大きな蒼い鬼は朱い狼を殴りました。
朱い狼は眼を覚ましましたが殴られてしまったので横にふっ飛びました。
しかし、一杯食べてぐっすり寝た朱い狼は元気だったのでそんな事があっても平気でした。
蒼い鬼と朱い狼はこうして戦い始めました。
そして戦いは止まりませんでした。
何度も何度も傷つけ合いました。
そして。
紫の魔女が言いました。
『もう時間よ。』
蒼い鬼は一緒に行けないと話しました。
何度言おうとも聞き入れないと悟った紫の魔女は旅の仲間と一緒に先に外の世界に旅立ちました。
紫の魔女は青い鬼の為に外の世界に繋がる扉と鍵を残しました。
しかし扉と鍵は魔法で後5分しか開いて置く事が出来ません。
蒼い鬼は扉が閉じる時間まで朱い狼と戦い続けました。
時間が訪れる頃に扉の前へ朱い狼を誘いました。
蒼い鬼は扉に入ると紫の魔女が残した魔法を使いました。
朱い狼は炎に焼かれて怨みの声を上げながら消えました。
蒼い鬼も扉を閉じて外の世界へ向かいました。
扉も閉じると炎に焼かれて壊れました。
そして世界は静かに壊れました。
† † † † †
10年前のテスラ・ライヒ研究所にて。
『わっ!?』
研究所の住居スペースの一室にて備え付けのベッドから飛び起きた少女が居た。
少女はびっしょりと冷や汗を出して震えていました。
薄暗いライトに照らされた室内からタオルを探し出すと濡れた場所を拭き上げた。
そして室内から出て展望スペースに歩いて行き、外の景色を見ながらこう呟いた。
『
北米の夜空に流れ星が落ちて行く様子を見ながら少女は一筋の涙をこぼした。
=終=
<今回の登場人物>
≪マーチウィンド≫
異星人による侵略を受け、半ば彼らに従う者と反逆する者に別れた地球の独立部隊。
監視者と呼ばれる存在との戦いの後、地球に封印を施して外宇宙からの脅威を退けると言う選択を選んだ。
しかし、既に地球に入り込んでいたアインストによって浸食した『ベーオウルフ』によって壊滅した。
≪???≫
※ベーオウルフ
平行世界でのキョウスケ・ナンブ、階級は大尉。
アインスト化によって『ベーオウルフ』と化し、愚かな静寂を呼び込んだマーチウインドを壊滅させた。
その後、アクセル・アルマーとの一騎打ちで消息不明となる。
≪シャドウミラー≫
※アクセル・アルマー
平行世界で『ベーオウルフ』を倒した後、時空転移し生まれ故郷の世界と決別した。
≪旧戦技教導隊≫
※ハスミ・K・ラウ
カーウァイの養女となった幼い頃のハスミ。
旧戦技教導隊ではマスコット扱いになっている。
サイコドライバーとしての能力の一つ『夢見』で平行世界でのマーチウィンドの壊滅とシャドウミラーの逃避を知る。
そして自身の力がまだ完全に未覚醒である事と戦う力を持たない為にマーチウィンドを救えなかった事を悔いている。