それは自らが望んだ行動ではない。
思惑の糸を断ち切れ。
その先の未来を勝ち取る為に。
OPERATION・SRWが開始した。
ホワイトスターへの総攻撃準備の為にノードゥスは敵部隊への奇襲攻撃を仕掛ける事となった。
相手が同じ地球人でその成れの果てであったとしても…
「ちっ、虫だったり他の組織から鹵獲した機体ばっかりだ。」
「やはり、我々への様子見でしょうか?」
「恐らくな、全く舐めた真似をしやがって!」
ヒリュウ改のオクト小隊隊長カチーナとその部下であるラッセル。
敵部隊の構成の様子に違和感を覚えた。
艦を狙うバグスの塊にタスクが、タスク機を狙う漏れた敵をレオナが対応する事で現状維持のまま戦闘は続いた。
「俺らが仕掛けて来てるってのに隊長格の姿がねえ。」
「恐らくはこちらの戦力を削る為に使い捨ての戦力を投入しているのでしょうね。」
「だよな、とにかくヒリュウ改に近づけさせる訳にはいかねえ。」
「周囲の雑魚は中尉と私達に任せて、貴方は敵の陣形を潰す事に専念なさい。」
「合点承知だぜ、レオナちゃん。」
ジガンスクードのギガ・ワイド・ブラスターが前方の陣形を崩し、それを好機に他の各機が落としていく。
同じ様にラーカイラム、リーンホース・Jr、ナデシコ、エルシャンク等の艦隊所属MS・特機の混成部隊も母艦を護りつつホワイトスターへと向かって行った。
******
ハガネよりSRXチームが発進。
「SRXチーム発進します。」
「…」
「レビ…いや、マイ。」
「リュウセイ?」
「やっぱり気になるか?」
「皆は私を受け入れてくれた、だから私は私を救ってくれたリュウセイやアヤ達の力になりたい。」
「マイ。」
「じゃ、敵さんの本拠地に殴り込みに行こうぜ!」
「うん。」
「各機、ATXチームの出撃の邪魔になる。」
「了解、先行開始します。」
「ヴィレッタ隊長、指揮をよろしくお願いします。」
「ええ、任せて。」
SRXチームに参入したレビことマイのR-GUNパワード、ヴィレッタのビルドシュバインと共に進撃を開始する。
続けてヒリュウ改よりATXチームが出撃を開始する。
「キョウスケ中尉、各艦の進路を切り開いてください。」
「了解、ATXチーム突貫する!」
ATXチーム隊長代理のキョウスケが合図をする。
「ラジャー!」
「了解!」
「はい。」
「了解です。」
「要は艦に近づく奴らを片っ端から倒せばいいのだろう?これがな。」
ATXチームは例の一件でゼンガーとハスミが抜けている。
その為、残りのメンバーでホワイトスターへの進路を切り開く事となる。
しかし、前回とは違い戦力は十分である。
だが、ホワイトスターには強念の結界が張られている。
SRXチームの役目はホワイトスターに辿り着き、バリアを破壊する事である。
付け焼刃のT-LINKツインコンタクトによるトロニウムバスターキャノンでの一点集中攻撃である。
バリア発生地点を破壊すれば、ホワイトスターを包むバリアを破る事が可能である。
それがマイの持つ敵の情報である。
その後は各艦に搭載されたHIMAPWによる総攻撃が開始される。
♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱
グレートアーク級からの核攻撃開始までのタイムリミットはSRXチームがホワイトスターのバリアを破壊するまで。
それまでにカーウァイお義父さんの機体を探さないと…
周囲に念の張り巡らせているが、どうも引っかからない。
「ハスミ、反応はあったか?」
「いえ、もしかするとまだ出て来ていないのかもしれません。」
「ある程度の揺さぶりを掛けんと現れんか…」
念の為、グレートアーク級周辺にホルトゥスのメンバーが控えている。
これはアタッドの進撃ルートが複雑だからだ。
ディバイン版では真っ先にSRXチームに接触。
レコード版ではグレートアーク級へ。
OGsでは作戦開始半ば辺り。
どれに当てはまるかは判らないが念の為である。
「…(今回はテンザンが退場した事でパワーバランスが狂い始めているし、敵がどう出るかが問題ね。」
R-GUNリヴァーレが出ている以上、漆黒の堕天使が出現するかは判らない。
複雑な並行世界の果てに集約されたこの世界はあるのだから。
可能性は否定できない。
「…(後はリュウセイ次第か。」
この結末はどう転ぶだろうか。
「っ!?」
「ハスミ!」
「ゼンガー隊長、ホワイトスターから出て来ます!」
漸くお出ましみたいね。
「この念、あの地球人か!」
アタッドのヴァイクル、そしてガルインのゲシュペンストmk-Ⅱがこちらの気配を察知し進撃を開始した。
「ガルイン、奴らを始末するよ。」
「了解。」
こちらもそれを察知し接触を果たした。
「あの地球人もいるのか、丁度いい…ここで今までの屈辱を晴らさせて貰うよ!」
「ゼンガー隊長、グリフォンの相手は私がやります……お義父さんの事、お願いします!」
「承知した!」
「カーウァイ隊長、貴方を縛る呪縛は我々が解きます。」
因縁の対決は始まった。
早期にグリフォンを停止させる為に交戦を開始した。
「地球人、お前のせいでアタシはぁ!!」
「逆恨みは大概にしなさいよ!貴方だって地球人なんでしょう!!」
「な、何を…!?」
「レビ・トーラ…いえ、マイから聞いたわ!」
“貴方の本当の名前はジェニファー・フォンダ。”
“私達と同じ地球人よ!”
