幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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堕ちる悪意。

それらは正義の為に。

揺れ動く策略に…

彼らも抗い反逆する。


第百十九話 『落禍《ラッカ》前編』

 

多元地球の地球連邦軍内でクーデターが発生した。

 

理由は言わずもがなアロウズの暴虐な活動に対してである。

 

昨日、タリビア共和国に対してアロウズは低軌道リングに隣接された大出力レーザーを照射。

 

これによりタリビア共和国の主都は壊滅。

 

イグジスタンスは先のエンブリヲの騒動で行動が遅延してしまっていた為にタリビア共和国から人々を避難させるので手一杯だった。

 

元々、破界事変でブリタニア・ユニオンからの離脱を考えており…

 

アロウズの一件で多元世界の地球連邦からの離脱の動きを見せている。

 

アロウズとして離脱の火種になる前に消し去りたかったようだ。

 

話を戻し…

 

クーデター組はアフリカに設置された起動エレベーターの地上ターミナルを占拠。

 

同時にターミナル内の関係者並びに当日利用をしていた民間人が人質となった。

 

現在もクーデター組の代表ハーキュリー大佐に交渉が行われているが…

 

イノベイターのリボンズ達はこれを利用するべく仕立人のサーシェスを派遣。

 

施設内の人々を殺人ドローンで全員消去しそれらを行ったのがクーデター組であると虚偽の真相を作り出そうとしていた。

 

勿論、人道的にこれを放って置く訳にはいかない。

 

戻って来た以上は好きにさせない。

 

貴方達の思惑が全て捻じ伏せる。

 

 

******

 

 

イグジスタンスはメメントモリへ強襲を仕掛けるZEXISとは別行動を起こしていた。

 

理由は先も述べた通り、大量虐殺を防ぐ為と地上に降り注ぐであろう大量のピラー対策だ。

 

そして、地上ターミナル施設内にて…

 

 

「お久しぶりですね、加齢臭さん?」

 

 

今回の騒動の下請人であるサーシェスに悪辣な挨拶をするハスミ。

 

礼儀正しく挨拶はしているが、顔は笑っていない。

 

あるのは相対する相手を仕留める為の殺意だけだ…

 

 

「もう嗅ぎ付けやがったのか!イグジスタンス!?」

「いえいえ、これでも遅い方ですよ?」

「だろうな、殺人用のオートドローンはもう放った後だ。」

「それで?」

「判らねぇのか?この施設に居る人間は皆殺しって事だ。」

「それが…リボンズ・アルマークの思惑通りに進んだらいいですね?」

「…」

 

 

サーシェスはハスミの言葉に冷や汗を流した。

 

何処まで知っている?

 

何処まで手を出している?

 

異常なまでの恐怖がサーシェスを覆い尽くそうとしていた。

 

 

「確か…殺人ドローンでしたっけ?」

 

 

ハスミがニコリと指先でモニターを差した。

 

そこに映っていたのは…

 

 

『どっかーん!!派手にやっちゃうよ?いやん~まいっちんぐ!!』

 

 

コードDTDによって熱暴走を発動させているアシェン。

 

 

『フルハウスと行こうか?』

 

 

カード型爆弾で牽制し携行銃でドローンを貫くハーケン。

 

 

『任務は遂行する。』

『了解。』

『戦闘開始。』

 

 

コードPTPで引き連れた量産型Wシリーズに指示を出すピート。

 

 

『これ以上は好きにさせませんよ!』

 

 

ツインガトリング砲で殺人ドローンの集団を一纏めに駆逐し壊滅に追いやるロサ。

 

 

「…」

 

 

ハスミは軌道エレベーター事件の事態収拾の為…

 

更なる助っ人を新西暦の世界から呼び戻して置いたのである。

 

 

「どうですか?」

「マジか…」

 

 

開いた口が塞がらないとはこの事である。

 

サーシェスは殺人ドローンが使い物にならず、あっと言う間に収拾された事に思考停止した。

 

 

「後は……貴方だけですね?」

 

 

背後から忍び寄る殺意。

 

ハスミは刀を構え直すとサーシェスへ襲撃を開始した。

 

これによりサーシェス逃走。

 

 

「くそがぁああ!!!」

「あらあら?逃げないでくださいね?」

 

 

軌道エレベーター内でサーシェスにとって理不尽な逃走中と言う鬼ごっこが開始された。

 

 

「な、何で壁が壊れんだよ!?対MS用の硬化材が使用されてんだぞ!?」

「あらー?こちらの世界ではいらっしゃらないのですか?」

 

 

サーシェスを追跡中で周囲の壁ごと切り裂くハスミ。

 

その光景にサーシェスは叫んだ。

 

 

「普通じゃねえし!ありえねーから!?」

「可笑しいですね?私達の世界ではMSを素手で壊せる方もいらっしゃるのですが?」

 

 

ハスミは惚ける様に自身の所属する世界では当たり前と告げる。

 

その言葉にサーシェスは反論する。

 

 

「バケモンかソイツらは!?」

「いえいえ、ごく普通の国際警察機構やガンダムファイターの方達ですよ?」

「なんじゃそr!ぎゃぁああああああ!!!?」

 

 

戯言を言う前にサーシェスは頸と胴体が仲良くお別れしそうになる。

 

なりそうになったがスレスレで本人が回避するも頭部の髪の毛が少々お別れする事となった。

 

 

「ついでに全身脱毛しますか?全身の皮ごとですけど?」

「テメェ!エグイだろっ!!」

「悪臭を垂れ流す…人でなしの戦闘狂に言われたくもありませんよ?」

「ぐっ!!」

 

 

正論かつ毒舌三倍返しでサーシェスを貶すハスミ。

 

日頃のストレス発散を兼ねているのは気にしないで貰いたい。

 

変わらず体臭で弄るのも忘れない。

 

 

「くそっ!あれからテメェらのせいで加齢臭やら悪臭のレッテル貼られるわ……お陰で消臭系デオドラントに気い使う様になっちまったじゃねえか!!?」

「良かったじゃないですか、身だしなみチェックは大事ですよ?」

 

 

ハスミは戦場でサーシェスと対峙する事があれば彼に対する悪臭被害を広める事を仲間内で取り決めをしていたのである。

 

その結果、知らず知らずのうちにサーシェス=加齢臭&悪臭のレッテルが定着したのだ。

 

最早、それはスピーカーおばさん以上の広まり具合である。

 

サーシェス本人はプルプルと怒りを露わに叫んでいた。

 

 

「それにまだまだ終わらないわよ?」

「どう云う意味だ?」

「さっさとMSに乗れ……お前の頸を狩る為の死神達が待っているぞ?」

 

 

ハスミは外で決着を着けろと言う意味合いで告げた。

 

 

「へっ…後悔すんなよ!?」

 

 

サーシェスは好機と見做して撤退。

 

だが、サーシェスもまた判断を誤ったのだ。

 

死者は何も語らないが死者は復讐の為に動くのだと…

 

その事を知るのはそう遠くない。

 

=続=





降り注ぐ悪意。

それらを消し去る為に。


次回、幻影のエトランゼ・第百二十話『落禍《ラッカ》中編』


人類統一…

共存共栄の意味を知らしめる為に…

だが、その道程は遠く険しく…

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