幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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人々の危機に立ち上がる意思。

戦うべきは何の為?

世界は何を知るべきなのだろうか?


第百二十話 『落禍《ラッカ》後編』

 

軌道エレベーターの一部崩落による残骸落下。

 

その多くは地表へ落ちる前に燃えつきるが、質量の多い残骸は燃え残り地表へ落下する。

 

落下する位置の多くはアフリカのターミナル付近。

 

放置すれば大災害を引き起こすだろう。

 

これに対し国連はピラー破壊を最優先しクーデター組は放置する判断を決定した。

 

彼らも場合はアロウズのやり方に異議をもって抗議しただけであり、目処前の脅威を放置する事はない。

 

彼らもまたピラー破壊の為に行動を開始した。

 

 

******

 

 

人の意思が一つになり掛けているにも関わらず邪魔をする者は現れるのだが…

 

 

「そう言う馬鹿を相手にするのがアタシらの役目だよ!」

 

 

アフリカの軌道エレベーターに現れたルーンゴーレムとアールヤブの混成部隊。

 

更に周囲の負念に反応し出現したラマリス。

 

その脅威に対して行動を起こしたのがイグジスタンスである。

 

開口一番にハイアデス隊のエルーナが部隊を展開し混成部隊へ攻撃を仕掛けていた。

 

一方でラマリスの対応を行っているのが尸空率いる鬼宿隊である。

 

 

「…負念の化身は鎮める。」

 

 

同時刻、ZEXISは地表へ降下。

 

周囲と同様にピラー破壊を開始した。

 

 

「イグジスタンスが一足早く動いてくれていたのね。」

 

 

同じくメメントモリの司令フロアを破壊し降下したソレスタルビーイング。

 

スメラギは周囲の様子を確認し答えた。

 

 

「おいでなすったか、ソレスタルビーイング!」

 

 

更に厄介な相手は出現する者で…

 

 

「アリー・アル・サージェス!」

「奴も来ていたのか!?」

 

 

刹那とティエリアが奴の存在を認識し答えた。

 

サーシェスは前回の戦乱でミハエル・トリニティから奪った機体を改造したアルケーガンダムに搭乗していた。

 

 

「もう一人、特別ゲストも連れて来たぜ?」

 

 

サーシェスが声を掛けると姿を現す赤いGN粒子を纏った巨大MA。

 

姿を知る者は『レグナント』と呼ぶ機体。

 

問題は搭乗者である。

 

 

「…(ルイス・ハレヴィはアッシュフォード学園に居る、一体誰が?」

 

 

刹那はイノベイターとしての力で搭乗している相手が誰であるかを知った。

 

本来ならば、オーライザーの搭乗者だった人物である。

 

 

「まさか、沙慈…なのか?」

 

 

今回の沙慈は姉の絹江を失った事でソレスタルビーイングを憎んで失踪。

 

実戦経験を積む事と後にソレスタルビーイングが接触しそうな組織…

 

カタロンへ加入したもののアジト崩壊の戦闘に伴い行方不明になっていた。

 

それは巡り巡って最悪な形で戦場に現れたのだ。

 

 

「そんな…」

 

 

イグジスタンス経由で保護され、ソレスタルビーイングで通信クルーとしてプトレマイオスⅡに乗艦していた絹江は驚きの余りその声を引きつらせた。

 

 

「戦場で死に掛けていたのを拾ったが、まさかここまでの適性があるとはな?」

「サージェスっ!!」

「刹那…元学友同士で殺し合えよ?」

 

 

その時だった。

 

 

「久しぶりだな、基地外野郎…」

「誰だ、テメェらは!?」

 

 

見慣れないGN粒子を放出するGNドライブを所持する機体。

 

その一機はかつて散った仲間の機体だった。

 

 

「あれはデュナメス!?」

「一体誰が…?」

「ひっさしぶりね、刹那。」

「ネーナ・トリニティなのか!?」

「アタシだけじゃないよ?」

「ソレスタルビーイング、以前の軽率な行為…済まなかった。」

「俺らも戦うべき相手はもう間違えていないぜ?」

 

 

長距離射撃による割り込みで出現した新生トリニティ。

 

彼らが搭乗していた機体。

 

これはハスミの協力関係者からである。

 

以前、彼女が偶然知り合ったビルドダイバーズに機体データの製造依頼を彼らに打診していた。

 

最も、このデータが戦いに使われて誰かの命を奪う事になる事も想定してである。

 

彼らも戦うにしても誰かの助けになるなら…と協力を取り付ける事に成功。

 

吟味した結果、彼らの機体にソレスタルスフィアが使用した三機を再現する事に決定。

 

この為、チーム戦を得意とする彼らに打って付けだったのも理由の一つである。

 

トランジェントガンダムにヨハン、ガンダムジエンドにミハエル、G-ポータントにネーナの取り合わせだ。

 

更にデュナメスの改修機であるデヴァイスデュナメスにもう一人のロックオン・ストラトス。

 

闘いを求める彼に対して亡霊と言う名の死神が舞い戻って来たのだ。

 