「ふざけるな!」
「否定しまくりの所を見ると実感はある様ね。」
「アタシが地球人?笑わせるな!!」
「実際、そうなのだから否定する必要もないでしょう?」
「アタシは生粋のバルマー人、地球人の訳がっ!?」
アタッドの脳裏を巡る記憶。
嘗てジェニファーであった頃の記憶。
だが、仮面を付けた様に塗り替えられていく。
ジェニファーであった証が消えて行こうとしていた。
ジェニファーの人格とアタッドの人格がせめぎ合っている。
「アタシは…アタシは!?」
「後はこの機体のT-LINKシステムを…!」
グリフォンの頭部に搭載されたT-LINKシステムを撃ち抜く。
「ああっ!!!?」
せめぎ合う思念。
解放されたジェニファーに取り憑こうとするアタッドの思念。
「アタッドの人格、アレンジペルソナ…これで終わりよ!!」
詩篇刀・御伽の解放。
「お前の思念を断ち切る…!!」
刀の切っ先がアタッドの思念を斬り裂く。
その常人では聞こえない叫び声と共にアタッドの人格は四散した。
ジェニファーはそのまま気絶しグリフォンは停止した。
「グリフォンを沈黙!」
グリフォンことヴァイクルの停止と共にガルインのゲシュペンストmk-Ⅱの停止した。
「止まったのか?」
「判りません。」
「ハスミどうだ?」
グリフォンを牽引し停止したゲシュペンストmk-Ⅱの元へ接近。
確認した所、どうやらこのグリフォンがガルイン機をコントロールしていたらしい。
その為、グリフォンの送受信機だったT-LINKシステムを破壊した事でガルイン機は機能停止したのだろう。
「妙な気配は感じられませんが、頭部に搭載されている外部コントロール受信機を破壊した方がいいと思います。」
「判った。」
別の機体からの操作も考えられる為、ギリアム少佐がガルイン機の頭部を破壊。
私は動かなくなったガルインに声を掛けた。
「お義父さん、カーウァイお義父さん?」
「…っ!」
「カーウァイお義父さん!」
「ここは……?ハスミ?お前なのか?」
「うん、御帰り…お義父さん。」
何度目かの呼びかけで目覚めたガルインことカーウァイ。
「お前達、随分と老けたな?」
「お、お義父さん?」
お決まりのジョークによって周囲が静まり返る。
「第一声がそれですか…」
「隊長、外見は兎も角お変わりない様で。」
「皆、随分と迷惑をかけた様だな。」
隊長は隊長のままである事に安堵した。
「お義父さんのせいじゃない、だから…」
「私が居なくなってからの事を聞かせて貰えないか?」
「解りました、色々と話したい事もありましたし。」
「ですが、手短な説明になります。」
「戦いはまだ終わった訳ではありませんので。」
「そうだったな。」
私達は一度、ヒリュウ改と合流し事情を説明。
二機を預かってもらい、先に先行したメンバーと合流する為に再度出撃した。
「良かった…」
すり抜けた手をつかみ取った。
最後の仕上げと行こう。
皆が待っている。
=続=
白き魔星の牢獄。
漆黒の堕天使の目覚めと共に黒き地獄と審判者が現れる。
次回、幻影のエトランゼ・第一二話『白星《ホワイトスター》後編』
更なる奇跡を起こせ。