残された後悔の残滓。
彼女達もまた戦い続けていた。
枷を付けられつつも反逆の時を。
前回の脱走後…
無事にエクスクロスと合流したアンジュ達。
アンジュはこれまでに起こった事や各地で発生している集団失踪事件の真相を語った。
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アンジュからの説明の後、開口一番に声を上げたのはマサキとシュウだ。
「何だって!?」
「成程、これまでの集団失踪にそんな裏が…」
「シュウ、こりゃ不味いんじゃないか?」
「確かにそうなりますね…特に彼らが知った場合は。」
マサキとシュウの会話に出て来た彼らに関してアンジュは質問する。
「彼らって?」
「エンブリヲがイグジスタンスを敵に回したと同時にあの人らも敵に回した。」
「それがホルトゥスの孫光龍達の事です。」
「その組織に…どう言う人物なの?」
アンジュの返しにシュウとマサキはいずれ嫌でも知るだろうと思い語った。
「ホルトゥスはハスミ・クジョウが現在のイグジスタンスに加入する前に指揮を執っていた私設部隊です。」
「で、二人の名前はカーウァイ・ラウとテンペスト・ホーカー。」
「ハスミ・クジョウの実父と養父……それも質の悪い過保護です。」
「ああ、親馬鹿って事?」
「そんな言葉で済めばいいですけど、特に光龍を敵に回したら最後…災害級の天変地異を覚悟した方がいいです。」
「え?」
シュウの意味ありげな言葉に反応するアンジュ。
「光龍の搭乗する四霊の超機人・応龍皇…あの機体には今で言う気象コントロールシステムを供えられています。」
先史文明期に製造された超機人・応龍皇。
その最高位に位置する四霊の一体…応龍の超機人である。
応龍皇は今で言う気象コントロールシステムを備えており、猛威を振るえば大陸一つを水没させる事も容易い力をを持っていた。
新西暦の世界の過去の時代に水神様の怒りなどで逸話が残っている正体ともいわれている。
ハスミが鋼龍戦隊やイグジスタンスで共闘関係を結んでいる間は手出しをしなかったが…
「娘の危機とあれば、その報復は恐ろしいものになります。」
「ああ、俺らも敵に回したくない候補に上がる位のな…」
実際の能力を見ているからこその発言。
一緒に居たリューネとアーマラも口を閉ざしていた位だ。
「実際、その力は人界守護の為の力…そして銀河を守護する人造神ガンエデンと共にバアルに対抗する為に生み出された。」
「…ハスミが手綱を握っている以上は悪い様にはならなかったけどよ。」
「恐らく、既に光龍達にもこの件は伝わっているでしょう。」
勝利者にでもなったかの様に振舞うエンブリヲ。
自称調律者の末路は目に見えている。
どう足掻いても愚か者に逃げ場はない。
「そう言えば…モモカ、皆にお茶の用意をお願い出来る。」
「はい、お任せください。」
アンジュはふと思い出した事を話す前にモモカにお茶の準備を頼んでグリーフィングルームを退室させた。
モモカが退室した後、アンジュは答えた。
「そのハスミから預かりものがあったのよね。」
「預かりものですか?」
「これよ。」
アンジュは自身の髪の中からヘアアクセサリーを外してシュウへ渡した。
シュウは飾りの部分を取り外して中から小さなチップを取り出した。
「成程、記録媒体の様ですね。」
「流石ギリアム少佐仕込みの元諜報部…やる事はやってたらしいな。」
「ええ、これでエンブリヲの狙いが洗い浚い解る筈です。」
流れが変わって事で敵の行動も変異していた。
同じ様に行動を出来ない為に後手に回っていた記憶持ちのエクスクロスのメンバー。
この事でハスミからの情報で多くが判明したと説明すれば、先んじての行動も起こせる。
反撃の糸口が大口へと変わる瞬間だった。
「では、中身を覗いてみましょうか。」
シュウはチップの中のデータをグリーフィングルームのモニターに反映させた。
「…かなり大事になっているようですね。」
「ああ…」
シュウとマサキの表情もそうだが…
新西暦の世界に関わりを持つ者達も険しい表情をしていた。
「何か判ったの?」
「ええ、状況打開の為にイグジスタンスの助力が必要だと言う事です。」
シグナスの艦長の倉持を始め他の艦長らもその言葉に動揺していた。
それぞれの問いにシュウは答えた。
「イグジスタンスと?」
「ええ。」
「彼らの助力が必要なのは何故だ?」
「エンブリヲの本拠地は独自の次元結界で守られた閉鎖世界…その結界を壊す為にはイグジスタンスの助力が必要です。」
「博士…他にもある。」
「シナプス艦長、DG細胞ですね。」
「あれは危険所の騒ぎではない…ましてや感染者が女性だとすれば。」
「…時間の猶予はありません。」
「更にドアクダー軍団や魔従教団も大規模な行動に移る様ですし…危機的状況なのは間違いないです。」
齎された情報は今後の活動に大きく関わるものだった。
エクスクロスはセフィーロ王国が同盟を結んだ聖インサラウム王国へと移動を開始。
助力を得る為に行動を開始した。
=続=