 

「アリー・アル・サージェス…!」

「良くもやってくれたな!」

「お返しに来たわよ!」

 

 

油断したとはいえ、彼らもサージェスに恨みを持っている。

 

今回は利害一致としてソレスタルビーイングに協力する為に訪れていた。

 

今後…彼らがどう動くかは彼ら次第であるが、悪い方向にはいかないだろう。

 

彼らもまた強制された理由によって縛られていたから…

 

同じ境遇のスクールの出身者であるオウカらとの接触で考えを改めたとの事だ。

 

 

「まさか、俺の後継者に弟を引き入れるとは思っていなかったがな。」

「兄さん、どうして…」

「死に掛けの所をイグジスタンスが保護してくれたのさ、つい最近まで予断を許さない状況だった。」

「クロウ・ブルーストめ…後で彼には聞かなければならないな?」

「ティエリア、クロウに口止めさせたのは俺だ…穏便にな?」

「…判っている。」

「なら、彼らも?」

「そう言う事だ。」

 

 

二代目ロックオンやティエリアにアレルヤの質問に答える初代ロックオンことファントム。

 

トリニティと同様にイグジスタンスによって救われたと答えた。

 

 

「共存共栄…俺達だけじゃ成し得なかった事をアイツらはやってのけちまったよ。」

 

 

感動の再会は程々に。

 

ソレスタルビーイングは目処前の問題に目を向けた。

 

 

「ったく、折角拾った命をわざわざ捨てに来るとはな!」

「自分達がサージェスを抑える!」

「そのデカイのを頼むぜ!」

「刹那、また後で!」

 

 

トリニティはサージェスの相手をする為に戦場を離れた。

 

 

「沙慈…」

「刹那、おそらくは。」

「判っている、あの機体を止める!」

 

 

イノベイトによって洗脳されている可能性をティエリアは濁すように刹那に答えた。

 

レグナントを止める為に行動を開始。

 

 

「アレルヤ。」

「マリー、他の皆と一緒にピラーの破壊を頼む。」

「判ったわ。」

 

 

アレルヤはGNアーチャーに搭乗するマリーにZEXISと行動を共にするように答えた。

 

単機で行動するよりは安全と考えたのだろう。

 

 

「兄さん。」

「ライル、いや…二代目ロックオン。」

 

 

「「俺達が狙い撃つ!!」」

 

 

ソレスタルビーイングもまた世界の歪みによって狂わされた存在を救うべく行動する。

 

同時刻、アフリカのターミナル内ではオートマトンが一掃され落ち着きを取り戻した頃。

 

民間人の中に一人の少女が紛れ込んでいた。

 

 

「ソレスタルビーイング…それにあの機体は?」

 

 

外の様子をターミナルを利用していた報道関係者達によって生中継され、ネットワークを介して全国配信されていた。

 

その様子をルイスは他の民間人らと見ていたものの…

 

戦いを見続ける内に違和感を感じた。

 

彼女は意を決して外に繋がる通路へと向かった。

 

 

「っ!?」

 

 

彼女が出た瞬間、彼女の横を擦れる様に落下するレグナント。

 

 

「ぐっ!」

 

 

レグナントに搭乗した沙慈は衝撃からくる昏倒から回復し周囲の様子を確認すると…

 

ここに居るべきではない彼女の姿があった。

 

 

「あ…」

「ルイ…ス?」

「その声、沙慈なの?」

「あ、ああああああああ!?!」

 

 

ルイスの姿を見て混乱する沙慈。

 

 

「ちっ、潮時か!」

 

 

サージェスも引き時と察して遠隔操作でレグナントを誘導し戦場から撤退した。

 

 

「沙慈……なんで、なんでぇええええ!?」

 

 

好きだった人は戦いに身を置いていた。

 

理由が分からない彼女はただ泣き叫ぶしかなかった。

 

そこへダブルオーガンダムに搭乗した刹那がルイスに話しかけた。

 

 

「ルイス・ハレヴィ。」

「刹那…なの?」

「頼みがある。」

 

 

刹那は悟った。

 

沙慈を救うには彼女の力が必要なのだと。

 

 

「頼み?」

「沙慈を取り戻す手助けをして欲しい。」

「…」

 

 

流れは配役を変えて進む。

 

軌道エレベーターで起こったクーデターは収束を迎えた。

 

連邦軍から反乱分子を出してしまった事で国連では大きな波紋を呼んだ。

 

だが、元の原因であるアロウズのやり方に世間は漸く疑問視する様になった。

 

イノベイト側が用意した証拠は文字通りイグジスタンスによって全て崩され、逆にメメントモリからのレーザー照射が問題視され責任の追求が行われた。

 

戦いはより大きく激化する。

 

その前触れかの様に静けさがしばらくの間、続いた。

 

 

=続=

 





語られる事件の真相の一部。

静かに過ぎ去った筈の過去が紐解かれる。


次回、幻影のエトランゼ・第百二十一話『夏語《ナツカタリ》』


ただ話したかっただけなのかもしれない。

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