幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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それは飾られる。

身動きは取れない。

願いは届かない。

だって飾られるのだから…


飾の付箋

 

エクスクロスがイグジスタンスと期間限定の同盟を結んだ。

 

神聖ミスルギ皇国に潜む黒幕たるエンブリヲを討つ為に…

 

それは元の世界に帰還する事を条件に彼に従う者達を停戦させる事に繋がる。

 

神聖ミスルギ皇国へ進軍するエクスクロスとイグジスタンスの混成部隊。

 

だが、更なる怒りを落とす行為をエンブリヲは移行しようとしていた…

 

 

*******

 

 

~???・エンブリヲの城~

 

 

ここエンブリヲの拠点である城の最下層にてエンブリヲは前回ヨカッタネを奪取したマリリンと話していた。

 

 

「ありがとう、私の可愛いお姫様。」

「これ位はお安い御用ですわ。」

 

 

姫と呼ばれた事が嬉しかったのだろう。

 

マリリンは話の流れである事をエンブリヲに質問した。

 

 

「エンブリヲ様、お聞きしたい事が…」

「何かな?」

「先程のヨカッタネで何をなさるのですか?」

 

 

マリリンの言葉にエンブリヲは静かに答えた。

 

 

「浄化するのさ…全ての不浄をね?」

「不浄…汚れですか?」

「新しい世界には清浄なモノしか必要ないからね。」

「…」

「マリリン、君には引き続き護衛を頼みたい。」

「護衛ですか?」

「ああ、清浄へと導く女神達の目覚めまで…のね?」

 

 

エンブリヲはメイドとして扱っている女性達にマリリンへ労いを指示すると去って行った。

 

マリリンは何時もの猫かぶりの顔を止めると静かに呟いた。

 

 

「愚かな人……そんな事じゃ何も手に入らないのに。」

 

 

意味ありげな言葉を呟いた後、テラス席へ移動。

 

マリリンはメイド達が用意したアフタヌーンティーを堪能した。

 

マリリンと別れたエンブリヲは城の最下層へと移動。

 

目的の場所へ進むにつれて機械でありながら細胞様な質感の場所が広がって行った。

 

目的の場所に安置されているのはある存在の周囲に点在する無数の調整槽。

 

既に調整槽の確認する事は出来ないが、何かが起こっているのは理解出来るだろう。

 

 

「さて、いい加減…君達にも素直になって欲しいな?」

「…」

「空かし野郎が…」

「貴方になんか…」

 

 

ある存在に埋め込まれた三人。

 

順にハスミ、エルーナ、セツコである。

 

話し方に違和感があるのは自身の意識が途切れ途切れになりつつあるからだ。

 

 

「大地の守護を受けたスフィアとヨカッタネ…そしてそれらを紡ぐ白銀の悪魔の力。」

 

 

エンブリヲは手に入れたヨカッタネを最後の存在に向けて差し出した。

 

それに反応しその存在はヨカッタネを受け取ると己の中に埋め込んだ。

 

 

「これで新世界の為の浄化の始まる…君達がその礎になるんだ。」

 

 

三人の途切れ途切れだった意識が更に朦朧とし途絶え始めた。

 

 

「こんな事で…」

「ごめんなさい。」

「エンブリヲ…お前に言って置く。」

「何かな?」

 

 

耐性を持たない二人とは違い、ある程度の耐性で意識を繋いでいたハスミはエンブリヲに告げた。

 

だが、最後の悪あがきとエンブリヲは見ている様だが…

 

 

「…」

 

 

鋼の守護者達は愚かな楽師に抗う。

 

光と風は永遠を語り、新たな星の産声となる。

 

星々は大地を求め、還元し世界を構築する。

 

翼を持った真の調律者は歌声と共に世界を調律する。

 

愚かな楽師は恐怖の元で真の滅びに嘆くだろう。

 

 

「覚えて置くがいい…」

 

 

ハスミはそれだけを告げると白銀の膜に覆われて沈黙した。

 

それはスフィアを通じて視たエンブリヲの滅びへのカウントダウンの予言だった。

 

 

=続=


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